第47話 なんで。

 

 あれから1ヶ月が経った。

 

 まひるからは一切、連絡がない。

 こちらから送っても既読すらつかない。


 ……ブロックされているようだ。


 前にフラれた時は、まひるは俺から離れたくないとすがっていた。今までも色々あったが、ブロックされたことはなかった。


 今回のようにまひるから完全に拒否されるのは、はじめてだ。

 

 『このまま終わってしまうのかな』

 

 うちらはセフレという関係だったが、まひるはお互いのきずなに縋っていた。


 そんな子に、あれだけのことを言ったのだ。

 きっと、もうダメだ。


 

 それにしても、去年の誕生日といい、誕生日の度に散々だな。


 あの後、あおいには、メッセージのやり取りをやめると言った。あおいが悪い訳ではないが、今はそんな気になれない。



 クズ先輩は優しい。


 俺の方は、どうも仕事に身が入らない。

 気づけば、あの日のことばかり考えている。


 何回考えても、過去に戻れるわけではないのに。


 そんな俺がミスばかりしていても、先輩はいつものような茶化すこともなく、俺を心配してくれる。



 ……俺はそんなに酷い顔をしているのだろうか。


 周りの優しさに胸をえぐられる。



 そんなある日、ほのかからメッセージが入った。


 「まひるのことで話があります。お時間いただけませんか?」


 なんで先輩経由じゃないんだろう、と思ったが了解する。


 

 待ち合わせの当日になった。

 土曜だが、ほのかは学校帰りだろうか。

 メガネをかけて大きなバッグを持っている。


 近くのカフェに入る。

 向かいの席に座ると、ほのかはココアを頼んだ。


 こうしてみると、やはり整った顔をしている。

 輪郭はまるく、目が大きい。優しそうな顔立ちだ。


 原石というのかな。磨けばどんどん綺麗になりそうだ。


 胸もFカップくらいあるのではないか。

 まひるより大きい。


 セックスの時には、どんな顔をするのだろう。


 従順で大人しそうだ。

 この子なら、まひるの代わりになるんじゃないか?


 先輩の彼女じゃなかったら、口説いてみても面白かったかもしれない。


 ……いつの間にか最悪な事を考えている自分に気づく。

 

 ダメだ。

 厚意で来てくれた人に、俺はなんて事を考えているのだ。


 なんか、もう全部を壊してしまいたくなっている。昔からの悪い癖だ。

 今の俺は、きっとひどい人相をしているのだろう。



 飲み物が出てくると、ほのかはメガネをテーブルに置き、話し始めた。


 「まひるの事ですが、最近、本当に元気がなくて。ナギさんとどんなことがあったかは、大体は聞いてます」


 ほのかは、まひるとは高校が同じらしく、中学のこともある程度、知っているという。


 人に知られたい内容とは思えなかったので今までは黙っていたが、先輩のアドバイスで俺に伝えることにしたらしい。


 まひるが心に秘めた真相についても、知っているということだろう。

 

 ほのかはココアを一口飲む。


 「これから話すこと。きっと、ナギさんはイヤな気持ちになると思います。それでも聞きたいですか?」


 ……俺は頷いた。

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