第34話 エンディングA

 あれから2年。1期開始の時期になり、光希の高校生活が開始した。


 まず驚いたことは忠純派ちゅうじゅんは竜伏斎りゅうふくさいの娘が光希の同級生として入学してきたことだ。俺のデータにはないキャラだぞ!?


 彼女は父に似て(竜伏斎氏は身長190センチオーバーだ)身長が高く、そしてかなり鍛えているらしく体格がよかった。アスリート体型というやつだろうか? そして光希は一目惚れしてしまうのだった……。


 しかも俺が祈心会を狩りすぎたせいか、1期のメインイベントが起こらないというね? 原作クラッシャーになっちゃったよ俺。


 1期は日本神話モチーフの話で、祈心会にそそのかされた国津神が天津神勢力を滅ぼして日本という国を取り戻そうとしている……という話だった。そこでアマテラスたち天津神を宿す主人公たちがそれを阻止する。という流れになる。……はずだった。


 なおライバルの少年はスサノオを宿し、ヒロインの少女はツクヨミを宿しているのだ。わかりやすい。


 その国津神勢力に襲われた光希がソウルバインダーに目覚めるところから物語は始まる。そしてスサノオを宿したことで粗暴で乱暴になってしまったライバルをボコって矯正したり、ツクヨミヒロインちゃんとイチャコラしたりするストーリーだった。だったのだ。


 俺が全部クラッシュしてしまったようだが!


 入歌も光希と同じく水神学園に通っている。来年辺りになったら彼女も事件に巻き込まれるのだろうか? それとも何も起きないのかもしれない。


 俺は学園の近くに事務所を構え、探偵を隠れ蓑にしながら退魔師をしている。最初は祈心会に襲撃されたりもしたが、もう誰も来なくなってしまった。暇だ。



 とても言いにくいが、マリアとエキドナについては、この事務所(兼住居)と実家を行き来したりして、半ば同棲のような形になっている……。


 エキドナは母属性が強かったらしく家事をすべてマスターして、和食まで作れるようになった。ちゃんと皮だって剥けるようになった。すごい。


 マリアは神社と神殿を管理しながら、ここに遊びに……泊まりに来るようになっている。……だって、俺だって18歳男性なんだぞ! 無理無理! 負けたよ!


 エキドナと俺の子どもが出来たとき、一体何が産まれるかが最近の心配事である。ドラゴンと人間のハーフとか生まれるのか? それとも怪物……? マリアさんは毎日が楽しそうでよかったです。




◇────────────────◇




 ある日、俺が久しぶりに実家に帰宅して車庫から母屋へ向かう途中で俺はラクダに会った。奈良の山奥で。それもかなり大きいやつだ。背中に白いテントのようなものを積んでいる。どこかの動物園から逃げ出してきたのだろうか?


「お前、どこから来たんだ?」


 俺がラクダにそう話しかけると、ラクダは不満げにフンッと鼻を鳴らした。なんだか態度の悪いラクダだな……。


「それはお互い様ではありませんか?」


 ラクダの背中に乗っていたものはテントではなく、人だったらしい。そして聞き覚えのある声だった。


「幸森さん……。コスプレですか?」


「そんなわけないでしょう。これが私の正体です。隠していて悪かったと思っていますよ」


 白いアラビアンナイトのようなドレスを着て、小さな金の王冠を被った幸森さんが、至って真面目な顔で答える。


「……人間ではないと思ってましたけど……」


「あのワニ爺ウァサゴのせいで私の計画はめちゃくちゃです。まぁあれを呼んだ私の落ち度ですね」


「計画って?」


「ああ……何も知らないままで居て欲しかったんですよ。私も」


 未舗装の土の上をラクダがゆっくりと歩き始める。


「私はずっとあなたを見て来ました。前世からです。やっとあなたと出会えたと思ったのに……」


 何やら語り始める幸森さん。も、もしかして俺が前世の記憶を思い出したのも、今戦っているのもすべて幸森さんが黒幕だったのか!?


「わ!」


「……わ?」


「私だって! 結ばれたかったのに!」


 黒幕さん?


「変な女ばっかり拾ってきて! 先に私に手を出すべきですよね!? だって私の方がずっとずっとずっと前から好きだったんですよ! おかしいですよね!?」


 幸森さん!?


「ここ最近脳みそが破壊されそうになってきたので、そろそろあなたを取り返しに来ました」


「つまり、私が先に好きだったWSS、ってこと!?」


「他に何がありますか! あの忌々しい金髪女と角なしを側室にして、私が正室になります!」


 ラクダの上でキレ散らかしていた幸森さんの左腕に炎があがる。


「勝負です! 美門響!」


「なんだから着いて行けてないが、望むところだ! 幸森さん!」


「……ご! ゴモリーです! ゴモリーと呼んでください!」


「あっ、はい……。望むところだ! ゴモリー!」


「えへ、えへへ……」


 俺の腕からも炎が上がり、二人の目の前にデッキが現れる。


「「ソウルバインド!」」


──────────────────

◇美門 響&ゴモリー 【ソウル】0

パートナー

〇未来を変える力【常時】

このパートナーたちが場にいる限り、君たちの未来はよりよいものになるだろう。


「未収録カード」

──────────────────


ご愛読ありがとうございました。

コメントや応援は本当に励みになりました。

カクヨムコンにもう1本書きたいので、この作品は一旦ここでお終いになります。

このあとはネタバレありの登場人物紹介とカードルール説明になります。

読まなくても大丈夫なやつですので……。


近況ノートにあとがきがあるかもしれません。


新作「国家間紛争しながらロボットでダンジョンから資源を奪い合うエロゲの悪役侯爵令嬢にTS転生したのでヒロイン全員とお友達(意味深)になる」もよろしくお願いします。

また鬱フラグクラッシャーします。

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