第32話ハロルドの料理2
「テオドリック隊長、その娘たち誰ですか?」
エイプリルたちが合流した。昼休憩の時間なので続々と隊員が食堂に集まっている。
「ああ、新入隊員だ。後で皆に紹介しようと思っていたけど、腹が減っていたみたいなので先に食堂に連れてきたんだ。ニャアとマーメだ。こっちはエイプリルに、ダレン、レドラ、ホワイティだ」
「よろしくね、ニャアちゃん、マーメちゃん」
「よろしくにゃ」
「宜しくお願い致しますわ、エイプリル様、ダレン様、レドラ様、ホワイティ様」
「お主ら、妾と同じ匂いがするのう」
「おいおい、待て、レドラ!」
俺はレドラを皆から離して耳打ちした。
「それは言わない約束だろう?」
「そうじゃったか? 妾の正体を言うなと約束してただけのはずじゃが」
「それはそうだが、一緒みたいなもんだろ?」
「そうなのか? 妾は違うと思うが。それに、そろそろ言ってもよいのじゃないか?」
確かに俺はホワイティの正体なら隊員に言っても良いかと思っていた。隠していたせいでタイミングがなくなった。ダレンは人化する動物のことを知っていた。話せばわかってもらえるかもしれない。でも、レドラは駄目だ。隊を襲撃した過去がある。良く思わない隊員もいるだろう。
新入隊のニャアとマーメに関しては早めに言っておくべきなのだろうか。ホワイティのことを言わなくてタイミングを逃したみたいに。でも、現在隊は良い状態だ。話したことによって、気が抜けて三人が口を滑らせてレドラの正体を言ってしまうかもしれない。無用な混乱は避けたい。
「確かにそうだな。だが、今はその時ではない。いつか話せる時が来たら話す。今は黙っておいてくれ」
「心配性じゃのう。じゃが、妾にはわからん苦労がお主にはあるのじゃろう。心労が顔に出ておるぞ、わっはっは!」
まずい。疲れた顔をしていたか。知らず知らずのうちに隊員を心配させていたかもしれない。最近は事務処理が増えて多忙な生活を送っていた。充実していたから放っておいたが、少し休んだほうがいいかもしれない。
「どうしたんでですか? 隊長、レドラちゃん」
エイプリルは怪訝な顔をしている。
「何でもないのじゃ。こ奴から愛の告白を受けていただけじゃ、わっはっは!」
「おい! 何を言っている、レドラ!」
でも、助かった。レドラなりの優しさなんだろうな。
「そうなんですね……深く聞かない方が良さそうですね」
「エイプリル、今の冗談を真に受けるな……」
流石にエイプリルでも今の冗談を真に受けるわけはないだろう。
「あまり長々と喋っていると昼休憩が終わるぞ、エイプリル。早く飯を取りに行くぞ」
「は、はい、ダレン先輩」
ダレン、ナイスアシスト。助かった。
「はぁ~、お腹ぺこぺこ。いただきま~す」
エイプリルが持ってきたのは、ハンバーグ定食だ。ハンバーグも旨そうだな。明日にでも頼もうか。
「いただきます」
ダレンが持ってきたのはチキン南蛮定食だ。こちらも旨そうだ。
「いただきます」
ホワイティは相変わらず人参だ。こっちはあまりそそられないな。栄養はありそうだが。
「美味そうじゃのう。いただくとするか」
レドラが頼んだのはスペシャルウルトラデラックス定食だ。唐揚げ、ステーキ、焼き肉、とんかつ、エビフライ、刺身、焼き魚、煮魚と豪勢だ。美味そうでではあるが、見ているだけで胃もたれしそうだ。竜族というのはここまで食うのか。
「そう言えば最近食堂のご飯食べていると、力が湧いてくるのは気のせいでしょうか?」
「自分もだ。筋肉が喜んでいる。気のせいではないと思うぞ」
エイプリルとダレンの能力も上がった。エイプリルの元々の能力は力53、体力73、敏捷性79、魔力48だった。それがハロルドの料理を食って、力72、体力85、敏捷性92、魔力82に上がった。
ダレンの元々の能力は力89、体力86、敏捷性75だった。それがハロルドの料理を食って、力95、体力93、敏捷性83に上がった。
「俺もそう思うぞ。ハロルドの料理には魅力を通り越して魔力でも込められている程の美味さだ。信じられない力が湧いてきても不思議ではない」
このくらいは言ってもいいだろう。これ以上は信じてもらえないだろうし、言うべきでもない。
「確かに彼が選んでくれる人参は極上だわ。力が湧いてくるわ」
「そうじゃのう。奴の飯を食えば何でも出来る気がするわい」
ホワイティの元々の能力は力28、体力32、敏捷性35、魔力34だった。それがハロルドの料理を食って力52、体力55、敏捷性82、魔力88に上がった。
レドラの元々の能力は力92、体力89、敏捷性85、魔力95だった。それがハロルドの料理を食って、力98、体力96、敏捷性92、魔力98になった。
隊員によって上がり幅は違うが、ここまで成長してくれて嬉しい。このまま成長してくれれば、皆がどこまで行くのか今後が楽しみだ。ハロルドを料理長に指名したのは間違いではなかったようだ。
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