第3話

「この辺だと思うけど」

スズは、手綱を引いて馬を止めると、

辺りを見回した。

一帯に草が生え、何軒か家が建っているが、どれも人が住んでいるとは思えないぐらいボロボロだった。

「お嬢ちゃん」

突然、何処からか現れた男が話しかけてきた。スズは馬を降りる。

「こんなところに何しに来た」

「獅子丸を探しにきたの」

「獅子丸?何でその名前しってるんだ」

「力を貸して欲しいの。私の・・・」

「あー分かった分かった。俺が獅子丸だ」

「あなたが」

「話は後からゆっくり聞こう。まずは、お互いをよく知らないと」

スズの腰に手を回してきた。

「ちょっと待て、俺が獅子丸だ」

と、別の男が現れた。

「いやいや待て、俺か獅子丸だ」

と、また、別の男が現れた。

「ちょっと、誰が獅子丸なのよ!」


獅子丸が戻った時、城の中は死体の山だった。

天守閣に入ると、千姫が倒れていて、体はすでに冷たくなっていた。

そばに小刀が落ちている。

自らその命をたったのだとすぐに分かった。

「姫様」

獅子丸は、千姫の体を抱き上げ大声で泣いた。


獅子丸は、目を開けた。

「またあの夢か」

体を起こし額の汗をぬぐう。

もう、10年も前のことなのに、未だに鮮明に蘇る記憶。

「俺が本物の獅子丸だ」

「いやいや、俺が本物の獅子丸だ」

外がなにやら騒がしい。

「なんだ?」

獅子丸は、外に出た。

盗賊仲間たちが一人の女の子を囲み、

言いあっている。

「お前らなにやってるんだ」

「あ、また変なのが一人増えた」

スズは、呆れた。

「変とはなんだ」

「あの、獅子丸を探しに来たの」

「ここには、そんなやついないよ。帰んな」

「あ!」

女の子は、獅子丸の右手をとった。

「そうだ、この刺青、聞いていた通り。あなたが獅子丸ね」

獅子丸は、眉間にシワを寄せた。

「お前何者だ」

「力を貸して欲しいの」

獅子丸は、一瞬考え、

「中に入れ」と、家に招き入れた。

盗賊達に囲まれて、スズが経緯を話すと、

獅子丸は憮然とした。

「國光が・・・」

獅子丸は、スズをじっと見た。

「なに?」

「いや、なんでもない」

「なによ」

「ダメだ。俺には関係ない。お前は、何処か別の場所で身を隠せ」

「怖いんでしょ」

「怖い?」

「弱虫」

「何だと!」

「もういいわ、私がなんとかする」

「なんとかって、おい、ちょっと待て」

スズは、出で行った。

「ふんっ」

獅子丸は、横になった。

「いいのか、獅子丸」

「ほっとけ」


「まったく。なんなのよあいつ。全然頼りにならないじゃない」

近くに落ちていた小石を蹴ると、草むらの中に飛んでいった。

すると、草むらの中でがカサカサと音がした。

「嘘でしょ」

三匹の狼が現れた。

スズは、刀を抜いてゆっくり後ずさるが、

地面の窪みに足をとられて、尻餅をついてしまった。

狼が飛びかかる。

「きゃぁー」

スズは目をつむった。

だが、不思議なことに、辺りは静けさに包まれている。

恐るおそる目を開けると、三匹の狼は地面に倒れていた。

そして、一人の男が立っている。

「獅子丸」

「まったく、危ないだろうが」

スズは、獅子丸に抱きついた。

「分かったよ。俺がなんとかしてやる」

獅子丸は、頭を撫でた。

「うん」

ぷ~っと音がした。

「え?今オナラしたでしょ」

「してないよ」

「今絶対した」

「してないって」

「絶対したよ」

「分かったよ。しましたよ。しちゃいましたよ。うるさいガキだな」

「あ💢」

「あ💢。冗談ですよ」

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SHISHIMARU ―獅子丸― ゆでたま男 @real_thing1123

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