第3話 初バトル2
『サキュバス』のことを努めて気にしないようにしながら俺はプレイを続ける。いいケツだ。
自分のターンの最初には、手札を6枚になるまでドローし、自軍の神の活性化。そして、あるならば『ターンの開始時に』と指定のある効果の解決である。
そしてメインフェイズに進む。
メインフェイズでは神の召喚、神器の召喚と使用、魔法や権能の使用ができる。
『ヘカテー』のアライメントは冥と混沌。
「まずは冥のソウル40とライフから中立のソウルを30生み出し、『バフォメット』を召喚する!」
ちなみに冥などのアライメントを持つソウルは中立のソウルの支払いにも使用できる。
『バフォメット』は合計召喚コストで見れば70と強大な神だが戦闘力は40。戦闘よりも、召喚術や魔術を得意とする神だ。
あぐらをかきながらふわふわと【浮遊】しているバカデカい山羊。サバトと呼ばれる悪魔崇拝者たちが信奉する悪魔であり神である。その出自はテンプル騎士団までさかのぼることになるのだが……ここに書くには余白が足りないようだ。
それはともかく、前のターンに召喚しておいた『サキュバス』は活性化している。俺はそのまま戦闘フェイズに移行し、『サキュバス』で攻撃を仕掛ける。
『サキュバス』の戦闘力は30。『化け提灯』は20。『マメダヌキ』は10だ。
「行くよ、父さん。『サキュバス』で攻撃!」
俺の声を合図に『サキュバス』は父に飛びかかる。
「ぐうっ!」
えっちな格好の悪魔っ娘に桃色光線を浴びせられる父はあまり見たくなかったかもしれない。慣れよう。
「『サキュバス』の権能『ドレインライフ』! 戦闘で与えたダメージの分だけ回復する。俺のライフは150。ターンエンドだ」
父のライフは170。
「それでは私のターンだ」
父の呼び出した『マメダヌキ』と『化け提灯』が活性化する。そして4枚だった父の手札は6枚まで補充され、メインフェイズへと移行する。
「混沌のソウル30生み出す! そしてライフを支払い、中立のソウル10! 混沌のソウル20、中立のソウル10を使用し『ターボばばあ』を召喚!」
父の目の前に紫色の霧が立ち込めたかと思うと、室内を縦横無人に走り回る四足歩行の老婆が現れる。髪と着物を振り見出しながら、ゲラゲラと不気味な笑い声をあげている。
父……?
いや、これは勝負だ。『ターボばばあ』は、権能『過給鬼』により召喚してすぐに活性化している神だ。油断するな俺。
「素材は『ターボばばあ』と『化け提灯』を指定する! それらからソウルを出し、足りない分はライフで支払おう。合計80ソウル! 合体だ!」
活性化している神はソウルを生み出すことが出来、召喚コストの半分(1の位切り上げ)のソウルを産むことができる。生み出すソウルのアライメントはその神に依存する。
そして活性化した神は、合体素材にすることが出来る。素材となる神の数は呼び出される神によって異なるぞ!
「やるな、父さん! だが、邪魔させてもらう!」
バトルアニメで合体シーンを邪魔するなんて許されざることだが、ソウルバインダーでは許されちまうんだ。すまんな、父!
「『バフォメット』の権能『魔術の真髄』! 『バフォメット』は魔法の追加コストとして手札を1枚黄泉へ送ることで、不活性化状態でも魔法を発動することが出来る! 『ターボばばあ』に魔法『ライトニングセイバー』だ!」
魔法『ライトニングセイバー』は【瞬間】を持つ使い勝手のよい低コストの単体30ダメージの雷属性の魔法だ。ただし追加コストとして手札を1枚黄泉へ送らなければならないが。
『バフォメット』は『ターボばばあ』に向かって雷の剣を振り下ろす。あぐらのまま。
「『マメダヌキ』! 『バフォメット』に変身だ!」
「しまった!」
完全に忘れていた!
父も負けじと『マメダヌキ』の権能を使う。『マメダヌキ』の権能『マメ狸変化』により、『マメダヌキ』は『バフォメット』に変身する。……頭に葉っぱが乗っていて、顔が狸なのはしょうがないだろう。
ターン終了ステップまで『マメダヌキ』は、戦闘力を除き『バフォメット』のコピーとなる。そして『バフォメット』のもう1つの権能は『降魔の五芒星』。神の召喚時に受ける妨害をすべて無効化する権能だ。
バリバリと放電しながら振り下ろされた雷の剣は、五芒星のバリアに防がれ霧散してしまった。合体阻止失敗だ。やらかした。
でもこの手札とライフをリソースにして、ゴリゴリ削り合いながら戦うのがソウルバインダーの醍醐味だよなぁ! 気持ちええ~~~~!
「くっ!」
俺の苦々しい顔を見ながら父がニヤリと笑う。その目の前にゲラゲラと笑う『ターボばばあ』が居なければとても絵になっていたのに……。
そんなことを考えていると、『ターボばばあ』と『化け提灯』が蒼白い火の玉になると、その二つがぶつかり、一つになる。
「顕現せよ! 『
その火の玉が天に向かって飛び上がったかと思うと、父の隣に居た主神の『隠神刑部』もそれに飛び掛かる。そして空中で質量を手に入れた隠神刑部は、くるりと空中で一回転しながら、ドン! と我が家を揺らしながら着地した。
甲冑からでっぷりとした腹が出ており、長く白いあごひげのある大狸が俺の目の前に現れる。『隠神刑部』は俺と目が合うとニヤリと笑った。
「『隠神刑部』! 攻撃だ!」
ソウルバインダーの合体は素材にした神の権能を引き継ぐ。すなわち現在、『隠神刑部』は『ターボばばあ』の権能『過給鬼』、『化け提灯』の権能『
『過給鬼』については先ほど説明したが、化け提灯の権能『
ちなみにカードゲームとしてプレイする時は、不活性化しているカードは横向きにするぞ!
つまり俺は今から戦闘力90。【浮遊】【賦活】を持つ神にぶん殴られる訳である。大丈夫そ?
現在のライフは150。父のライフは120である。
それにまだ『隠神刑部』の権能も残されている。
「そして『隠神刑部』が攻撃した時! 権能『刑部の裁き』が発動する! この権能は手札から神器を召喚し、『隠神刑部』に装備することが出来る!」
父は手札から1枚のカードを選びだし、人差し指と中指で挟むと、それを『隠神刑部』に投げ付ける。おぉ~! かっこいいじゃん!
「神器『
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◇
2体合体
〇刑部の裁き【常時】
この神が攻撃に参加するたび、手札から神器(装備品)を召喚してもよい。
召喚した場合、その装備品をこの神に装備する。
コスト:この神に装備されている装備品を外す
次に受ける敵の魔法、権能、神器の効果を1回無効化する。
戦闘力90 無効 地 弱点 火
「第1弾収録。装備品を踏み倒して召喚してそのまま殴る権能は破格の能力! ……のはずだった。
しかし当時は強力な装備品がまだ少なく、そして後になればなるほど隠神刑部より強力なカードが多数収録されたため、あまり日の目を見ることはなかった。
某たぬき合戦映画を意識したイラストになっているのは時代のせいだろう」
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