第21話 水

宿に戻って休息し、そのまま過労がつくことなく眠気が限界となったので2時間程度の仮眠を取った。明日また10階から塔を上りたいから、昼夜逆転状態は避けたいし今日中にテントとか買っておかないと。


「じゃあテントとか色々と買って来るからフィルスちゃんとエレーナさんは留守番よろしくね」

「……元気ですね」

「HP高いからかな?

あ、フィルスちゃんの飴ちゃん渡しとくね」


なお昨日塔の中で一夜を明かしたからかフィルスちゃんとエレーナさんに元気はない。特にエレーナさんは死体の山が積みあがる度に起こされてたからね。一応気を遣って2時間に1回程度にはしていたけど、十分に寝れてはいないはず。


フィルスちゃんは常に体調も良くないから、お留守番を依頼すると大抵1日中ゴロゴロしている。……最近はよく食べるようになったのに、その生活をしてたらどんどん太っちゃいそうだね。まだまだ痩せ型だから止めないけど。個人的には肉付いてる方が好きだし。


さて。今日は2人に留守番を頼んで、塔内で長期間活動出来るように色々と準備を整えていく。まずはテントと、寝具と、調理器具にある程度の量の食糧と水。


さらには複数の衣類と、魔石を利用した風の力で洗浄する魔導器具。折り畳みの椅子とかも買いたいし、1日で全部揃うかな?


とか考えてたら全部同じ店で揃えられる感じの店を発見したのでそこで調達。最初に居た街でもあった明らかに冒険者用の道具を扱ってるお店だね。看板に『アーマーン商会』の文字があるけどもしかしなくてもチェーン店か。……たぶんだけど、転生者か転移者がこの商会を立ち上げてそう。


なんというか、冒険者向けのコンビニって感じ。日持ちするパンや干物の食料品から、取り回しが楽そうな鍋やそれを暖められそうな調理器具もあるから全部ここで揃うね。一応武器や鎧もあるので、本当にここだけで全部一式揃ってしまう。


水は水用のアイテムバッグなるものがあったのでそれを購入。流石に塔の街なだけあって品揃えが良い。ちなみに水用のアイテムバッグは何というか、小さなゴルフバッグみたいな形をしていて、水を上からダイレクトに入れられるらしい。蓋の部分を外して傾けると、延々と水が出てくるのはちょっとした恐怖映像だった。これ武器としても使えない?


……こういうのがあるなら、保温機能付きの水筒要らなかったなあ。いやでもあれはあれでスープとかを熱々のまま保温出来るから使い道は幾らでもあるか。スープを作り溜めしておけばいつでも熱々のスープが飲めるわけだし。


このアイテムバッグには水が最大で50リットル程度入るらしいので、普通に過ごすなら3日程度は余裕だね。3人で持てば150リットルもあるわけだからちょっと身体を洗うのとかにも使えそう。そして最大まで入れて持ってもそんなに重たくないのはバグってる。


いや、自分のステータスが高いから重たいものを重たいと感じないのかな?よく考えればこの鉄の鎧も結構な重量があると思うんだけど全く重く感じないし、ステータスが高いから多くの荷物を持てる感じなのかな。


となると、宿の床の方が心配になってくるね。まあその辺は冒険者がよく使う宿屋だし大丈夫かな?最終的にテントとかも買って、合計金額は60万円ほど。最初に金策しておいて良かったね。この世界、金さえあればかなり快適だよ。


その後、冒険者ギルドで11階から20階までの地図を買うけど一気に値段は上がって1枚1000円の1万円。まあこれぐらいが適正価格かな。地図があるのとないのとでは大違いだしね。


……っと、15階は未探索エリアがあるんだ。どうやってもいけない場所があるようで、個人的には気になるところだね。それ以外は100%、隅から隅までマッピングされているのに15階だけ空白地帯があるということはたぶん隠し扉があるのかな。


「一応伝えておきますが、15階の空白エリアを埋めた者には報奨金として200万円が渡されます。ただしこの空白エリアと隣接する壁や床に何か隠し通路がないか、数十年かけて探している者もいますが未だに発見されていません」

「数十年って……」

「……塔が現れてから、200年以上。それだけの時間があって見つけられていないため、あまり憑りつかれたように隠し扉を探すのはやめてくださいという忠告です。たまにいるんです。優秀な冒険者なのにこういう空白地帯に憑りつかれる者が」


受付の人からは、この空白地帯への行き方を見つけるだけで200万円という報酬を得られると聞いたけど200年以上隠し扉や隠し通路を探して見つからなかったということは根本的に探し方を間違えているんだろうね。


……んー、塔の壁って破壊出来たりしないのかな。ちょっとこの壁さえ破壊出来ればなあってことは地図見てるとよくあることだし、もしもすぐに修復されるタイプとかなら時間停止で潜り抜けられるかも。

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