第44話 思わぬ方向。

 

 不意の質問にちょっとビックリしたが、俺は答えた。嘘にはならないように正直に。


 「うん、そんな感じの好きな相手はいるよ」


 すると、あおいは「ふ〜ん」と言いながら、腰に手を当て、半眼で見上げるように俺の周りをウロウロする。


 「『そんな感じ』ねぇ……。わたしにもチャンスはあるっていうことかな」


 俺が否定しようとしても、勝手に納得してしまう。俺の意見など、まったく眼中にない様子だった。



 買い物を終えて、あおいと別れる。

 あおいは、ニコニコしながら、こちらを何度も振り返って手を振ってくれた。


 

 それにしても、コンビニの無愛想なイメージと違いすぎるだろ。

 

 まぁ、でも、考えようによっては、ああいう性格は、彼女としては申し分ないのかも知れない。

 

 なにせ、他の人にはとてつもなく無愛想だからね。

 ああいうのをツンデレと言うのだろうか。


 誰にでも痛々しいほど元気に振る舞うまひるとは対照的だ。



 途中、スーパーで買い物をして家に帰る。

 まひるに、麻婆豆腐にするので、豆板醤と豆腐と長ネギを買ってこいと言われたのだ。


 玄関をあけると、まひるが出迎えてくれた。



 今日は、恩人の先輩の妹に頼まれてプレゼントを買いに行くと正直に伝えていたので、問題はないだろう。



 すると、何故かまひるに正座をするように言われた。


 そして、質問された。

 まひるはニコニコしている。


 ニコニコなのに目が笑ってない気がする。

 なんだか怖い。


 「その子は、かわいい? YESかNOで答える」


 うーん。

 なんと答えればいいんだ……。


 とぼけたら、とぼけた罪で詰められそうだし。


 

 「YES」


 まひるはジト目で「ふーん」という。


 「じゃあ、わたしとどっちが可愛い?」


 この種の質問は迷うこと、即ち、有罪になる。

 ……即答が大切だ。


 おれはすぐにハッキリとした口調で答えた。


 「まひる」


 すると、まひるはニコッとする。

 よかった。尋問から解放されそうだ。



 まひるは、俺の全身をくまなくスンスンすると、安心したようだった。

 

 なにかの野生動物か?



 そのあとは、まひるに襲われた。


 俺の上着を脱がせると、乳首を舐めてくる。

 続け様に何度も求められて、なんだか、いつもより激しかった。


 まひるって、結構、やきもち焼きなんだな。

 新発見だ。


 それからは、一緒にご飯を食べてお酒を飲んで、映画を見て。楽しく過ごした。



 そろそろ寝ようかなという頃になって、まひるにデートに誘われた。


 

 「来週、花火を見に行かない? 調べてみたら、5月の花火大会も結構あるみたい。そろそろ、ナギくんの誕生日でしょ? 一緒にお祝いしたいな」


 そうか。


 テーマパークに行って、告白する前にフラれてから、もう一年経つのか。


 早いもんだ。

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