第24話 挨拶
俺は依頼された件をルナとリアナの二人にも共有することにした。
相手側からは俺たちでどうにかして欲しいと言われたからな。俺単独で動いてもいいが、それは逆に二人が危険になる可能性もある。
今回は一緒にいた方がいいと俺は判断した。
家に戻るとルナとリアナが軽く荷造りをしていた。まだ新しく引っ越す先は見つかっていないが、引っ越しの準備は早くしておいた方がいいとルナが言っていたからだ。
「ただいま戻った」
「アヤメさん。お帰りなさい!」
「お帰りなさい。アヤメさん」
二人が出迎えてくるれ、俺はすぐに本題入った。
「二人とも少しいいだろうか」
「はい。私は構いませんけど」
「私も大丈夫です」
二人ともに了承してくれ、俺は
「ギルドから正式に依頼があって、
「そんな……」
「なるほど。そうなりましたか」
ルナは口に手を当てて驚き、リアナの方は割と冷静だった。
「貴族も一枚岩ではないらしくてな。リアナは知っているか?」
「はい。現在は公爵家を中心とした
「そのようだな。
「私の知っている情報でも、同じですね。相手はかなり巧妙だと思います」
「ふむ」
俺は思案する。
犯行現場を取り押さえるのが、一番早いか?
「犯行現場を取り押さえるのがいいだろうか」
「どうでしょう。一応、全ての犯行現場知っていますが、規則性はありません。時間もまばらで、よく分かっていないのが実情ですね」
「なるほど。こればかりは、向こうからの情報待ちになるか」
冒険者ギルド側は俺に情報提供を後日してくれると言っていた。それまではしばらく、待ちの状態になるしかないな。
「あの……
心配そうに声をかけてきたのは、ルナだった。
「あぁ。そうなるな」
「大丈夫……でしょうか。高位の魔術師でさえ、被害に合っていると聞きますし」
「だからこそらしい。俺は対人戦を得意としているからな。それを見込まれて、ギルドから依頼された」
「なるほど。でもそうですね。今までアヤメさんはどんな苦難にも立ち向かってきました。今回もアヤメさんを信じますし、私も自分にできることをやっておきます!」
ルナの目は覚悟が宿ったものだった。初めて会ったときは自信がないと言っていたが、今はそんなことはない。
彼女も少しずつではあるが、確実に成長しているようだった。
「アヤメさん。少し話は変わりますが、よろしいでしょうか」
リアナが声をかけてくる。
「なんだ?」
「先生に報告に行きたくて。とてもお世話になりましたので」
「剣聖のもとか。分かった。俺も同伴しよう」
ということで、俺たちは剣聖ライトの元へ向かうことになったが、ルナは家事が残っているので家にいるとのことだった。
「リアナさん。くれぐれもアヤメさんのことをよろしくお願いしますね?」
「え、えぇ……任せてちょうだい」
いつもの謎の圧力をなぜかルナはリアナに向けていた。まぁ、二人の関係性は俺が口出しをすることではない。それに仲良くやっているようだしな。
そして、俺とリアナは大森林の奥にある剣聖の自宅へと向かった。
「先生。リアナです」
「あぁ。これはこれは。アヤメさんもですか。では、どうぞ中へ」
「失礼する」
剣聖の家に訪れると、今回は彼は素早く対応してくれた。
「家の件、色々と解決しまして。今はアヤメさんのところでお世話になっています」
「それは良かった」
「といっても、家は勘当されたんですけどね。あはは」
リアナが苦笑いを浮かべると、ライトは目を少しだけ開いた。
「勘当ですか。しかし、あなたほどの魔術師をずっと放置している家ではないでしょう」
「はい。分かっています」
リアナの声音は真剣そのものだった。それは自分の役目がしっかりと分かっている。そんな趣旨だと俺は感じた。
「いずれは戻る時が来ると思います。その時私は、どうすべきなのか。今一度、世界を見て考えてみようと思っています」
「そうですね。世界中を旅してみることは非常に良いことです。貴族社会にいるだけでは見えてこない視点を学ぶことができますから」
ライトの言葉はもっともだった。
同じ場所にいるだけでは見えてこないものがある。人間としても、剣士としても、魔術師としても、それは同じなようだな。
「先生のもとにも定期的に顔を出したいと思っていますが、よろしいでしょうか」
「もちろん。いつだって私は待っていますよ。それに私もあなたが望むような剣術を教えることができなかった。それは申し訳なく思っています」
「いえ! 先生は本当に大切なことを教えてくださいました! 心から感謝しています」
ふむ。二人の付き合いがどれほどで、どのような関係性なのか。その詳細は知らないが、決して悪いものではなさそうだな。
「ライト。少し別件だが、いいだろか?」
「はい。なんでしょうか?」
「
俺はある種の確信を持ってそう尋ねた。
彼は一呼吸置いてから、それに応える。
「その口ぶりからして、アヤメさんもですか」
「あぁ。冒険者ギルドも切羽詰まっているようだな」
「ですね。貴族たちもこれ以上の犠牲は許せないのでしょう。剣士に頼ってでも、
魔術師団の団員も犠牲者になっている、というのは貴族たちに想像以上のダメージを与えているらしいからな。
「それで、協力しようというお話ですか?」
「いや逆だ。俺たちは別で動いた方がいいだろう」
「流石はアヤメさん。よく分かっていらっしゃる」
「ライトの剣は他者と調和しない方がいい。それに、分散していた方が効率もいいだろう」
「ははは。お恥ずかしい話、私は一人の方が強いと思っていますので。それに私たちが一箇所に集まっていると、返って警戒されるでしょうしね」
「ということで、何かあれば情報を共有しようということだ」
「分かりました。
話はここで終わった。剣聖が万全で動けるのならば、俺としても不安要素はあまりない。問題は、どちらが先に出会うかということだった。
帰り際、リアナがボソッと言葉を漏らす。
「先生……大丈夫でしょうか」
「問題はないだろう。彼ほどの技量があれば、遅れを取ることはそうそうない」
「いえ、実力的な問題ではなく。その……」
リアナはなぜか口を濁しているので、俺は聞いてみることにした。
「何かあるのか?」
「先生。戦闘になると後先考えないところがありまして。
「まぁ、なるようになるだろう」
「そうですよね。心配するだけ損ですよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます