第26話 久しぶりの我が家

 あの教会での戦いから数日かけて、ようやく我が家に帰って来ることが出来た。思い返してみると、行程の95%が移動時間だった気がするな……。


 約1週間ぶりに家に着くと幸森こうもりさんが暖かく出迎えてくれた。俺にも帰れる場所があるんだ……。


 そんな日常への帰還から時は経ち、12月。かなり肌寒くなってきた。ここは奈良の山奥なのでスタッドレスタイヤじゃないともう無理だよ。


 まず、いい報せといい報せと悪い報せと悪い報せがある。


 頭が痛くなってきたのでいい報せから話していこう。


 なんと! 島根県の件のポストに手紙を出した件の返事が来たのだ。神様から直々にお手紙を頂くことになるとは……。


 その神の名は『イザナミ』。たくさんの神や日本列島をも産んだとされるとんでもない神様だ。我らが日本人の母であると言っても過言ではない。ないよね?


 ちなみに彼の神は詳細は省くが色々あって旦那であるイザナギとは離婚し、常世の国と黄泉の国で別居しているのである。


 そのイザナミが条件付きで力を貸してくれるのだ。


 その条件とは、まず同じデッキには入れてはいけない神の指定。元旦那とか色々会いたくない神が居るらしい。それは大丈夫だ。


 さらにの援助だと言うこと。あまり常世に出てくるの好きじゃないみたい……。恐らくこの縁が結べるのも、ソウルバインダー作中のヨシカドさんとの繋がりがあったお陰ではなかろうか? サンキューヨシカドさん。


 それにしても一度きりと言うのは何か因縁のようなものを感じざるを得ないな……。


 そして2つ目のいい報せは先だって退治した『大いなるバビロン』が占拠していた教会で、『神性の精髄』を手に入れることが出来たのだ。


 その結果、祈心会関係のカードが大量に解禁された。なんだったら今現在日本で一番機神に詳しいのは俺の可能性が大だ。


 時系列的に絶対に今存在していないような機神のカードまで解禁されてしまった。それを言ったら『天使型機神』もそうだったんだけどさ。あれはあの研究者の男が関係していたのかもしれない。


 話を戻そう。『神性の精髄』である。もう名前からして不穏~~~~!


 実際かなり不穏なアイテムで、あの教会での戦いのあと、この『神性の精髄』がまた原作の話をややこしくするのである。


 見た目は直径10センチほどの水色の綺麗な水晶玉なのだが、あまり作中でも詳しく語られないが何やらすごくヤバい物体ブツらしく、祈心会もそれを追っているのだ。マクガフィンかな?


 あの教会にあったのは何かの手違いだったようだが、『大いなるバビロン』に占拠されたことで見つかることもなく、忘れ去られていた。それを主人公一行が退治してしまったことでこれが発見されることになる。


 現場を押さえた退魔師たちの中に祈心会に通じる者が居たのかは定かではないが、その見つかった『神性の精髄』が祈心会の手に渡ってしまう。それでまたクソみたいなイベントフラグが乱立することになってしまうのだ。


 俺の前世の記憶の中にはこの物体についての詳細がなかった。設定資料集とかに書いてあったのかもしれないが、残念ながら覚えていなかった。とにかく祈心会に渡さなかったからいいだろ! とりあえずうちの神社に奉納しとこう。


 これで未来のクソイベントフラグが数本折れたと信じたいところだ。


 さぁこの調子で悪い報せもいってみよう! ……気が重い……。


 さて「大和湖」というものをご存知だろうか?


 奈良県北部の盆地が古代は湖だったという説で、その湖の名前だ。


 万葉集にも読まれてたから飛鳥時代にはあったよ説や縄文時代くらいじゃないか説など、これまた諸説ありなのだが……。


 現在その盆地は奈良の人口のほとんどが集中する市街地になっている。他は全部山だからね、奈良。


 最近その市街地で『角の生えた女』の目撃情報があがっているのである。


 我に覚えあり~~! それ『ソウルバインダー・ゼロ』のラスボスぞ~~~~~!!!


 例の卵を探しているのだ。まぁ持ち主だからね。そりゃ取り返しに来るよね……。


 原作では12月24日。クリスマスイブが決戦なのだ。かなり原作とは違う流れになっているが、恐らくその辺りで戦うことになるだろう。12月の後半は奈良の都市部で過ごすことになりそうです。都会だ!


 そして最期の悪い報せなのだが、来客だ。


 先ほどからずっとこうやって現実逃避している俺の前で、その客人と幸森さんが舌戦を繰り広げていた。


「だから! なぜ! あなたが! ここに住むことになるのです!」


「だからご恩を返すためと言っているではありませんか」


 なぜかマリアが来ちゃいました……。


 しかも30分ほど二人の会話を聞いているのだが、このマリアという女、相当


 話を聞いている内容によると、取り調べが終わった段階ではマリアは戸籍がなかったそうだ。両親もわからず、天涯孤独の身となった。戸籍は退魔師のお偉いさんがなんとかしてくれたようなのだが、祈心会に戻す訳にも行かない。そこで本人の強い強い希望により美門家に来ることになったらしい。……なんで? 誰か止めろ?


「あなたでは話になりません。 美門様? 美門様はここの領主のようなものなのですよね? ならば私の初夜権でどうでしょうか。確かに私は経験がありません。しかしご安心ください。私の槍を磨くイメージトレーニングは完璧です。絶対にご満足頂ける自信があります。処女を賭けてもいいですよ」


「何なんですか!? この女は!!!」


 知らんて……俺が聞きたいよ……。恨むぞ大淫婦……。


 あの教会で『大いなるバビロン』を倒したあと、忠純派の応援が来るまで内部の探索をしたのだが、妙に歴史官能小説みたいな本がたくさんある部屋あったもんな……。あれマリアの趣味かよ……。同じ部屋に『神性の精髄』もあったんですけどね。


「あっ! もしかしてそういうことですか? 少し恥ずかしいですけど、美門様にならいいですよ」


 何かを感じ取ったのか、勘違いしたのか、マリアは立ち上がる。そしてその場でくるりと1回転すると、突然部屋の中に風が巻き起こった。


「余が伽を命ずる! ……こんな感じですか?」


 へ、変身したんですけど!? こんなの原作にありましたっけ!?


 風が治まると部屋の中には真っ赤なドレスを着たマリアが立っていた。大淫婦が着ていたドレスを着こなし、絶妙に見えないポーズでふとももを見せつけてくる。スゲ~


「何なんですかこの女は!!!」


 風で髪がボサボサになった幸森女史が吠える。コワ~


 あと俺に聞かないで欲しい。


 ただ気がかりなのが、もしかしてマリアの中にまだ『大いなるバビロン』の残滓のようなものが残っている可能性もあるのではなかろうか? こんな変身だって出来る訳だし……。


 倒したと思ったボスの卵がくっついていて、あとで孵化して大惨事になるパターンあるもんな。アリとかエイリアンとか。


 しかし、それについては俺にいい考えがある!


「ローマ帝国は?」


「超最低です!」


 通ってよし! 何の心配もない!


 それになんだかんだ言っても彼女も被害者だしな……。


「行くところがないみたいだし、少しくらいいいんじゃないか?」


「どういう判断なんですか!? そうやって神でも何でも拾って来ないでください!!」


 なんでもは拾って来てないよ! 人聞きが悪い! 

 

 俺はそっと幽霊屋敷となった我が家の客間から目を逸らした。


「よろしくお願いしますね、先輩。私は3人でするのもオッケーですから」


「何なんですか!!!!! この女は!!!!!!!」


 知らんて……。


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◇二足歩行1型機神 冥20 中立20

ノーマル


〇対神性弾【瞬間】

コスト:自軍の【名前に『機神』を持つ神】を1体黄泉へ送る

対象に10ダメージ。(闇属性)


〇耐神性シールド【常時】

この神は不活性化状態でも防御出来る。


戦闘力40 無効 闇 弱点 雷

「無理矢理二足歩行させたような水色ボディのダサい機神。

右手に対神性弾用の銃、左手に耐神性シールドを持つ。ダサい。

民間警備会社のロボットを流用した機神らしい。

よく他の機神を発射したあと自分のことも発射してくる」

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