第12話 入歌とのバトルが終わり、これから

 結局、入歌は気を失ったまま起きなかった。流石に少女を放置して帰るのは人として問題があるし、でも事案になったら困るし……。


 と俺が逡巡していると、バチバチしているタケミカヅチが現れて、さっさと連れて行けと急かされることになった。繋がった神って大体何が言いたいのか、ちょっとだけ解るんだよな……。


 お姫様抱っこで入歌を連れて行くことにする。護衛? 保護者? にタケミカヅチも後ろを着いて来てくれている。これで通報されることはあるまい。


 入ってきた通用口まで向かうと、神主らしき人物が頭を下げたまま現れ、小さな桐の箱を手渡してきた。神と顔を合わせてはいけない決まりでもあるのだろうか?


 俺はなんだかよくわからんが桐の箱を受け取ってお礼を言うと、自分の車が停められている駐車場へと向かった。


 そこには俺が来た時には停まっていなかった高級セダンが停まっていた。その車の横に立っていた人影が俺のことを見つけると、目にも止まらぬ速さで俺の隣まで走り寄り、俺が抱きかかえる入歌を見るなり悲痛な叫び声をあげた。


「お、お嬢様っ!? 貴様ァ!!」


 執事服を着たその女性は抱きかかえられた入歌を見るや、懐から取り出した警棒(あの伸びるやつ)で俺を威嚇し始めた。通報される前に私刑にいそうなんですが……。


 俺が心の中で恐怖していると、執事女との間にタケミカヅチが割り込み、バチバチと放電し始めた。喋れないのも大変だね。


「タケミカヅチノミコト!? まさか!? そんな!」


 と一人で盛り上がる執事女。しかしそんな間に入歌が目を覚まし、明日改めて話がしたいということで、俺は近くのホテルに連行されることになったのだった。




 その後、神社の近くにあった歴史あるホテルに招待され一泊。翌朝、朝食を終えると入歌と面談することになった。


 個室に案内されると、昨日の執事女が俺のことを睨んできた。努めて無視しておく。こういうのは相手するとだめなのだ。荒らしはスルーしようね!


「ごめんなさい。この子はちょっと過保護で……」


「お嬢様!?」


 というやり取りを何度か繰り返しながら話をしていく。主人に謝らせるんじゃないよ。


 そして入歌の口から藤原家についての説明がなされた。


 いわく、藤原家は平安の時代から各地を守護する役目を担っていた家系で、退魔師としての業務もその中には含まれている。


 現在の藤原家は様々な事業に手を伸ばす巨大グループ企業だが、退魔師の数が足りていないのが現状で、入歌まで駆り出されるくらいには退魔師ひとで不足らしい。


 藤原家については原作知識でなんとなく知っていたが、退魔師不足みたいな話は原作であったっけ? そのために学校が作られるんだったか?


 それに入歌って原作2期では、主人公の2歳年上で生徒会長で帰国子女な美少女。と属性盛りすぎなキャラクターであった。 これから留学するんだろうし、さらに人手不足は進むのではなかろうか?


 入歌は現在京都在住で、関西地方で退魔師にソウルバインダーでのバトルをふっかけては、見込みのある者をスカウト──それスカウトなのか?──しているらしい。


「それで、ええと……その名刺か何か……連絡先を……」


「お嬢様!?」


 また執事女に睨まれることになった。妙に恥ずかしがりながら俺の連絡先を求める入歌。……フ、フラグか? いや、そんなバカな。入歌は2期でも誰ともフラグが立たず、やけに目立つ上に、登場回数も多いのに最後まで攻略されなかったキャラだ。


 結局エンディングでも主人公たちを屋上から見送りながら、彼らの幸運を祈る。そんな孤高なキャラなのだ。フラグが立つとか介錯違いなんですけど?


 とにかく俺は幸森さんに押し付けられていた名刺を入歌に渡しておく。田舎のおじいちゃんたちにしか渡したことなかったから、なんだか緊張するね。


「これから依頼することになるかもしれません」


 とだけ言い残し、入歌は学校へと向かった。そういえば中学生だったね……。


 そして俺は車で帰宅。帰ると幸森さんに心配されると同時に、藤原家への営業成功を褒められることになる。営業だったの? あれ。


 そういえば神社の神主さんに渡された桐の箱にはメモが付いていた。御神体が入っているので丁重に扱うように、とのことだった。


 分祀と言うのだろうか、我が家にも社を建てなければならないらしい。神の世界にも福利厚生についての色々があるのだろう。


 宮大工さんの紹介状までついていたので、幸森さんに丸投げしておくことにする。よろしくお願いします。





 さて、無事にお目当ての神との繋がりも手に入れた。まさか入歌と戦うことになるとは思わなかったが……。


 大体ああいう時って、主神兼パートナーとして現れた神と『試練と調伏』を行うことになるのにな。でもそれはゲームの話か……。アニメだと基本的にはパートナーが現れていた気がしないでもない。


 居間でちゃぶ台にメモ帳を広げながらこれからについて思案していると、客間で何かが大きな物音がした。なんだか我が家の物音もどんどんと大きくなっていっているような気がするな……。もう慣れたよ。


 とにかく……俺はバインダーを開いて有効化しているカードを確認する。


 やはりタケミカヅチ関連と日本神話関連、そして雷属性関連のカードに解禁されたものが多い。


 そもそもなぜ俺が雷属性系のカードを求めていたかという話なんだが、もちろんタケミカヅチが強いというのもある。一世を風靡したカードだしな。


 この『ソウルバインダー』の世界には、明確ながいるのだ。シリーズによっては神や竜がラスボスになることが多いが。


 じゃあなんでその神が現れたのさ? ってなると、大体復活させようと暗躍している組織が出てくるのだ。


 それが『ナチュラルボーンありがた迷惑マッドサイエンティストカルト邪教集団』とファンに呼ばれていた、通称『祈心会』である。


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◇藤原入歌&佐伯 ソウル40

パートナー


〇始まる物語【常時】

もし君がアニメ『ソウルバインダー』を視聴していたなら、自軍のすべての神は戦闘力が+20される。


「2期放映発表と同時にカードゲーム雑誌に付録されたカード。

プロモーションカードなので、公式戦では使えないコレクターアイテムだったのだが、藤原入歌のイラストが良すぎると話題になり、件の雑誌が全国の書店から消えた。

『バインダー』のことを『君』と書かれているのは、現在このカードのみ。

入歌の執事の佐伯がいらない、などとよくネタにされる」

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