第9話 癖
……この世界に突如として現れた塔。高さは噂では1万階で、攻略したら神になれると言われている塔。
どうやらこの世界はこの塔が出来た時、余波であちこちに死者が出て建物が倒壊しまくったらしい。これはたぶん、大規模な地震が起きているんだろうね。塔を中心とした大規模な地震により、大陸は形を変えて塔が大陸のど真ん中に位置するようになった。
文明が一度崩壊するレベルの大打撃を受け、大陸を統一していた国が崩壊した結果、戦国時代が到来。そこでこの大陸の東半分を纏めたのが王国で、西半分を纏めたのが帝国。
この図式になれば、完全決着を求めて戦争するものだと思うんだけど互いに転生者がトップを張っていたからか協調路線を歩むこととなり、初期の頃はだいぶ交流とかもあったみたい。
国の名前は初代王様の名前のエールメンから名付けたのか、エール王国。……この王様が大量に生み出した金は、現在まで国の貨幣として使われている。
色んな事業を起こして国を豊かにしていった点は、間違いなく有能。ただ1つ欠点があるとすれば、下半身に正直だったことだ。いやまあ自分元男だからそういう欲も分かるけど。
……この王様を称える側の本ですら、悪行として道行く人々を強姦していたって直球で書かれているからそうとうなことをやってる。というか趣味強姦って何。おかげで子供の人数は、認知した子供の数だけで600人以上。いくら戦争続きで男が少ない世の中だったとはいえ、1人で人口爆発やってるんじゃねえ!?
そしてこの子供達は大体優秀だったようで、大陸中央の塔へのアタックはほぼ全員が99階まで到達している。この初代王様が存命時は、100階クリアが次代の王の条件だったらしいね。
ただ今現在も最高到達階数が99階ということから、建国時から今に至るまで200年間誰も100階をクリア出来ていない。どうやら100階は戻ることのできないタイプのボスフロアであり、今まで誰一人として、帰ってきていないのだ。
……この誰一人として帰ってきていないという紛れもない事実が挑戦者の足を鈍らせる要因にもなっているようで、最近では100階に挑戦する人すら稀だとか。ミリーさんの様子を見るに、転移者や転生者は全員強いスキルを持っていると思うんだけど、それでも今まで突破出来ていないなら相当悪質な罠があるのかな。
過去の転生者や転移者が、どこまで強いスキルを持ってどんな戦い方をしたのかとかのデータはないかな。流石にないか。塔までの道のりは、ここからおよそ800㎞と結構遠そう。道中に王都があるみたいだから一旦はそこへ立ち寄って、それから塔へ向かう感じで良いかな。
図書館で調べものをした翌日は、冒険者ギルドに行って王都までの護衛依頼とかないか探してみるけど街道沿いは治安良いせいかあんまりそういう依頼はないね。何かミリーさんから熱視線が飛んできている気がするけど無視だ無視。……いや、一応ギルド職員さんにミリーさんについて聞いておこ。
「すいません、ミリーさんってどういう人ですか?」
「あ、ミリーさんに声をかけられたんですか?
彼女、ちょっと手癖が悪いので気を付けて下さいね。実力は相当高いというか、現在13名いる99階到達者の1人です」
「何でそんな人がこの街にいるの?」
「周期的にそろそろ異世界人が来るタイミングだったので見張っていたのではないかと。彼女のパーティーには未来予知が出来る人もいますし」
「みらいよち」
そして詳しく聞くと、純粋にレズだったというかミリーさんはミリーさん含めて女3人でパーティーを組んでいるそうだけど、残りの2人がミリーさんのハーレム面子というかミリーさんに落とされた人達。全員異世界人のパーティーで、塔の99階に到達している数少ないパーティーの1つらしい。
王国の最終兵器とまで言われてるんだから相当有名だね。なのにギルドランクがABなのはしょっちゅう女性に手を出してはトラブルになっているそうで……何でみんな異世界来たら欲望丸出しなんだ。まあ自分が一番欲望丸出しなんだけど。
というか自分に対して「元男?」と聞いてくる辺りミリーさんもTSしている疑惑が出て来たね。パーティーメンバーは、1人は未来予知を持っているそうだからそれがスキルで確定なんだけど『豪運』+『未来予知』はえげつなさすぎない?これにもう一人異世界人がいるとかそりゃ強いよ。
……そして、元は5人パーティーだったという情報も得る。ミリーさんのパーティーは100階に行くか行かないかで揉めて、2人が100階へ挑んだみたいだけど、その2人の内どちらかはミリーさんの言ってた先輩かな。
喧嘩別れというか、主力2人が100階挑戦派で勝手に挑んだ感じ?……まあ何となくミリーさんの境遇は分かって来たし、あまり邪険に扱うのもやめようか。ただ、5人で100階に挑まなかった理由は気になる。誰一人帰ってきていないという事実は、二の足を踏む理由には十分だけどそれだけじゃ足りない気がする。
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