第12話 王都

ある程度レベリングをして、資金にも余裕が出来始めたので塔を攻略するために塔のある街まで移動を開始する。……ちなみに塔の中央にはエレベーターがあって、10の倍数で降りるフロアがある。まあ滅茶苦茶高い塔だし、将来的に1000階10000階まで行くなら必須だろうね。


過去の最高到達階数から、行ける階層の上限が定まっているようでいきなり90階からスタートということは出来ないみたいだ。誰かに連れて行ってもらう、みたいなことも出来ないみたいだね。ちゃんと自分の足で1回は登れということだろう。


「塔に行く前に王都に寄るけど、フィルスちゃんは王都行ったことある?」

「ないです」

「そっか。

……最近あまり咳しなくなったね?」

「ケホッ……神様への奉納のお陰だと思います」


まだ病弱スキルが消えていないフィルスちゃんは、時々咳はするけど最近頻度が減った気がする。これは加護のお陰っぽいのでステータスで見えない項目というのは運以外にも色々とありそう。


特に最初の街の冒険者ギルドやミリーさんに挨拶することもなく、王都への列車に乗るけど動力は魔力。塔の魔物はゲームのように魔石をドロップするけど、その魔石を大量に使って動かしているみたい。前世でいう石炭が魔石に置き換わったって感じ。


鉄道が街から街へ、そして王都へ。王都から塔への線路も敷設されているのでかなり移動は楽だ。流石に5分に1本の列車が来るわけじゃないけど、1時間に1本は走っているのでこの世界で移動に困ることはないはず。速度は中々に速く、時速100㎞近い速度は出ているように見える。別に鉄道マニアじゃないし身体に速度計があるわけじゃないからあくまでも体感で、だけど。


列車で揺られること4時間。王都の近くの街まで来て、そこで乗り換えをして更に2時間ぐらい揺られて王都に到着。昔は馬車で10日前後はかかる道のりだったらしいけど、鉄道を整備してくれた初代王様に感謝。


……整備して、これを維持し続けているのも凄いことだしやっぱり発展具合がおかしいよ。しかも王国よりも帝国の方がより発展しているみたいだし。まあ民衆が常に飢えているような世界よりかは圧倒的にこういう世界の方が良い。


とりあえず王都の冒険者ギルドに立ち寄ってみると、馬鹿でかい3階建ての建物で食堂みたいなところも併設されている。とりあえずカウンターの人に元の街では売り過ぎて売れなくなったウルフの毛皮について、売る交渉をしようとしたらいきなり2階の奥の部屋へと案内される。


「……くれぐれも失礼のないようにお願いします。やんごとなきお方なので」

「え、この中で誰が待ってるの?自分まだ何もやらかしてないよねえ!?

あ、もしかしてミリーさんのパーティーメンバー?」

「冒険者ではありません。……隣の国の、一番偉い方です」


……元の街の冒険者ギルドでは誰にも「王都へ向かう」とは言ってないのに、何で王都で自分を待っている人がいるんだろうと思って案内された部屋に入るとショタが居た。外見上は、たぶん10歳にも満たない男の子。


ただ、この人物はあのマニュアルにも書かれていた人物だ。間違いがなければ、彼は隣国のクリスト帝国の初代皇帝だろう。


「なんでこんなところにいるんですかね?」

「いや新しい異世界人が来て、それがめっちゃ強いってなったら気になるのは当然でしょ」

「……失礼ですが、本当に200歳?」

「正確には218歳だね。

言動が幼いのは肉体に精神が引っ張られているとかそういう解釈をしてくれ」


……この世界は塔が出来た近辺で歴史が一度途絶えている。国がバラバラになり、到来した戦国時代で大陸西部をまとめ上げたのがクリストという農民のガキだった。スキルで『再生』を持っており、そのスキルの効果で不老になった人物だ。


帝国が出来てから200年。いつまでも死なないために延々と初代皇帝を名乗っているクリストさん。流石に現在は隠居済みで、実際の統治は8代目皇帝が行っているみたいだけど、たまにまだ政務に関わるらしい。……なんというか、羨ましい生き方の1つだなあ。子供もたくさん作ったみたいで、トータルではエール王国の初代王様を超えている。


戦闘能力は折り紙つきで、99階到達者の1人でもある。100階に挑んでないのは帰って来た人がいないからだろうね。たぶんまだ凄まじい権力を有している状態で、死にたくはないだろう。不老なら延々と転職を繰り返して強くなれるはずだし、恐らく今自分が喧嘩を売ったら負ける可能性がある相手。


「待ってなにそのステータス」

「勝手にステータス見るならそっちも開示してくれません?」

「それは嫌。

……貰ったスキルは再生だよ」

「それはマニュアルに載ってるから知ってます」

「あ、最新版の異世界人用マニュアル持ってるの!?ちょっと貸して!」


初代皇帝様が自分のステータスを勝手に見て勝手に絶望しているので自分のステータスはやっぱり高いっぽい。まあ初期ステータスがフィルスちゃんと雲泥の差だったし、時間停止とかいう頭おかしい文字列がスキルにあるからね。……この人も鑑定持ちだし、自分も鑑定欲しかったなあ。

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