第7話 チャート作成

 こんな言葉は聞いたことがないだろうか。


 服を買いに行く服がない。


 転じて、欲しい物を手に入れるためには元手が必要、と言った意味でも使われることがある。


 ゲームでは、Aというボスを倒すためにはAを倒した時に手に入る武器が必要だ、なんて様子を指す言葉として使われることもあったりする。


 つまり『ソウルバインダー・ゼロ ~残響する使命~』のラスボスを倒すための準備をしていかねばならない。


 服を買いに行く服を選ぼう!


 え? 原作のヨシカドさんはどうやって倒したかって? ……そりゃ『ヘカテー』デッキでカードを10枚近く使うコンボで倒してましたけど?


 流石カードアニメの主人公! と言わざるを得ない素晴らしいカードの引きを見せての勝利であった。あんなの俺には無理だ!!! ちょっと強化された初期デッキで勝てるならブースターパックはいらねぇんだよ!!!!!!


 一般的なカードゲームのコンボって大体2~4種類のカードを使った場合が多いんだが、流石に10種類近く使うコンボは実用的じゃないって言うか……常人には無理って言うか……。


 さらに説明すると、ソウルバインダーは同名のカードはデッキに1枚しか入れることが出来ない。一般的なカードゲームでは3~4枚入れられるものが大半だ。


 同名カードが1枚のみの「ランダム感」。ライフを消費してのコスト支払いによる「スピード感」。毎ターン大量に補充される手札による「爽快感」。ソウルバインダーに必要な「三感」ってやつだな。


 話が逸れたが負けたら死ぬどころか、世界が滅ぶんですよ? そんな条件で10種類のカードを同時に使ったコンボで勝つなんて俺には無理だ。無理無理! 絶対無理!


 俺が考えを改めたのも父との戦いが思ったよりギリギリだったせいである。


 最初はなんだかんだ言っても主人公なんだし、「例の主人公補正のことを忘れてやしないか? 最大10倍くらいまでのパワーならなんとか耐えられるんでしょ?」と心の中の三つ目の男の甘言につられていたんだけどさ。


 力だ。力が必要だ。どれくらい必要かと言うとラスボスを簡単にブチのめせるくらいの力が。


 そのために色々と自宅の居間で作戦を練っていたのである。


 まず思い浮かんだのは、ギリシャに行き、ヘカテー関連の神との繋がりを求める作戦である。


 ヘカテーはああ見えて、ギリシャ神話ではかなりのビッグネームなのである。あんな地味なのに……。


 ひゅんと後ろからエアコンのリモコンが飛んできた。痛い。


「ヘカテー様はすごい女神です」


 祝詞のりとを口ずさんでおく。でも家の食料を勝手に食べる神ってネズミと変わらな……。


「いってぇ!」


 飛んできたガラケーが頭に直撃した……。繋がりがあるっていうのも不便なもんだな!


 素晴らしきヘカテー様は祖父に太陽神ヘリオスを持ち、従姉妹に月の女神アルテミスを持つ。超有名な神である。


 そして冥府繋がりで、上司や同僚(?)に冥界の支配者ハデスやその妻ペルセポネーを持つ。これまた有名な神である。


 ヘカテーは一説にはギリシャ神話の主神ゼウスの娘とする説もあるらしいので、その繋がりも期待出来るかもしれない。


 ……ただなぁ、ギリシャに行ってから出たとこ勝負になるんだよなぁ……。 この作戦はハイリスクな割にリターンが不透明だ。

 

 それに家業もあるし、時間も余りない。そもそもギリシャの公用語って何語なんだ……?


 それならば近場でなんとかならないか。なにせ日本も神様が八百万やおよろずも居る神様大国だし。


 ここでアニメシリーズの時系列の話をしておこう。アニメ『ソウルバインダー ~残響する使命~』が全8話。現在の進行度的には家督を譲られるのが2話の最後だったはずなので、修行パートをすっ飛ばした俺には少しだけ時間的猶予があるはずだ。


 ちなみにここから3年後にアニメ『ソウルバインダー』が始まる。いわゆる1期ってやつだな。『残響する使命』は2期と3期の間に公開された作品だ。


 そんじゃを倒すための下準備をしていこうじゃないか。


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◇トリカブトの毒 冥30 中立20

魔法 闇

発動者より総召喚コストが低い神を黄泉へ送る。

または『弱点 闇』の神を虚無へ堕とす。


「初期の冥デッキを支えた除去魔法。

今見るとコストも重く、対象も限定的だが当時はこれしかなかった。

構築済みデッキ「ヨシカド ヒビキ&ヘカテー」にヘカテーのイラストで収録された」

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