第21話 デジタルなソウルバインダーと遠征

 カードゲームというものは基本的に紙で出来たカードで遊ぶ物だが、往々にしてデジタル……つまり家庭用ゲーム機で遊ぶ物が発売されたりもする。それはソウルバインダーも例外ではなかった。


 最初は携帯ゲーム機のソフトだった。原作1期の内容をなぞる、難易度低めで入門者、初心者向けのゲームだった。


 それゆえ以前からプレイしていたファンには少し簡単すぎた。やり込み要素もあまりなく、ファンはもう少し歯応えのある作品を求めた。


 ソウルバインダーの開発スタッフもそのファンの声を重く受け止め、据え置きのゲーム機で、歯応えがあり、やり込み要素も盛りだくさんなゲームを作った。うーん、有能。


 その名も『戦国ソウルバインダー・旋風録』である。……なんで?


 発売前から、なぜ戦国? 等不安視されていたが、蓋を開けてみると素晴らしい出来で、ソウルバインダーゲーの金字塔となった。


 ゲーム制作に協力したメーカーが戦国戦略シミュレーションゲームを得意としているだけあって、緻密な3DCGの日本地図を使用しての国盗り、合戦(戦闘はすべてソウルバインダーだが)が行える。


 さぁ、退魔師大名として、その領地の特性や歴史的建造物の力を生かして天下統一を目指そう!


 かくいう俺も桶狭間の戦いで、今川義元と織田信長が雨に打たれながら魂魄比こんぱくくらべ(作中でのソウルバインダーの名称)で一騎打ちするイベントには感動してしまったよ。


 同社戦国ゲームの兵力を霊力に変えただけ。同社戦国ゲームから顔グラを使い回している。これで子どもが歴史を間違って覚えたらどうする。など批判も多かったが作品としては名作中の名作だった。バカゲーと呼ばれたりもするが……。



 翌年発売の次回作は流石に同社戦国ゲームそのまんまはまずかったと思い直したのか、現代物になった。というか、戦国時代のはずなのに海外の神のカードがモリモリ出てくるのは流石に無理があった。


 3作目『ソウルバインダー・闘神録』では、ヨシカドさん──俺じゃん?──が全国を回って(地図は前作の使い回しだ)イベントをこなしながら、各地の中ボスを封印して行き、最終的にはラスボスを封印すればクリア、とゲームとしては明解な内容になった。


 全国各地にヒロインが居り、好感度を上げると恋人になれるという恋愛要素もあったり、そのヒロインとの絆を深めることでしか開放されないカードもあったりと、前作と比べるとかなり垢抜けている作品であった。ヒロインのことを現地妻と揶揄する声もあったが……。


 エンディングで恋人にしたヒロインが全員集合するので、エンディングが修羅場になることでも有名だ。なぜかこの事を考えると背筋に悪寒が走るよ……。


 退魔師の報酬が賞金稼ぎ形式なのはこのゲームの影響かもしれないな。


 ちなみに闘神録にはアニメのキャラはヨシカドさん以外ほぼ出て来ない。ヒロインとして水神市に出来る学校の教師が出て来るくらいだろうか。時系列もいまいち不明だ。



 前置きが長くなったが、俺は現在その『ソウルバインダー・闘神録』で起こせるイベントの場所に向かっているのである。どうせ遠征する予定があったので、駄目で元々という気持ちでイベントだけ起こしてから、その遠征をこなすことにした。


 ところで黄泉比良坂よもつひらさかをご存知だろうか? 日本神話には現世と冥界を繋ぐ坂があるのだが、その坂の名前だ。


 実は黄泉比良坂は島根県に現存している。名前だけが残っているなどと言ってはいけません。ソウルバインダーの世界には神が実在するのです!


 ゲームではそこで中ボスと戦えるのだが、隠し要素で2周目以降限定で使える強いカードを解禁出来る、比較的お手軽なイベントがあるのだ。


 そのイベントは、ある日ヨシカドさんの自宅に宛先を間違えている手紙が届く。女性からの手紙だ。そしてその女性に「宛先を間違えていますよ」と返信すると文通をすることになる。それを続けていくと、最後に『中身の入っていない黒い封筒』だけが届き、そこで文通は終わってしまう。


 その後、黒い封筒に入れた返信を黄泉比良坂の近くにある『黄泉の国へのポスト』に投函すると、神との繋がりを得られ、カードが解禁されるのである。ちなみにノーヒントだ。んなもんわかる訳ねぇだろ!


 いや、お前その『黒い封筒』持ってなくね? と返されるとぐうの音も出ない。


 とりあえず「世界の危機なんでお力をお貸しください。うちには神社もあるので是非来てね!」と丁寧丁寧丁寧に書いて市販の黒い封筒に入れてそのポストに投函しておいた。これが先ほど駄目で元々と言った所以ゆえんである。


 余談だが、黄泉比良坂近くには大根島という素晴らしいロケーションのドライブコースがあるので是非行ってみて欲しい。


 閑話休題。


 島根県での用事を終えた俺は目的地である長崎へと向かった。奈良から島根を経由して長崎に行くと、約1000km移動することになる。これ、車移動縛りの辛いとこね。


 途中で2泊しながらなんとか長崎に着いた俺は占者様に描いてもらった教会の前に来ていた。ちなみに場所は幸森さんに特定してもらった。長崎にある教会を虱潰しらみつぶしに調べてもらうことになった……。いつも本当にありがとうございます。


 手帳に描かれた教会は目の前にある教会の写真を転写したかのようだ。まったく同じ姿をしている。


 アニメでも特に所在地について語られることがなく困っていた時に、占者様と出会って占ってもらうことが出来た。非常に幸運だった。



 しかし、はい。えー、残念ながら、ここも……そのぉ……祈心会の施設ですぅ……。こ、ここはまだ! まだマシな方だから!


 ここは『ソウルバインダー・ゼロ』とは関係なく、アニメの……何期だったかな? 4期くらいだったか? ……とにかくアニメ作中で訪れることになる祈心会の施設だ。


 ただここは祈心会の施設と言っても味付けが違うタイプの施設だった。マッドな実験をしているタイプではなく、孤児を使って人間を人為的に悪魔憑きにして、そこから神に昇神させようというタイプの施設だ。いや、十分マッドな実験か……。


 原作で訪れることになるのは数年後になるはずなのだが、その頃には施設の内部が地獄と化しているので、可能なら悲惨なことになる前になんとか出来ないかと考えていたのだ。お目当ての物もあるし。


 海沿いにある国道から見える古めかしいが豪華な造り。外から見ているととても素晴らしい静かな教会なんだけどな……。


 明るい時間に様子を伺ってみたのだが全く人の気配を感じられなかった。ご近所のお年寄りの皆さんにも聞き込みをしてみたのだが、「たまに若いシスターを見かけるけど使われていないんじゃね?」と言われてしまった。……もう手遅れかもわからんね。


 ここには藤原家の依頼で来た訳でもないし、地元でもないので不法侵入を咎められた場合、とてもとても面倒なことになるのが目に見えている。夜を待つことにしよう。


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◇インキュバス 中立30

ノーマル 【浮遊】【瞬間】


〇クイックサモン【常時】

このカードが自軍メインフェイズ以外で召喚された場合、手札を1枚黄泉へ送る。

この神は自軍の神の数より敵の神の数が多くなければ召喚出来ない。継承不可。


〇めくるめく夜【常時】

この神が召喚された時、デッキの上から6枚黄泉へ送る。


戦闘力30 無効 ー 弱点 光


「サキュバスと対になるノーマル神カード。こちらは女性に対する淫魔である。

サキュバスはドレインライフ持ちの便利素材枠のため、いまだによく見るカードだが、こちらは一部黄泉を活用するデッキ以外ではほとんど見かけなかった。

やはり股間を協調するイケメン悪魔のイラストが不人気の原因か」

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全編清書したので☆ください…

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