第23話 教会でのバトル1

 俺とシスターのバトルが始まった。


 俺の隣に立つ新たな主神は『天使型機神』だ。祈心会が創造した人造機神である。……なんで使ってるのかって? いや、バインダーに居たから……。それにこのシスター戦でぶっ刺さるので……。お、俺は使えるものは使う主義だから! 安珍だってそうだったでしょ!


 対するシスターの主神は『大いなるバビロン』。聖書の一つ、「ヨハネの黙示録」からお越しのローマ帝国をディスるために産まれた神──悪魔か?──だ。


 原典では10の角を持つ7本の首を持つ黙示録の獣に乗った、赤い衣の女(大淫婦)で表される。なお、その大淫婦はローマ帝国で信仰されていたローマ・カトリックやローマ帝国の女体化とされる。業が深すぎないか? 聖書は全てが「諸説あり」なのであまり深く考えない方がいいだろう。


 ええと、つまり「黙示録の獣」+「大淫婦」=『大いなるバビロン』だ! よく「大淫婦バビロン」の名で呼ばれるのだが、ソウルバインダーは全年齢向けゲーム。ちょっとダメだったみたいですね。


「余のカードのコストは20」

「俺は30だ」

「先攻はくれてやろう。さぁ、参れ」


 俺と大淫婦(?)はデッキの一番上のカードを公開する。そして対するシスターの権能が見えてきた。



◇マリア 【ソウル】40

〇無私の求道者【常時】

開始フェイズにカードを引く時、1枚目はカードを引く代わりにデッキの上を3枚見て、その中の1枚を手札に加え、残りを黄泉へ送る。



 シスターの名はマリアと言うらしい。権能は大淫婦のものなのだろうか? それとも素体となった女性のものだろうか? 強力なソウルと権能を持っている。俺より格上では? 上位互換やめて?


 そしてはちゃめちゃにキリスト教を冒涜している存在の名前がマリアなの笑えない……。


「では俺のターンだ」


 お互いにカードを6枚引く。……いや、マリアは権能によって手札を6枚にしながら黄泉に2枚カードを送った。


 ソウルバインダーはデッキによっては黄泉もリソースとなる。前回戦った祈心会の研究者も墓地を少しだけ利用していたが、このマリアはさらに黄泉を利用するデッキだ。そのためかデッキの枚数も多いようだ、デッキの最少枚数である40枚と比べると倍はありそうな厚みがあった。


「メインフェイズ。冥のソウルを40生み出し、そのうち20を消費し『ポルターガイスト』を召喚。『ポルターガイスト』の権能『絶望の産声』によって冥のソウルが30生み出される。それと余った冥のソウル20、ライフを20消費し、合計70ソウルで『バフォメット』を召喚する」


 宙に浮くナイフとフォークと皿。さらに上半身裸の山羊角の大男が召喚される。ふわふわと浮遊しながらあぐらをかいている。


 『バフォメット』は父とのバトルでも活躍した、不活性化状態でも魔法を発動出来る召喚と魔法のエキスパートだ。


「ほお! なかなかよい趣味をしておる」


「……そうか? ターン終了だ」


「では終了フェイズに、余は『インキュバス』を召喚する。ライフを30消費し、権能『クイックサモン』により、手札を1枚黄泉へ送る」


 派手な服を着たコウモリのような翼が生えたイケメンが召喚される。名前でもわかる通り、サキュバスと対になる神だ。妙に股間を強調したポーズを取っている。


 権能『クイックサモン』を共通して持っており、『インキュバス』は召喚された時にデッキの上から6枚黄泉へ送る権能『めくるめく夜』を持つ。また黄泉にカードが送られていく。なかなかのペースだ。


「では余のターンだ!」


 マリアは開始フェイズに手札を5枚になるまで引き、その後、デッキの上をカード3枚見て、その中の1枚を手札に加え、残りを黄泉へ送る。これで黄泉は10枚。


「余のメインフェイズ。まずは混沌のソウルを10生み出し、ライフから10。『バイコーン』を召喚する!」


 2本の角を持つ黒馬が召喚される。バイコーンはユニコーンと対をなす神だ。アンチ処女厨な馬である。そして権能『節操を汚すもの』によって、召喚された時にデッキを3枚黄泉へ送る。


「余の黄泉は13枚か……。権能『駿馬の足音』により、バイコーンはすぐに合体素材になれる。『インキュバス』と『バイコーン』を素材に合体召喚する!」


 むむ! このマリア、本当になかなかの手練れだな……。


 主神とは別にデッキに合体神を入れることは可能だ。手札からの合体も主神の合体と同様の手順で行う。よく手札合体と呼ばれるのだが、これを使い熟し始めると中級者なイメージだろう。


 『インキュバス』と『バイコーン』が周りの空間ごと圧縮され、小さなたまになると二つはぶつかるように衝突する。すると、光が暗い礼拝堂に満ちる。せっかく『バフォメット』が居るのに魔法で合体阻止出来ないとは……ぐぬぬ!


「混沌のソウルを20生み出し、ライフを20消費し、2体合体神『ネビロス』を召喚! さぁ覚悟せよ!」


 黒いローブを着た痩せ気味の魔法使いのような男が召喚される。魔導書のグリモワールにも記される由緒正しい悪魔である。降霊術を得意としており、当ソウルバインダーでも黄泉を活用する権能を持つ。


 まず継承した権能『節操を汚すもの』と『めくるめく夜』でマリアの黄泉は22枚になる。……だ、大丈夫か? 俺は額に垂れる汗をさりげなく拭う。肉人形にはなりたくないぞ!!!


「ネビロスの権能『地獄の魔術』と『降霊術』が発動! 黄泉からコストが10以下の魔法1枚を手札に戻し、さらにコスト10以下のノーマル神を場に戻す!」


 黒い渦がマリアの目の前に現れる。ソウルバインダーの力で視覚化された黄泉である。そこから1枚のカードと1体の神が飛び出す。


「余は魔法『黙示録の裁き』を手札に。『イウウァルト』場に戻す。地租の納め時であるな」


 ちそ……? 年貢のことか? 日本と社会システムが違うのややこしいな……。


 『イウウァルト』は『バイコーン』のようにすぐに素材になれるだけのノーマル神だ。原典では堕天使の一番下っ端だったっけ?


「そしてライフを20消費し、ニンフを召喚!」


 あっ……これは……?


 ニンフはソウルバインダー黎明期には本当によく見かけたからな……。ニンフは俺のデッキにも入っている定番合体素材カード。召喚された時に任意のソウルを30生み出し、即合体素材になれる神だ。


 マリアが先ほど召喚した『ネビロス』も『バイコーン』の権能『駿馬の足音』を継承している。これで合体素材が3体揃ってしまった。


「征服してやろう! 召喚『大いなるバビロン』!」


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◇大いなるバビロン 秩序10 混沌10 70

3体合体


〇皇帝の権威【自軍メインフェイズ】

この神が召喚された時、敵の神1体を不活性化させ、その神のコントロールを奪う。

さらにデッキの上から7枚黄泉へ送る。


〇汚れた金の杯【瞬間】

コスト:黄泉のカードを10枚虚無へ送る

秩序か混沌のソウルを70生み出す。


戦闘力70 無効 水闇 弱点 ー


「アニメ4期で戦った大いなるバビロンがカード化。

モチーフとなったシスターのビジュアルが良かったため妙に人気が出てしまったが、シスターはパートナーとしてカード化はされなかった。後に設定資料集でシスターの名前はマリアで、悲惨な生い立ちだったことが判明。またか。

大いなるバビロンは他にも『マザーハーロット』『大淫婦バビロン』などと呼ばれる。

作中では合体神をも奪えるコントロール奪取の権能と、黄泉から生み出す大量のソウルで主人公たちを苦しめた。

原典では10本の角と7本の首を持つ黙示録の獣に乗った赤い服のスーパー淫婦らしい。

そのため『10』と『7』という数字がテーマになっている。

子供も遊ぶカードゲームに出すに辺り、名称の付け方には苦労したそうな」

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サブタイトルに無双ってついてるくせに後攻1キルされそうになってる…

サブタイトル変えようかな…

追記:無双する→鬱フラグをへし折る に改題しました。

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