塔の1階の探索と、2階をちょっと覗いて得た金銭は1万5000円程度。当然赤字だし、低階層はさっさと通過しないと宿代にもならない。ちょっと良いところに泊まってるっぽいしね。

「そういえばエレーナさんは前世どういう感じだったの？というか何歳で死んだ？」

「えっと、答えないとだめですよねこれ」

「命令だから答えないとダメだね」

「えー……前世では17歳で死にました。死因はたぶん母親です」

エレーナさんの前世について気になったので詳しく聞いてみたら思いっきり地雷を踏んだけど、どうやら母親が不倫して出来た子供みたいで、俗に言うW不倫での子供だったから誰からも望まれない子供だったらしい。家庭環境が酷かったのはこれだけで察することが出来る。

慰謝料やら何やらで借金漬けになったエレーナさんの母親はその後、エレーナさんを虐待することでストレス解消を図るようになり……エレーナさん自身が奨学金を借りて大学に行くと決心したことが母親の逆鱗に触れ、死亡時の記憶がないから推測だけど殺されたと。決めつけは良くないけどアテーナー様に母親から殺されたと教えられたらしいからほぼ確定。

ちなみに転生時はアテーナー様にひたすら慰められていたらしいよ。それで彼女が転生時に望んだことは『スキル鑑定』『夫婦仲が極めて良好な家庭に生まれる』『両親が出来れば冒険者に理解あるor両親が冒険者』の3つ。自分と比べたら遥かに無欲だね。異世界で気持ち良く無双をしたいとは考えなかったのかな。

……一応、転生時の望みは全部適っているんだよね。問題は両親が死亡率の高い冒険者という職業だったせいで早死にし、孤児院に預けられるようになったことと、鑑定スキルが案外簡単に手に入るから、価値が低いってことかな。

「……ちなみにアテーナー様とは孤児院行った後に会話したり文句言ったりしたの？」

「いえ、狩人に転職したのは孤児院へ行く前だったのでまだ会ってないです。そもそも第二の人生を用意してくれただけでもありがたいので、文句を言うつもりもないです」

わりと悲惨な人生を歩んで来ているなあという感想を抱いたので、次にアテーナー様に会ったら文句を言う権利ぐらいあると思うんだけど第二の人生を用意してくれただけでも感謝しているようだし、孤児院での生活も悪くはなかったそうだから不満はないとか。

エレーナさんの転生時に、職業を望むことは出来なかったみたいなので自分だけの特権なのかな？いや、自分が最終的に転移を望むと理解していたからこそのサービス？神様毎に、持っている力が違うから転生時に与えられる力も変わるということなのかな。

一応この世界に来て、異世界人のサンプル数は増えて来たけど断言できる要素はない。いっそのこと、あの神様にもう一度会いに行って直接聞く方が手っ取り早いだろうね。

「カリンさんはどうなんですか？」

「私は普通に強いスキルと強い職業を望んで転移したよ。

自重して不足あったら嫌だから上限いっぱいを望んだつもり」

「……社畜2人を買って養えて、まだまだ余裕があるということは相当強いですよね」

「まあ今日の飛ぶ斬撃だけでも相当強いことは分かるよね」

社畜への命令は強制力があるため、鑑定するなと言っているエレーナさんは自分のことを鑑定出来ないはず。……能力バレを防ぎたいから1人でも知る人を少なくしようとはしているんだけど、既にミリーさんと初代皇帝にはバレてるからあまり意味が無い気もする。

今日の宿の晩御飯はチーズハンバーグにマヨネーズがかかっている生野菜のサラダ。あと食後のデザートとしてゼリーが出て来た。何というか異世界感を全てぶっ壊していくメニューだったけど美味しいのでヨシ。フィルスちゃんもエレーナさんも社畜販売所に居た時はあまり食べれてなかったのか、滅茶苦茶食べてるね。

ご飯とみそ汁がおかわりし放題だから何杯も食べるのは分かるんだけど、自分も1回おかわりしたらお腹いっぱいになるのに何でこの子達は2杯目3杯目とおかわり行けるんだろう。

そしてご飯を食べ終わったら3人で大浴場へ行くんだけど、2人ともお腹がぽっこりしている。あー、2人とも痩せ気味だから余計にお腹がぽっこりしているね。自分はまあ、神様に美少女をお願いしたお陰がスタイルが超良い。

鉄の鎧を着ている時はそこまで大きく感じないけど、まあまあある方なんじゃないかな。たぶんこの身体、成長してくれるだろうし良い感じに美女になれそう。……いやでも美少女を願ったせいで延々に美少女のままという可能性も無きにしも非ず。別にそれでも良いけどね。

……塔の街の大浴場は1回1人300円なのでかなり安く感じるけど、毎日入ると流石に出費が気になるかな。まあ毎日入るけど。身体動かしておいて、風呂に入らないのはあり得ないし。念願の女子風呂に入った件については……元の街でもう慣れたし慣れたら何とも思わないね。そもそも美女率が低いから何というかその……うーん。