第6話 ヨシカドさんと3つの呪い

 あれからなんとか無事に免許を取得した。いやあ大変だった。


 それに伴い、俺ことヨシカドさんの体にはがかかっていることが判明した。


 1つ目の呪いは「新しい物」を使おうとすると、それが壊れたり、動かなくなったりするのだ。これが呪いでなかったら何なんだ!


 色々と検証した結果、大雑把な言い方をすると「最近製造された工業製品」がダメなことが解った。そして検証していくうちに、大体製造から20年経っていれば呪いが発動しないらしいことが判明した。


 ヨシカドさんをハードボイルドたらしめているのはこの強制力のろいのせいだったのだろう。「最近」の指す範囲が20年以内なのは大分ヤバいぞ、ヨシカドさん。


 神に向かって罵詈雑言を並べたてたいところだが、この世界には神は実在する。やめておこう。


 ただ携帯電話ガラケーがセーフだったのは不幸中の幸いであった。これがダメだったら不便すぎる。本当によかった。原作でもガラケーは使ってたもんな。おそらく『ソウルバインダー・ゼロ ~残響する使命~』放映時には、すでにスマートフォンが出ていたため、古い物の扱いになっていたんじゃないだろうか? 2014年か5年だったよな? ゼロ。


 ちなみに2008年にスマートフォンは存在している。リンゴのあそこが初代をすでに発売していたんだが、店頭で手に持っただけで電源が入らなくなった。忘れよう。この頃って最新機種でも3Gなんだよな。


 車も例に漏れず、教習所の車であろうと新しい物はダメだった。


 最寄りの比較的設備の新しい教習所は教習車を入れ替えたばかりで、ほとんどの車がダメだったのだ。遠回しにお断りされてしまったので、泣く泣く原付で1時間以上かかる教習所に通うことになったのだ。


 またその原付もボロでなぁ……。いや、この話はやめておこう。


 とにかく無事に普通自動車免許を取得した。余談だが2008年の普通自動車免許は5トンまで乗れるぞ!


 そしてついに20年落ちだが車を買うことが出来た。この時代は中古車が安かったんだなぁ……。

 ヘッドライトがパカパカするタイプの高級スポーツカーも捨て値みたいな価格だった。その代わりレギュラーガソリンが180円するんだけどね、2008年。


 その初心者マーク付きスポーツカーを手に入れたことで、俺はやっと計画を練ることが出来る。やっぱり足は必要だよな。


 現在の住所は奈良県南部、ド田舎の山奥である。最寄りのコンビニまで車で30分以上かかる。家業があるので引っ越しは出来ない。


 家も古い平屋で1人暮らしだ。離れに幸森こうもりさんが住んでいるから耐えられているのかもしれない。夜なんか本当に真っ暗でさ……。街灯なんてないし怖いんだよな……。


 今まで全然気にしたことなかったんだが、家の中に俺しか居ないのに俺以外の気配が複数あるのだ。ソウルバインダーの力に目覚めて、色々見えるようになってしまったのか。気付いていないだけだったのか……。


 退魔師の家ってそういう感じなんですか? とナーバスになって生活していたのだが、ある日キトンを纏った女性の影を廊下で見てしまってからどうでもよくなった。なんか買い置きの食料がなくなると思ってたんだよなぁ!!!


 なお両親は豪華客船クルーズで世界一周に出発した。いつ帰ってくるのかも不明である。



 そして初めて退魔師としての仕事もこなそうとした時、そこでもヨシカドさんにかかっている呪いが判明したのだ。


 そもそもヨシカドさんは原作では白スーツのハードボイルドナイスミドルお助けキャラ(20代)(禁煙中)(機械音痴)だ。


 そして俺はもちろん白スーツなんて持っていなかったし、初の退魔師の依頼に、高校で使っていた緑色のダッサいジャージ(ネーム入り)で行った。


 山の上にある廃寺に妖怪が棲みつき、実害はないものの、日暮れ時になると廃寺にのこされた鐘をくので退治して欲しい、という依頼だったのだが……。


 ダサジャージを着て、単独で山を登り──幸森さんは基本的に留守番である──汗だくになりながら廃寺に着いた俺は、その廃寺に棲みつく妖怪とソウルバインダーでの勝負を行うことになる。ここはソウルバインダーの世界だ。慣れよう。


 しかし、ここで問題が発生する。俺はソウルバインダーの能力を使えなかったのだ。


 アニメのソウルバインダーの世界では、ソウルバインダーの能力はすべての人に与えられているものではない。才能の一種、特殊能力の一種なのだ。


 そしてそれは覚醒イベントによって目覚める者も居れば、生まれつき目覚めている者も居る。他には条件を満たすことでソウルバインダーの力を行使することが出来る者も居る。


 残念ながらヨシカドさんはその、に含まれていたんだ……。まさか白い服を着ていないと能力が使えないとは思わなかったわ……。


 その寺には野寺坊のでらぼうという妖怪が棲みついていたんだが、俺がデッキを呼び出せないとわかると、寺から叩き出されてしまった。ニチアサの世界でよかった~~~~~!


 今回はニチアサ展開に救われたが、ヨシカドさんが主役を務めた『ソウルバインダー・ゼロ』はネット配信専用の短編アニメだったからか、やや大人向けで普通に死人が出たりしてたのが気がかりなんだよなぁ……。鬱展開は勘弁してくれ。


 帰ってからまたについて色々と検証した結果、上着が白くなければ力を使えないということだった。なんで?


 また色々と検証した結果、一番上に着ている服が白でさえあれば問題はないようだった。


 例を上げると、白いTシャツはヨシ。白いTシャツの上に緑のジャージはダメ。白いジャケットの中に黒いシャツはヨシ。黒いジャケットの上に白いタンクトップを無理矢理着るのはヨシ。なんでいいんだよ??


 とにかく一番上が白い上着であれば問題ないようだ。下は自由! あまり言いたくないが、上に白いパンツを羽織るのはダメだったと記しておく。


 3つ目の呪いは、タバコに対する禁断症状である。本当になんでだよ!


 俺は当初、ソウルバインダーに目覚めて以来、原因不明のイライラに悩まされていた。運動してみたり、日帰り旅行に行ってみたりと色々試したが解決せず、幸森さんに相談したのである。


「まるで禁煙している方のようですね」


 と言われ、目からウロコが落ちる思いだった。絶対それだわ。


 ニチアサのアニメだけあって、ヨシカドさんは作中では絶対にタバコを吸わなかった。常に禁煙中だったのだ。そのため常に禁煙パイプや飴やお菓子を咥えて現れるのがお約束になっていた。


 まさか、と思いながらコンビニで買ってきた禁煙パイプを咥えると、驚くほど頭の中がスッキリしたのだ。はいはい、呪いです、呪い。


 例によって色々と検証した結果、口に咥えた物が口から出ていれば問題がないことが判明する。


 つまり飴玉を口の中で転がしてもイライラしたままだが、棒のついた子ども向けのキャンディーを舐めるとスッキリするのだ。


 禁煙パイプ、シガレット型ラムネ、雑草、つまようじ、ストロー、風車かざぐるま、バラの花、シャボン玉を吹くやつ、えんぴつ、乳児用おしゃぶり、スルメなどなどすべて大丈夫であった。判定ガバガバすぎないか?


 しかし見方によっては簡単に頭をスッキリさせることができる訳だ。メリットもあることだし、他のに比べればマシだ。マシだと自分に言い聞かせることにする。


 こうして俺は、よく言えば自分と向き合うことが出来た。悪く言えば呪いに振り回されているんだけど……。


 とにかく父との戦いからもう1ヶ月近く経っている。そろそろ世界を救うための計画を立て始めなければ。


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◇ターボばばあ 混沌20 中立10

ノーマル 【賦活】


〇過給鬼【常時】

この神は活性化状態で召喚される。


〇100km/hの向こう側【常時】

この神が敵の魔法、権能、神器の効果で不活性化状態になるたび、戦闘力+70(永続・累積)。継承不可。


戦闘力40 無効 ー 弱点 光


「当時の混沌デッキ定番の1枚。

殴ってよし素材にしてよしに良カード。イラストが不気味なのが最大の欠点。

忘れた頃にインクのシミと思われていた2番目の権能が発動し110km/hまで加速したばばあに轢かれるバインダーが後を絶たなかった」

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