第8話 2人の関係。


 会社につくと、先輩に根掘り葉掘りきかれた。でも、昨日、俺が抜けた分を残業してカバーしてくれたらしい。少しくらいのプライバシー侵害は我慢しないとバチがあたるか。


 本当にありがたい。

 先輩、クズだけど大好きだよ。


 先輩が聞いてくる。


 「んでさ、お互いに顔写真とか交換してなかったんだろ? どんな子だったの?」


 おれは正直に答えた。


 「それがですね。想像の遥か上を行ってました。可愛いだけじゃなくて、なんか安心するんですよ。誰かに似てるっていうか。目なんてまん丸のクリクリなんです」


 先輩は何だか悔しそうだ。


 「んで、ヤったの?」


 おれは、なんだか気分が良くなって腕を組んだ。


 「ええ。それは。身体も最高で。2日間で半年分はしたと思います」


 「すげーな。初対面で連泊とか。若いなぁ。ゴムとか足りたの?」


 「備え付けのすぐに無くなっちゃって。あとはナシで……」


 「まじかよ。病気とか怖くないの?」


 「なんか、根拠なくこの子なら大丈夫って。全然、遊んでる感じじゃなかったし」


 先輩は眉を下げて、やれやれという顔をした。


 「おまえさ。ばかなの? 初対面でヤレる女が大丈夫な訳ないじゃん。まじで気をつけた方がいいぜ? でも、顔よし、カラダよし、性格よし、セックス良しなら、セフレとしては最高だな。恋愛は他の子に期待するとして、大切にしろよ〜」


 先輩と話していて、現実に引き戻された気がした。


 そうだよな。おれらはセフレなんだもんな。

 まひるが彼女みたいに優しくて心地いいから、勘違いしそうになる。


 だけど、他の子に期待って、そんな気にならないよ。

 あんな子、そうは見つからないし。


 見劣りしてしまって、他の子に興味がわかないと思う。


 


 それから1週間、まひるから連絡はなかった。

 なんとなくしづらくて、俺からも連絡はしていない。


 だけど、まひるといた2日間のことを考えなかった日はない。


 彼女みたいに可愛い。

 でも、違う。


 『はぁ……』


 そんな1人問答をずっと繰り返していた。


 まぁ、実際のところ。

 俺の女性に対する不信感が癒えた訳ではない。まひるがどんなに可愛くても、今の関係が一番なんだろう。


 

 連絡が来ないまま、更に1週間がたって『もうこのまま終わるのかな?』なんて思っていたある日、まひるから連絡がきた。


 メッセンジャーを開くと、短く一言。


 「エッチしたいです」


 連絡が来たのは嬉しいのだけれど。

 その一言を見て、現実を突きつけられた気分になって、悲しくなった。


 おれが1人で舞い上がっていただけみたいだ。

 だけれど、セフレという関係を望んだのは俺自身だ。まひるは何も悪くない。


 そう思い直して、まひるに返事をする。


 「了解。んで、いつがいいの? 俺としては、週末のどっちかで車で会いたいんだけど、いいかな」


 すぐに返信がきた。


 「はい。わたしは土曜日がいいです。待ち合わせ場所はxxxで。車はちょっとこわいけれど、おにいちゃんならそれでも良いです」


 おれはまた、まひると会う約束をした。

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