第5話 紫陽花のちぎり絵


わたくしは

窓の外に咲く

雨に濡れた紫陽花を眺めながら



先日購入した和紙を

広げております



和紙は

模様の美しさと

手触りの良さが

とても魅力的でございます



和紙は

他の紙にはない

独特の柔らかさと温かみを持っています



和紙を手に取りますと

その優しい感触が心地よく

手作業に自然と没頭させてくれます



色とりどりの和紙を手でちぎり

白いハガキに貼り付けていくと

徐々に紫陽花の形が

浮かび上がってまいります



ちぎっては貼り

ちぎっては貼り

を繰り返しておりますと


子どもの頃に戻ったかような

わくわくした心持ちでございます




緑色の葉っぱを添えましたら

色鮮やかな紫陽花が完成!



うん!ステキ!



満足気に眺めていたその時

ふと何かが動いた気がしました




「えっ?」と思って

もう一度ちぎり絵を見直しますと



小さなかたつむりが

ちょこんと顔を出しています




そして

紫陽花の花びらの間から

ゆっくり這い出してきました




どうしてこんなところに?



と驚きながらも

わたくしはそのかたつむりを

じっと見つめます




かたつむりは

スローモーションのようにゆっくり

紫陽花の上を進んでいきます




「どこから来たの?」

と声に出してみると



かたつむりは

見つかっちゃった!

とばかりに慌てて

紫陽花の中に隠れてしまいました




わたくしは

ハガキを手にとり

表も裏も確認いたしましたが

かたつむりはどこにもおりません



ハガキを振ってもみましたが

当然のことながら

かたつむりは落ちてきませんでした

 



こんな面白いお手紙を送ったら

あの人

おどろいてくれるかしら?



わたくしの

いたずら心がうずうずいたします




わたくしは

長靴を履いて

傘をさし

うきうきしながら

雨の中

ポストへ向かいました


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