第20話 10階

8階の蛇エリアを突破したところで、時刻としては夜になる。時々休憩したというか、かなり休憩を挟んでいるせいで塔の攻略には時間がかかる。この調子だと、10階に着くのは深夜頃になるかな。


「ステータスに疲労がつくと全部のステータスが少しずつ減少するんだね」

「普通は疲労になる前に撤退するのが冒険者の鉄則です」

「……10階着いた?」

「まだだよ。フィルスちゃんはそのまま寝てて良いからね」


フィルスちゃんが病弱と疲労のコンボにより、横になってしまったので背負ってるけどこの子疲れると吐血するんだね。病弱スキルがあまりにも酷過ぎる。


で、エレーナさんはデバフ二種じゃないから歩けているけど辛そう。うーん、テントとかは買っておくべきだった。一応10の倍数以外も階層の中央部分はセーフティエリアだし、他の冒険者達も集うから安全度は段違い。でも女3人、テントなしで行くのはちょっとなあ。


9階は、芋虫みたいな魔物が襲ってくるけど厄介な攻撃は粘つく糸での攻撃ぐらいだしサクサク倒していく。レベル9で、エレーナさんの鑑定によると一番高いステータスは防御で50を超えて来る。まあでも自分の攻撃力が300を超えているからか、斬りつける際に一瞬だけ時間停止を使用しているからか、全部1撃で倒せる。


この階層は、対角線上に階段があったので運は普通。さて。10階だ。


「あー……コボルトって、人間の子供サイズなんだ。これ倒せたら戦闘力でD評価ねえ……」

「ボロボロですけど剣も持ってますし、仲間を呼ぶので油断してたらやられますよ!」

「壁を後ろにして、ちょっとあしらい続けるから攻撃しないでね。仲間を呼んでもらうし」

「えっ」


この階にいるコボルトは、剣を持っているので囲まれると非常に不味い。なのでまずは自分達から袋小路に入って、敵に敵を呼んでもらう。


「あっはは、たっのしいぃ!」

「ええ……」


そして自分の敏捷を活かして、通路を反復横跳びしつつコボルト達をあしらう。このコボルト1体1体の経験値はそんなに多くないんだろうけど、それでもここはレベリング推奨エリアだ。何せ敵がいっぱい湧くし、この階層の中央にはエレベーターがあるのですぐに来れる。


夜になって、塔で見かける冒険者の数も少なくなって来た。今から10階でレベリングをしようという奇特な輩は、そんなにいないんじゃないかな。階段位置が速攻で割れる階層の1つだし。というわけで、レベリング開始。エレーナさんも疲れてるなら寝てて良いよ。


コボルト達の数をキープしつつ、適度に傷つけていくとどんどんコボルトの数が増えていく。ある程度の数が溜まったら、斬撃を飛ばして一気に殲滅。自分は今、この世界に来て一番気持ち良く無双が出来てるね。


ウルフ相手だと数が増えると事故る可能性高いし、これまでの階層は弱すぎる敵しかいなかった。こう、都合良く自分が無双出来る相手が欲しかったんだよね。何よりこのコボルト達、剣をドロップしてくれるお陰でそれなりに金策にはなる。


このボロボロの剣からでも、ある程度は鉄が回収できるからね。剣ごとリポップしてくれる塔の仕様に感謝。魔石も当然落ちるし、10階層からは一回り魔石が大きくなるので1個200円となる。とても美味しい。


しばらく狩り続けていると、魔石と剣と死体が大量に積み重なりコボルト達が近寄らなくなった。こうなると戦闘どころではないのでしょうがないけどコボルト達を全滅させ、死体だけ放置して魔石と剣をアイテムバッグに回収し、死体はエレーナさんを起こして奉納して貰う。


その後、フィルスちゃんが起きるまでコボルト達を狩り続けたら朝になっていた。塔の中、地面に座って壁に寄りかかっている状態でぐっすり寝れるのは才能だね。たぶんそういうことを気にすることも出来ないぐらいに辛かったんだろうけど。


そして朝になるまで狩り続けたのにステータス『過労』が付かないということは、徹夜したぐらいじゃまだまだということかな。


3人で行動できるようになったら10階の真ん中にあるエレベーターから帰還。魔石と剣のお陰で、結構儲けたかな?一応自分のレベルは20まで上がっているし、コボルト狩りは良い事尽くめだった。深夜テンションで始めちゃったけど推奨されるだけのことはあるね。


とりあえず冒険者ギルドに行って、魔石を全て売却するけど10階以降の魔石は360個ほど回収していた。……うん、1時間に60個のペースということは最低でも1分間に1匹は倒していたのかな。いや、回収の方が時間かかった気がするから1分につき2体ぐらいのペースで倒していたのか。コボルト狩りだけでレベルが3つも上がったのは納得しかない。


お金の方は、コボルトの魔石だけで7万2000円。それより前の階層で拾っていた分も合わせて9万円程度だね。コボルトの剣は正直そんなに高値で売れないけど、それでも折れてない200本は買い取って貰えて6万円にはなった。……ボロボロの剣が1本300円は相当安く買いたたかれているんだけど売る方法が他にない以上仕方ない。完全に供給過多だ。やっぱり低階層のものは全部奉納させて良いかな。


宿に戻って寝ようかなと思ったけど、そうすると夜に自分だけ起きることになりそうだから頑張って起き続ける。ステータスに過労が表示されるところ、見てみたいしね。

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