第7話 初めての朝。


 「ちょっと……」


 まひるが制止しようとする。

 だが、俺は止まらない。


 「今日、大学に行ってたから汗かいてるし。シャワー……」


 「いいから」


 俺はそういうと、まひるの服を脱がす。

 少しだけ息苦しく、自分の心拍数が上がっているのを感じた。


 ブーツを強引に脱がすとニーソックスは履いたまま、まひるのシャツのボタンをあけ、中のインナーをたくし上げる。

 すると、女の子然としたイメージとは違う飾り気のないスポーツタイプのブラをつけていた。


 ブラをグッと上にあげると、ぷるんとピンクの乳首が露わになる。

 顔を近づけると、むわっと甘ったるい匂いがする。乳首を口に含むと、まひるは「んっ……」と女の声を出した。


 まひるが潤んだ瞳で俺を見つめてくる。

 そして、肩で息をしながら、俺に唇を重ねてきた。


 俺はちょっと戸惑ったが受け入れる。

 すると、まひるは視線をとろんとさせ、控えめに舌を入れてきた。


 きっと、俺は、初対面のこんなに可愛い女の子と、そういう状況になっていることに、異様な興奮を覚えている。自分でもびっくりするくらいに理性がどこかにいってしまって、汗ばんだまひるの全身を動物のように貪った。


 それからは、まひるはすごかった。

 可愛くて、大胆で。そして、妖艶で。


 セックスを楽しいと思ったのは、生まれて初めてかもしれない。



 

 (アラームの音)



 次の日の朝。

 怠い。昨日しすぎた。


 隣を見ると、まひるが寝ている。

 寝顔も可愛いな。


 口をむにゅむにゅして、俺を抱き枕のように抱きついてくる。


 っと、今日は平日だ。

 この子、学校あるんよね。


 まひるの肩を揺すって起こす。


 「学校だよね? 起きなくて大丈夫?」


 

 すると、寝ぼけ眼を擦って、まひるが答える。


 「今日は、◯◯教授の授業だけだから、出席とならないから大丈夫。今日は休む〜」


 ◯◯教授って、この前、テレビに出てたよ。

 日本を代表する権威の学者じゃないか。ってことは、学校はやはり……。

 

 ……まぁ、それはいまはどうでも良いことだ。


 俺も休んじゃおうかな。

 入社して初めてのズル休み。一回くらい許されるだろう。


 会社に電話する。すると、運よく先輩がでた。


 「すみません、高咲です。今日、祖父の不幸で休みます」


 「え、お前、じいさんいないじゃん。ま、いいや。休みね。お前の業務も処理しとくから、楽しんで〜」


 先輩には、昨日、まひると会うと話したので、色々と察してくれたのだろう。

 持つべきものは話のわかる先輩だな。お礼に、明日、とっておきののろけ話を聞かせてやろうではないか。




 (アラームの音)



 また寝てしまったようで、目を開けると昼前だった。

 俺が起きたのに気づいたようで、まひるも起き出す。


 ささっと髪の毛を直すと、手を握ってきてニコッとしてくれる。

  

 「一緒に寝坊しちゃったね」


 あ、そうだ。

 俺はニヤニヤしながらまひるに聞いた。


 「あのさ、昨日、まひるが興奮して、そっちからキスしてきたんだけど。NGじゃなかったっけ?」


 すると、まひるは前髪を一生懸命おろして顔を隠そうとする。


 「だって、気持ちよくて幸せで、つい……。嫌だった? ごめんね」


 「いやいや、むしろ大歓迎だよ。俺もしたくなったらキスしてもいいかな?」


 すると、まひるは恥ずかしそうに頷く。

 どうやらNG項目がひとつ減ったらしい。



 では、早速、権利を行使させてもらおう。


 まひるにキスをする。

 すると、まひるも自然に舌を入れてくる。


 耳元でまひるの喘ぎ声が聞こえてくる。

 

 あ、やばい。また下半身が……。


 まひるは嬉しそうな顔をすると、ちょっとだけはにかむような表情をして毛布に潜り込む。


 「ちょ、ちょっと」


 俺は情けない声を出してしまった。

 すると、まひるは顔だけ毛布から出して、小悪魔のような笑顔をすると、「昨日のお返し」と言ってまた布団に潜る。


 それから5分ほど、俺は蹂躙じゅうりんされ弄ばれた。

 早々に俺が賢者タイムになっていると、まひるがようやく布団から顔を出す。


 「おにいちゃんの美味しかったよ」


 そう言うと、ぺろんと舌を出して唇の周りを舐めた。


 まひるはいじめっ子の目になって、キスをしてくる。


 そして、耳元で。

 「おにいちゃん、自分の味はどう? それと、おかわり頂戴♪」


 そう言うと、また布団に潜ってしまった。

 

 

 結局、その日はチェックアウトの時間を過ぎてしまい、まひるも朝に帰れば大丈夫だと言うので、もう一泊することにした。


 

 次の日の朝になった。

 俺は、左腕で目を覆う。


 『うう、仕事休んだのに昨日より疲れているんだけど……』


 右腕には、まひるが寝ている。

 その天使のような寝顔を見ながら、俺は思った。


 多分、二日間で標準男子の半年分はしたと思う。

 この子と一緒に暮らしたら、俺、確実に早死にするわ。

 

 こいつ、リアルサキュバスかよ。


 すると、まひるが目をパチリと開ける。

 そして、グーっと顔を近づけてきて、キスをしてくる。


 甘えん坊全開だな。


 「ねぇねぇ。朝のご褒美ちょうだい」

 まひるはそういうと、また毛布にもぐった。

 


 それから、シャワーを浴びて着替える。

 ホテルのクリーニングサービスを頼んだから気持ち悪くはないけれど。


 お互いに目を見合わす。

 

 「2人とも、一昨日と同じ服だね……」


 これで会社行ったら、先輩に何言われるか。

 まひるも同じ事を考えているようで、ため息をついている。


 新宿駅まで一緒に歩く。

 すると、高層ビルの間をすり抜けた朝日が目に染みる。

 

 はぁ、もう1日やすみたい……。

 

 歩いていると、何人かの男は振り向いて、まひるを見る。

 他の男からみても、やっぱコイツ可愛いんだな。



 まひるは山手線で俺は地下鉄だ。駅の改札で手を振って別れた。

 ちょっと名残惜しい気持ちになって、おれは勇気を出してまひるに声をかける。


 「また会えるかな?」


 不安で鼓動が速くなる。


 まひるは、ニコニコして手を振ってくれた。

 雑踏で声は聞こえなかったけれど、まひるが何を言ったかは、口の形ではっきりわかった。


 「うん。またね」


 おれは心の中でガッツポーズをして、会社に向かうのだった。

 

 

 


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