第33話ニャアとマーメの実力

「皆、ニャアとマーメだ。よろしく頼む」


「ニャアなのにゃ。よろしく頼むにゃ」


「マーメと申します。皆様方、よろしくお願いいたしますわ」


「また新入隊かよ」


「隊長、どこから連れてきてるんだよ」


「でも、隊長が連れて来てる奴ら皆優秀だぞ」


「確かに。レドラはエーレシア戦の功労者だしな」


 新入隊員を連れてきても以前より騒然としなくなった。俺が連れてくる隊員が優秀だと認知されてきているからだろう。以前なら新入隊員が来るとザークスが因縁をつけていたが、奴は現在ホワイティから鞭で叩かれている。


「この豚が!」


「もっと、もっと下さい女王様!」


 関わらないほうが良さそうだ。放っておこう。


「今回は誰も文句はないようだな。何もないのなら歓迎していると捉えていいんだな?」


「ちょっと待つにゃ。ニャアの強さ見せるにゃ」


 隊員たちからは何もなかったが、ニャアは何かしたいらしい。


「どうした? ニャア」


「ニャアは力持ちなのにゃ。ニャアと腕相撲するにゃ、そこのゴリラ」


「自分か?」


 ニャアはダレンをご指名だ。


「ニャア、ダレンは強いぞ? いいのか? ダレンはどうだ?」


「やるにゃ。ニャアが力持ちなの見せるにゃ」


「面白い。隊長、自分はいつでも大丈夫です」


 二人はテーブルの上に腕をのせた。お互い手の平を合わせた。


「レディーゴ―!」


「ぐあ!」


 一瞬で勝負がついた。ダレンの手の甲はテーブルについてしまった。二人の力の数値は95で全く一緒だ。二人とも怪力のスキル持ちで力×2の補正もある。だが、ニャアには野生の底力のスキルがありさらに力×2の補正もある。さらには適性武器が素手で力×1.5の補正もある。元々の能力は互角だが、スキル差で勝負がついた。


「おいおい、あのダレンさんが力負けしたぞ」


「ダレンさん、弱くなったのか?」


「そんなわけないないだろ。あの訓練の鬼のダレンさんが」


「じゃあ、あの娘が強いってのかよ? 信じられないって」


 皆はニャアの力に驚愕している。隊一番の力持ちだと思われているダレンを負かしたのだから当然だろう。


「ニャア、やったにゃ。ニャア、力持ちなのにゃ」


「やるな、ニャア。だが今度は負けないぞ」


「またやるにゃ、ゴリラ。楽しかったにゃ」


「ダレンだ」


「わかったにゃ、ダレン。次もニャアが勝つにゃ」


 両者は握手した。友情が芽生えたようだ。これでニャアの実力は認められただろう。


「お次はわたくしの出番でしょうか。どなたかお相手頼めますでしょうか?」


 今度はマーメが名乗り出た。彼女も隊では実力を示せないとやっていけないとわかっているようだ。


「妾が相手しよう。お主の力、気になっておったのじゃ」


 レドラがやる気になっている。勝てば実力を一気に示せるが、隊で一番の実力者だ。俺も見てみたいが、マーメに取って厳しい相手かもしれない。


「マーメどうする? レドラは隊で一番の実力者だぞ? 無理そうならやめてもいいぞ」


「ご冗談を。わたくしは嬉しいですのよ。これほどの実力者と相まみえることは稀。わたくしのプライドがここは退けないと申していますの」


 マーメもレドラの実力はわかっているようだ。それでも退けないものがある。俺に止める権利はない。


「では、始めてくれ」


「では小手調べじゃ。ファイアボール!」


 レドラの手の平から火球が放たれる。どう考えてもファイアボールの威力ではない。


「ウォーターボールですわ!」


 マーメも水球を放つ。両者の魔法は中間でぶつかりはじけ飛ぶ。


「なんと! 妾の魔法と互角とは」


「驚かれては困りますわ。わたくしはまだまだやれますわ」


「面白い奴じゃ。妾もまだまだやれるぞ」


 両者の攻防は互角だ。両者の魔力は共に98。レドラのスキルは火竜族の王女が魔力×2、火竜族の誇りが魔力×2。対してマーメのスキルは人魚族の王女が魔力×2、人魚族の誇りが魔力×2とスキル込みの能力でも互角なのだ。


 それからも両者は魔法を繰り出すが相殺されている。決着がつく様子はない。


「はあはあ、やるのうお主」


「貴方もです。これほどの実力者と戦えることは稀ですわ」


「じゃが、困ったことに妾の魔力は尽きた。殴りあって決着をつけるのも良いが、立っているのもしんどいわい」


「わたくしの魔力もつきましたわ。殴り合いですか? 楽しそうですが、わたくしも立っているのがやっとです」


「どうしたもんかのう、テオドリック?」


「引き分けでいいんじゃないのか? もうこれ以上やる必要もないと思うぞ」


 隊員たちは驚愕を通り越して呆然としている。わけもわからず口を開けて放心状態になっている者もいる。それもそうだろう。魔法大戦争を見せつけられたのだ。世界観が違いすぎて引くしかない。


「妾もまだまだじゃのう。じゃが、次はこうはいかんぞ」


「わたくしも研鑽を積みます。今度はわたくしが勝ちますわ」


 両者は握手した。友情が芽生えたようだ。二人の実力を隊員に認めさせただけでなく、この様な効果もあるとは。俺は既に隊員の人数や実力には満足していたのでこれ以上増やす必要はないと考えていた。それが偶然が重なりまた隊員が二人増えた。


 また隊が賑やかになるな。以前の状態でも俺たちは最強と思っていたが、さらに上があったようだ。隊員が増えてことによって能力を引き出す楽しみが増えた。まだまだ俺たちはやれるんだ。

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