第2話 魔物と遭遇する
あてもなく歩き出したクウラであったが、周囲の様子を伺いながら慎重に歩いていた。
「突然に出会ってしまえば獣も怖れて攻撃してこようからな。先にこちらが気づけば避ける事も出来ようぞ。さてさて、喉も乾いておる故に小川でもあれば良いのだが……」
そう
「樹木は立派に育っておるし、草花もあちら方面が育っておるな…… ふむ、水気はならばあちらか」
小川なり泉なりを求めて歩くクウラ。そして歩くこと三十分、遂に小川のせせらぎがクウラの耳にも届いてきた。
「どうやら合っておったか。知識が役立って良かったわい」
そこで油断せずに更に慎重に小川の方へと向かうクウラ。目の前に見えてきた小川を確認するも暫くは樹木の陰に身を隠して小川を観察していた。
「どうやら獣たちの水飲み場では無いようじゃな」
たっぷりと三十分ほど観察していたクウラは何もやって来ないのでそう結論づけたようだ。もしも獣の水飲み場であったならば小川の上流を目指そうと思っていたようだ。
「ここら辺には住んでおった
そう言うとクウラは小川に近づきその水を手で掬う。
「ほっほっ、冷たくて気持ち良いわ。どれどれ」
掬った水を口に含んだクウラ。
「甘露、甘露。良きかな。自然の甘さもあって冷たい」
水を飲み込み喜んでもう一掬いして口に含みそれから辺りを見回し考える。
「ふむ…… ここは場所も良さそうではあるが、ちと開けすぎておるかな? もそっと違う場所をこの小川沿いで探してみるとしよう」
そう言うとクウラは小川の上流に向かって歩き出した。
「しかし七つの身体とは思えぬの。全く疲れを覚えぬ。体力が
クウラは平安後期の時代に生きた僧侶であるが一、十、百、千、万、億、兆、京などの数の単位を知っているようだ。史実としては初めて書に記されたのは江戸時代と言われているが、クウラは何処でそれを知ったのか…… 謎ではあるが本編に直接は関係ないのでここではスルーしておく。
「ほっほっ、ここなら良さそうじゃな」
歩きだして十五分ほどでクウラは良さそうな場所を見つけたようだ。その場所は小川が緩やかにカーブしており、近くに奥行き七
何も住んで居ないようなのでクウラはそこを寝床とする事に決めたようだ。
「さて、この
実際には体力が
クウラは
姓名∶オショウ·クウラ
年齢∶七つ
性別∶
職業∶
宗派∶
体力∶
法力∶無量大数
技能∶【カッ】
※【カッ】
『
文字通り一喝して相手を怯えさす。法力を五込めて一喝すれば弱い魔物は退散する。法力を百込めて一喝すれば魔王すら震え上がる。
『
法力を込めて唱えれば込めた法力に応じて相手を
『
相手に向かって削りたい場所に法力を込めて唱えれば必ずその場所を削れる。込める法力が多ければ多いほど大きく削れる為、小さな魔物を相手にする場合は注意が必要である。
『
己の認識する空間に広い場所を創る。
『
法力を百込めて唱えれば麻で作られた衣服を創り出す。着せたい相手の体格を思い浮かべて唱えると良い。
(裏技) 法力を一千込めて唱えれば絹で作られた衣服が、法力を一万込めて唱えれば防御に優れた法糸で作られた衣服が創られる。
『
相手を見据えて法力を十込めて唱えると法力の縄で相手をくくる。法力を百込めて唱えると
『
相手の固さによるがそれを上回る法力を込めれば
『
自分や対象者に向かって唱えれば込めた法力の分だけ速くなれる。(法力を十込めれば倍になる。二十込めれば四倍になる。)但し、速くなり過ぎると肉体が追いつかなくなるので、『
『
自分や対象者の肉体を込めた法力分だけ強くする。(法力を十込めれば倍になる。二十込めれば四倍になる。)
『
対象に向かって唱えるとその全体を引き締める事が出来る。木などは法力を二十込めるとちょうど良い。
『
相手に向かって唱えれば法力の
『
自分の領域の東西南北に唱えれば、法力の
『
法力を百込めて唱えれば獣の皮で作られた履物が出る。
(裏技)法力を一千込めて唱えれば頑丈な革で出来た履物が、法力を一万込めて唱えれば防御に優れた法布で出来た履物が出る。
『
怪我の程度や病によって必要法力が異なる。唱えればその怪我や病に必要な薬を出す。
『
物事の道理を理解せぬ(出来ぬ)者に無理やり道理を分からせる。相手の残っている良心により必要な法力は変わる。
『
対象を見据えて唱えれば同じものを増やす事が可能。増やす対象によって必要な法力は変わる。
『
担ぐ対象の重さを消し去る。百貫(三七五キログラム)を消すのに必要な法力は一千。
クウラは閉じていた瞳を開いた。
「なんともはや…… 凄まじいものじゃな。この十七の【かっ】があれば出来ぬ事などないのではないか。いや、空は飛べぬが…… まあせっかく如来様より頂いた力じゃ。有効に活用させていただこう」
クウラは岩室より出て先ずは『轄っ』と東西南北に向かって唱えた。法力は一千ずつ込めてある。
「ふむ、これで愚僧よりも体力の低い者は愚僧の許可なく岩室には入れぬようになったのか…… まあ、それはもしも来る者がおればはっきりとしようぞ。さて、先ずは手頃な木を探しに行くか」
そう言ってクウラは岩室から離れて木を探しに出かけた。家を整える為に必要な手頃な大きさの木を探して歩くクウラの前方に何かの気配が感じられた。
クウラは歩みを慎重にし、音をたてないように静かに前方へと向かう。クウラが隠れられるぐらいの木を盾にしてそーっと前を見るとクウラが見たこともないような兎がいた。
『なんと、角が生えておるな。それに大きいのう。猪ほどもあろうか。何かの肉を食っておるようじゃな。肉食のうさぎなぞ初めて見たぞ。違う世界では兎もこうも違うものか』
内心でクウラがそう思っていると角の生えた兎がクウラに気づいてしまったようだ。
「ピャーッ!!」
仲間を呼んだのか、警戒の鳴き声なのかは分からないが角をクウラに向けて威嚇している。
「ふむ、無駄な殺生は出来ぬがそなたが亡くなったならば愚僧の腹にきっちりと収めると約束しようぞ。『戛っ』!!」
クウラは角が生えていて猪ほどの大きさであろうとも兎には違いないと法力を十五込めて【カッ】を唱えた。唱えた【カッ】は法力で作られた鉾を角の生えた兎に向かって飛ばす。
速すぎて避ける事も出来ずに頭の角の付け根に鉾が刺さった兎は絶命した。
「むむっ、倒したか。向かってくる気が満々じゃったのでな。許せよ、愚僧もまだ死にたくはないのでな」
言うとクウラはまた、
「『割っ』」!!
と唱えて兎の首と胴を分けた。後ろ足をつかみ逆さまにして血抜きをしている。
「この血の匂いで他の獣が来るやも知れぬな。ここは我が家に一度戻るとしよう」
クウラはそう言って兎の体と頭を両手に持ち、岩室に向かって走って戻るのであった。
一方で同じ山中の頂付近の場所でクウラの存在に気がついた者がいた。
「ムッ!? な、何という魔力だ! 俺よりも強い? バカな! そんな存在に俺が今まで気づかなかったというのか?」
その存在はこの山の主として麓に住む人間たちに理解されている。事実、この山の主は自分だとその者も思っていた。
「確かめねばならぬな…… その前に俺の保護対象たちが無事か確認に行こうか」
その存在はそう言うとバサリと漆黒の翼を動かして飛び立つのであった。
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