第14話 出張と老人
結局、
そんな訳で真夏の8月。俺は千葉にあるフツヌシを
タケミカヅチばかりありがたがられるから? さみしがり屋? なんだったのだろうか。神界隈は奇々怪々である。あまり気にしないでおこう。
ついでと言ったら言葉は悪いが、茨城県にタケミカヅチを祀る神社の総本社もあったのでお参りはしておいた。
この2つの神社には
ちなみにどちらの神社でもソウルバインダーでバトルすることはなかった。平和的に繋がりを得られるのが一番だよ。ほんとに。
◇
俺は愛車のXX号で高速道路を走っていた。
今回は片道600km近い遠征だった。遠い。なおカーナビは使えないので紙の地図を使うはめになった。ナビってすごい便利だよな……。
音楽をかけながら黙々と高速道路を走る。令和を生きていた身からすると、今聴くすべての音楽が懐メロになってしまう。
余談だがカセットテープはもちろん、CDも使えた。CDは大体80年代の始め頃から普及し始めたからね。MDが普及するのは90年代初頭。残念ながら呪いにより使えませんでした。えっ、MDが何かわからない? 嘘だろ!?
ピリリリと単調な電子音が車内に響いた。ガラケーの外側の小さな液晶に幸森さんの名前が表示される。
俺は最寄りのパーキングエリアで折り返し電話することにした。2004年にはもう運転中の携帯電話の使用は禁止されてるぞ!(現在は2008年)
茨城から高速に乗り東京を通り過ぎて1時間ほどの場所にある
なんという偶然。ここは前世の日本には存在しない場所である。つまり『ソウルバインダー』の舞台になる場所だ。まだ造成中といった様子で通りかかる車も工事車両が多い。
「もしもし、幸森さん。どうしたんですか?」
ベンチに腰をかけ、缶コーヒーを開けながら幸森さんに電話を掛けた。電波が来ててよかった。アンテナ伸ばすか?
「もしもし、響さん。今どちらですか?」
「今? 富士山の近くですけど……」
そんな確認から始まった仕事の話は俺を驚かせることになる。
それは藤原家からの依頼の電話だった。とある施設の近くで怪異が現れ、人を襲っているというのである。さらに行方不明者も出ており、警察が捜査に乗り出してはいるのだが、怪異の専門家として藤原家に調査の依頼が来たそうだ。
これ、原作イベントですね。藤原家から依頼が来るのか……。原作だとどうだったかな? ナレーションでサラっと流されていたような?
「受けしましょう。場所は?」
「場所は奈良の……」
場所を聞くと県内でそれほど遠くない。茨城まで行ったあとだと近く感じるな!
パーキングエリアに併設された展望台から、山を切り拓き造られる工事中の学園都市を見ながら、俺はこれからの未来に思いを馳せた。
◇
あの電話から数時間後、俺は何事もなく家に着いた。
のだが……。
俺が自宅の駐車場──ただの空き地だけどさ──に車を停め、玄関に向かって歩いていると、庭の奥から巨大なワニが現れた。……なんで?
ど、どこの神の繋がりなんだ……? また勝手に連れて来て! うちは宴会所じゃないんです! 元の場所に戻してらっしゃい! うちじゃ飼えません!
「これこれ、そこな若者、困ってはおらんか? ワシに少し占われて見よ」
キェヤアアアアア! しゃべったァァァァァ!
これ知ってる! 夜の繁華街で
俺は小さい頃から、「知らない人に話かけられても返事をしてはいけない」と言われて育ってきたのだ。今こそ教えを守るのみ!
見えていないフリをしながら、早足で玄関をくぐろうとするとワニは静かに響く声で言葉を発した。
「よしよし、ちなみにおぬしの秘書はHカップじゃぞ」
「さぞ高名な
しまった! 思わず早口で返事をしてしまった! 教えはどうなってんだ教えは!
そんなことより幸森さんは気痩せするタイプなのか!? 誰か説明してくれよ!
振り返ってワニを見てみると、喋っていたのはワニではなく、その背に乗る痩せた
「うむうむ。名乗ることは出来んのじゃが、ワシは探し物が得意での。おぬし、何か探しておるじゃろう?」
「はぁ……まぁ探してはいますが、職務上の秘密というやつでして……」
「なになに、そこまで詳しく言わぬでよい。簡単でよいのじゃ。財布を落としたから探して欲しい、くらいの気軽な気持ちでよいぞ」
確かに俺が捜している祈心会の研究所は本編と関係がなく手掛かりもない。捜しようがなく行き詰っていたのも事実。ここは一つ、聞くだけ聞いてみるか? 魂持って行かれたりしないよな?
「なになに、お代は頂いておらんよ。おぬしの縁に感謝するのじゃな」
まるで心を見透かしたかのような返事。老爺は俺と繋がりのある神の知り合いのようだ。誰だろう? ヘカテーか? 老人の姿の神、多すぎ問題である。ワニだからエジプトか!? わかんねぇ! 特定出来ねぇよ!
「それではお言葉に甘えまして。実はあまり詳しくは言えないのですが、アジトと言いますか、研究所と言いますか、とある拠点をを探しておりまして……」
「それはそれは、ホホホ! ……うーむ、西じゃな」
目を瞑り、うんうんと唸りながら老爺はそう口にした。
「どれどれ、何か書くものはないのう?」
俺は胸ポケットに入れていた手帳のメモスペースを広げて、ペンを挟んで渡そうとするも、老爺の乗るワニの無機質な目と目が合った。ワニはジっとこちらを見ている。怖いんですけど……。
「これこれ、食べてはいかんぞ。さぁ描いて進ぜよう」
やっぱ食べるの!? と俺が驚いている間に、老爺は受け取った手帳にスラスラと何かを書いた。
「よしよし、ここじゃ」
ワニの上から手帳が返される。手帳の開いたページにはボールペンで描かれた写実的な、まるでモノクロ写真のような教会が描かれていた。そしてその下にはNagasakiと書かれている。
流石、神。すごい。俺はお礼を言おうと顔を上げると、そこにはもうワニも老爺もカラスの姿はなかった。
誰だったの!?
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◇ウァサゴ 秩序30 中立20
2体合体 【地走】
〇予見【常時】
バインダーは自分のデッキの一番上を見てもよい。
またそれを召喚、発動してもよい。
〇千里眼【自軍メインフェイズ】
コスト:手札を2枚黄泉へ送る。
カードを3枚引く。ターン中1回のみ。
戦闘力50 無効 ー 弱点 ー
「2弾で収録された神。
レアリティも低く、最初は誰も見向きもしなかった。
しかしウァサゴを主軸とし、敵の行動を制限、妨害するカードが多く入ったデッキが結果を残すと、いわゆるコントロールデッキが組まれるようになり始める。
対戦相手よりたくさんカードを引いたり、使うことが正義だと教えてくれる1枚」
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