ドラゴン
冷たい雨が降る中、鎧を纏った鬼が暴れていた。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
盾でモンスターの頭を潰し、斧でモンスターの身体を両断する。
次々と怪物達を殺していく鬼。
その鬼の後を鎧型精霊たちはついていき、モンスターたちの命を奪う。
鬼の名は、創造誠也。
過去に戻り、全てを奪ったモンスターたちを殺す復讐鬼である。
<><><><>
「ハァ…ハァ…ハァ……」
雨と血と泥で汚れた誠也は、荒い息を漏らしながら片膝を地面に付ける。
多くのモンスターの命を奪い、ただの肉の塊にした鬼。
その鬼の周りにはモンスターと精霊の死体が地面にいくつも転がっていた。
街を滅ぼそうとした多くのモンスターたちは誠也と精霊たちによって殺された。
だが戦いはまだ終わっていない。
「クソが……なんでこんなやつがいるんだよ」
悪態を吐く誠也の視線の先にいたのは、大きな……そして恐ろしいモンスター。
そのモンスターは強固な鱗に覆われており、四本の足の指先には鋭い爪を生やしていた。
口から伸びた白い牙はあらゆるものを噛み砕くだろう。
「たく……まさか竜種がいるなんて」
竜種。それはモンスターの中で上位の強さを持つ凶悪な化物。
鱗はあらゆる攻撃を防ぎ、爪はあらゆるものを切り裂く。
実力の高いハンターや守護騎士が百人以上いて倒せるかどうかのモンスター。
別名―――ドラゴン。
「でも……こいつを殺さないと街が滅びるからな」
誠也は立ち上がり、斧と盾を構える。
もう街には家族と幼馴染だけでなく、多くの人々はいない。
だからここで逃げても問題なかった。
けれど、誠也は逃げようとしなかった。
「ようドラゴン……この街は俺の故郷なんだ。また故郷が消えるのは嫌なんだ。だから……」
殺気を込めた冷たい声で彼は告げる。
「死んでくれ」
誠也の言葉を合図に、ドラゴンは雄叫びを上げて攻撃を仕掛ける。
「グオオォォォォォォォォォォォ!」
ドラゴンは右前足を力強く振るった。
迫りくる爪撃を誠也は盾で防ぐ。
だが衝撃が強すぎるあまり、誠也は軽く吹き飛ぶ。
「なんつーパワーしてんだこいつ!」
誠也は何とか地面に着地し、魔法を発動する。
「〈
ドラゴンの影から黒触手が無数に出現。
触手達はドラゴンの手足などに巻き付き、拘束する。
だがドラゴンは拘束から抜け出そうと暴れる。
「〈
誠也は別の魔法を発動。
ドラゴンの周りに無数の魔法陣が出現。
魔法陣から黒い鎖が飛び出し、ドラゴンの手足などに巻き付く。
「グアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
鎖と触手に拘束されたドラゴンは叫び声を上げながら暴れる。
だが触手と鎖に縛られているせいでうまく動けない。
「喰らえ」
誠也は盾と斧でドラゴンの頭を攻撃。
盾で殴り、斧で斬る。
それを何度も繰り返す。
しかしドラゴンは傷一つつかない。
「硬すぎるだろコイツ……なら!」
誠也は盾と斧を地面に投げ捨て、両手をドラゴンの頭に触れる。
「〈
誠也がスキルーーー【
強力な爆発攻撃を受けたドラゴンは片目を失う。
【爆撃者】。関西奪還作戦の時、報酬として手に入れたスキル。
掌から高威力の爆発を発生させるというシンプルかつ強力な攻撃スキル。
「よし、これで!」
ダメージは入った!
そう思った時、ドラゴンの身体に巻き付いていた鎖や触手が全て千切れる。
そして、
「グアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
怒りと殺意の咆哮を上げながら、太長い尻尾を振るった。
とっさに誠也は斧と盾を拾い、迫りくる尻尾攻撃を防ぐ。
しかし攻撃が強すぎるあまり、盾が砕け散る。
盾を失った誠也は、
「〈狂化〉!」
スキル【狂戦士】を発動して、己の肉体を強化。
赤黒い炎を纏った彼は斧を振るう。
ドラゴンは目を血走らせながら、爪を振るう。
斧と爪が何度も衝突し、火花が飛び散る。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「グオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
激しく戦う鬼と竜。
化物同士が敵を殺すために何度も攻撃する。
そして、
パキン!
誠也の斧が甲高い音を立てて砕け散った。
「しまった!」
武器を失ってしまった誠也。
そんな彼をドラゴンは尻尾で吹き飛ばした。
吹き飛ばされた誠也は建物に激突。
被っていた兜は壊れ、鎧に皹が走る。
「ガハッ!」
激しい痛みが襲い、彼の口と頭から血が流れる。
(やべー……意識がぼんやりしてきた。これがドラゴン。強すぎるだろう)
もう戦う体力はない。
さっきの尻尾の攻撃で身体はボロボロ。
指一本すら動かすこともできない。
そんな彼にドラゴンは近づく。
(あぁ……死ぬのか、俺は。でも家族と幼馴染は助かる)
誠也の両親と幼馴染はハンター協会が保護した。
街は滅ぶだろうが、少なくとも大切な人達の命は助かる。
(やるべきことはやった……だから……もういい)
誠也が死を覚悟した。
その時、
「ヤアアアアァァァァァァァァァァァ!!」
一人の少女が炎を纏った槍でドラゴンの顔を攻撃した。
「なん……で……」
その少女は炎の如く赤い髪を伸ばしており、尖った細長い耳を生やしていた。
「なんでいるんだよ。お前!」
彼の目の前に現れたのは、幼なじみのエルフの女の子。
「聖ちゃん!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます