第10話 塔
ギルド職員に何となく話を聞き、ミリーさんの境遇が分かったので今日のウルフ狩りをした後、ちょっとだけミリーさんと会話してみる。
「……朝から冒険者ギルドで何してたの?」
「話しかけられるのを待ってたんだよ。
ほらこれ」
まずミリーさんは朝からずっと冒険者ギルドの中でダラダラしていたみたいだから、何をしていたのか直球で聞いてみると紙切れ一枚を手渡される。そこには、昨日の神殿で会うことや今日ここで朝から冒険者ギルドに入り浸っていれば自分から声をかけるという内容が書いてあった。その声かけの内容も、「朝から冒険者ギルドで何してたの?」で完全一致している。中々の精度だ。
……昨日の勧誘、失敗することを分かってて勧誘していた辺りミリーさんは相当図太い人だね。とりあえずミリーさんの仲間に、未来予知を出来る人がいるのは本当っぽい。もう一人もたぶん強いだろうし、世界でもトップクラスの冒険者パーティーなんだろうな。だからといって入ろうとは思わないけど。もうちょっと自分1人だけで好き勝手したい。
「……100階をクリアする未来に、君が居たらしい。だからこうやって声をかけたんだけど、パーティーに入ってはくれなさそうだね?」
「逆に異世界に転移してすぐにパーティーに入ろうって気になります?
情報収集するだけなら自分でも出来ますし、戦闘力なら足りてると思いますし」
たぶんミリーさんから見て自分はとても無駄足を踏んでいるように見えると思うんだけど、やっぱり自分で試したり自分の力だけで進みたい気持ちは大きい。ここでミリーさんのパーティーに入ってしまうと、功績の大半はミリーさんのものになりそうだし。
ただ、ここで自分はミリーさん達を意識するようになったから、恐らくそれがミリーさん達の目的なんだと思う。塔を攻略する時、参考になる意見とか貰えたら嬉しいかな。
「ところで、『病弱』持ちの社畜を買ったのは何で?」
「……なんとなく?」
「……最悪の動機だった。
じゃあもしかしてこの世界のスキルについても認識してない感じ?」
「普通の人も最低1つはスキルを持ってるってのは把握してる」
この世界の人も、何か1つスキルを持っている。極稀に2つ持っている人がいるそうだけどそういう人は大抵転生者。異世界人みたいに『時止め』や『豪運』、『未来視』なんかのぶっ壊れスキルじゃないし、『足が速い』とか『早起き』とかそこまで強くないスキルも多いけど、とにかく全員がこのスキルを何か1つは持っている。
そしてフィルスちゃんのように、マイナスのスキルを持っている人もいる。数はそう多くはないようだけど、そういう子は総じて不幸の子と言われている。……で、自分の推測では救済処置があると思ってる。だから買った。根拠はない。
「……その推測は大正解だよ。
スキルは全て、成長する。成長すれば、名前が変わるものもあるし、たぶん病弱も成長する。成長することで、メリットを伴う場合もあるね。ただ、マイナスの部分が変わることはないし確定じゃない。
一番成長するのは、やっぱり神への奉納かな。前に神殿で見た時、この子は加護を貰ってたと思うけど」
「ウルフを13匹ほど奉納したら加護が極小から小になったね。病弱の方は変わってない」
今日のウルフ狩りではウルフの集団がウルフの集団を呼んでくれたので、23匹ほど狩ることが出来た。アイテムバッグは追加を買ってなかったので、13匹ほど外に出しっぱなしにせざるを得ない状況だったんだけど、そこでフィルスちゃんが神様に奉納したいと言い出したから13匹分奉納している。
……どうやらこの世界、神様に物を直接届けられるようで、フィルスちゃんはウルフの死体13匹分をフィルスちゃんの神様にプレゼントしている。そのお陰か、加護が極小から小にランクアップしており、補正値が+50と大きいものになっていた。
ウルフの肉塊は綺麗さっぱり消え去ったわけだけど、これが信仰スキルの効果なのかな。自分は信仰スキルを手に入れてないので奉納が出来ない。そもそもあの神様が何という名前の神様かさえ分からない。たぶん、創造神ではないと思うんだけど。
「……君は異世界RTAでもやってるのかい?」
「無双をしたいだけでRTAしたいわけじゃないです。
というかやっぱりウルフって強い方の魔物?」
「地上では強いよ。塔だと50階相当の強さ」
「あー……微妙そう」
「最高到達階数が99階の塔のど真ん中なんだからカンストパーティーでも苦労し始めるところだよ」
ミリーさんによると、ウルフはやっぱり強い方の魔物だったようで塔だと真ん中付近で出てくる魔物の強さと一致するらしい。ということは、今から塔にチャレンジしても50階までなら余裕ってことかな?
それなら何で100階がクリア出来ないのか謎だけど……とりあえずは99階目標で、レベリングが終わったら塔のある街へ向かおうかな。100階への挑戦は、行けそうだと思ったら突入してみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます