第25話 教会でのバトル3
「と、ところで……相談なのだがな?」
マリアの声に俺の手が止まる。
「余の依り代となっているこの娘の話だ。このアウグスタも不憫な子でな……」
マリア……いや、大淫婦は黙示録の獣の上に座ると長い足を組みながらこちらを見る。
「うむ。この教会を支配する祈心会とやらに売られ、怪しげな儀式を行われ、そして余の依り代となった哀れな娘だ。今でこそ余が意識の主導権を持っておるが、アウグスタの意識も残っておる。今は眠っているがな……」
見せつけるように足を組み替える大淫婦。クソッ! 目で追ってしまう!
「1ターン待ってくれぬか。さすればアウグスタにこの体を返そう! ただ余はアウグスタのこれからが気がかりだ。お前に頼めるだろうか? アウグスタさえ託すことが出来れば余に思い残すことはない。 ……だが! だが余は祈心会とやらだけは許せぬ! 必ずや余の無念を晴らしてくれ! お前には何もしてやれぬが、どうか余の願いを聞き届けて欲しい。ひいてはもう1ターンだけ待って欲しいのだ。必ずアウグスタを目覚めさせてみせる!」
獣の上に立ち上がると片足を一歩踏み出し、俺に語りかけるように演説を続ける大淫婦。俺が何も答えずにいるとさらに言葉を続ける。あ、見えた。
「余は今まで一度として約束を
……。
…………。
うっわ〜~~~~マジで原作とおんっっっなじ展開じゃん! 思わず言葉を失ってしまった。っていうか一人で盛り上がりすぎだろ。コワ~
あ、これ時間稼いでその間に依り代となっている娘の魂を吸収しようとしているんですね~。マジで外道過ぎて唖然としてしまった。さっさと殺そ。俺は赤の他人の「Trust me.」は信用しないことにしているんだ。すまんな。
ちなみに原作だと素直な主人公君は口車に乗ります。そして依り代の娘の魂を吸収した『大いなるバビロン』は覚醒。権能とソウルが強化され、さらに主人公を苦しめる訳ですね。
そして苦戦しながらもなんとか勝利し、見事主人公君の成長の糧になるのだ! トラウマとともに! やったー!
いや、やったー! じゃないんだわ。主人公に流れるようにトラウマを植え付けるんじゃあない! やはり脚本家は生かしておけぬ。
「権能『瓶詰めの精神感応体』の効果は、神器『三日月の護符』を選択。戦闘フェイズ、『天使型機神』で攻撃」
「余の話を聞いておったのか!? この娘の魂はどうなるのだ! ならばこの体を好きにしてもよい! この体はまだ
『シェード』は確かに【浮遊】を持ち、不活性化状態でも防御が出来る神だ。だが……。
「『天使型機神』の権能『
「言葉が通じぬのか! やはり異民族よ!」
『壊神剣』のコストとして山札の一番上のカードが虚無へ送られる。こんなんコストタダみたいなもんですよ。
すると『天使型機神』が持っていた剣の柄から光が伸びる。『天使型機神』はそれを一振りするとヴン! と礼拝堂に響いた。……これ完全にあのセイバーでは?
これで『天使型機神』は戦闘力+40で戦闘力110。さらに【貫通】を持つ。戦闘力10の『シェード』に防御されようと、やつのライフに100ダメージを与えることが出来る。
大淫婦に肉薄した『機械型機神』がその光の剣を振りぬく。ヴン! とまた音が鳴ると、慌てて防御に来た黒い影『シェード』ごと『大いなるバビロン』の体を切り裂いた。すると大淫婦の体になんたらセイバーに斬られた傷跡から亀裂が生まれた。
「おのれ異民族! おのれおのれ! 我が帝国は! 我がローマは千年の……!」
断末魔。
まるで穴の開いたスプレー缶から吹き出るガスのように亀裂から光が放出されていき、やがてその中心に横たわるシスター服の女だけが残された。クソ邪神にお似合いの最期だ。
俺の勝ちデース! クソ邪神討伐! フラグぶち折るの気持ちええ~~!!! 癖になりそう!
後ろで祈りを捧げていた即身仏たちがバタバタと倒れる音が聞こえた。恐らく精神支配的なアレが解けたのであろう。
……ん? あいつら祈心会の関係者なんだよな……? マズいのでは?
土地勘のない場所。深夜不法侵入した教会。気を失った少女。即身仏と化した教会関係者10名弱。何も起きないはずもなく……。
それで俺はここからどうすればいいんですか?
……た、助けて! 入歌えもん!
◇────────────────◇
持つべきものは弟子である。俺が勝手に言っているだけだが。
あれから入歌に連絡を取ると入歌の執事をしている佐伯が出た。深夜に中学生の携帯に電話をかけてくるなという正論パンチを顔面にストレートでキュッと頂いたあと、九州で大きな力を持つ退魔師の派閥である
2時間ほどすると僧侶の姿をした中年男性とスーツ姿の中年がわんさか集まってきた。その中で一番偉い人っぽいおじさんは
身長190超えの大男で虚無僧のような籠を被っているので顔は伺いしれないが、朗らかな人であった。人徳ありそう。
即身仏が搬送されていく中、俺と竜伏斎さんは名刺交換をし、今後について話し合うことになった。
まず最初にお叱りを受けた。一人で突撃するんじゃない! と……。こんなまともなこと言うなんて本当に
そして感謝もされた。わざわざ九州まで来て祈心会の暗躍を止めたことへの感謝だ。なんでわざわざ九州まで来たかについては、「神のお告げ」としておいた。実際そうだしな。例え占者様がただの人間のおじいちゃんだったとしても神だ。神はネットにだって居るしな!
俺は竜伏斎さんにここで起こったことや、行われていたことを説明し、教会の中にはその証拠となりそうなものもあったことを伝えた。
大体の引き継ぎも終わり、後始末はしてくれるようなので帰ろうかと思っていると、スーツの男に連れられてマリアがやってきた。
一応彼女は被害者の扱いだが、重要参考人として話を聴くことになるそうだ。それは仕方のないことだろう。
「あまり覚えてはいないのですが、命を救って頂いたそうですね。本当にありがとうございました」
彼女も疲労が溜まっているのだろう。ややふらつきながらも俺にペコリと頭を下げた。
「生きていて何よりだ」
奥歯で飴の棒を嚙みながら、俺は短く返した。疲れたよな……俺も疲れたよ。早く帰ろう。どこかで宿が取れるか聞かないとな……。
「このご恩は必ずや……。神のご加護があらんことを」
……どの神だよ? と思って俺は振り返り、マリアの顔を見た。
陶器のような肌に整った顔立ち。そしてどこかジメジメとした目……?
数度彼女が
ここから1泊して、また1000kmの距離を運転して帰るのしんどいな……。
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◇大いなるバビロン(パートナー) 【ソウル】60
〇最も強大な版図【常時】
敵バインダーがカードを引いた時、カードを1枚引く。
〇千年帝国【常時】
ダメージを受ける時、手札を1枚黄泉へ送ることで20ダメージを軽減する。
「作中で『大いなるバビロン』が素体となっていた少女の魂を喰らい、覚醒した姿。
パートナーとしてはカード化されておらず、作中とゲームのボスとしてしか見ることが出来ない。当たり前である。
主人公を精神的にも肉体的にも苦しめた強敵。
この能力が明かされた時、アニメが打ち切りになるんじゃないかとネットで話題になった。よく勝てたよな。
その後もアニメの回想シーンで何度も見るハメになり視聴者にもトラウマを植え付けた」
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