本当の戦い

「ハァ……」


 ベットの上で寝っ転がりながら、誠也はため息を吐いた。


「守護騎士……か」


 全てが終わったら鍛冶師として生きていく。

 そう決めていたのに、それが叶わなくなった。

 

 それが誠也にとって辛かった。


「なんでこうなるのかな……」


 誠也はただ……家族と幼馴染を救いたかった。

 そのためにLVを上げ、スキルを多く手に入れた。


 その結果が……鍛冶師として生きていくことは許されず、守護騎士として生きていくことになってしまったのだ。


「誠也……入るぞ」


 誠也が落ち込んでいると、部屋に母親である結衣が入ってきた。


「母ちゃん……」

「ちょっと……話がしたくて来た」


 結衣はベットに座り、誠也に視線を向ける。


「大丈夫か?」

「あんまり……大丈夫じゃない」

「……林葉会長から色々聞いた。お前……守護騎士になるんだってな」

「うん……ごめん。母ちゃん」

「なにが?」

「俺……母ちゃんと父ちゃんの跡を継ぐことができなくなった」

「……」

「俺……鍛冶師として二人の仕事を手伝いたかったけど……できそうにない」


 誠也がそう言うと、結衣は彼の頭を優しく撫でる。


「母ちゃんこそごめんな。お前が守護騎士なんてなりたくないのは分かっているのに、助けられそうにない」

「母ちゃん……」

「だけど……辛いことがあったらいつでも帰ってこい。ここはお前の家なんだから」

「……ありがとう」


 母の言葉を聞いて、誠也は心が軽くなったのを感じた。


<><><><>


 二月十日、午前九時三十分。

 その日は冷たい雨が降っていた。

 空は黒い雲に覆われ、強い風が吹いている。

 誰もが家にこもり、街の中を歩いている人はいない。

 だが一人だけ……街の中を歩いている者がいた。


 その人は強固な鎧を纏い、白い外套を羽織っていた。


「……来たか」


 彼—――創造誠也は足を止める。


 誠也の視界に映っていたのは、モンスターの大群。


(家族と幼馴染はハンター協会に保護された。あとは……この街を守るだけだ)


 誠也は影から盾と斧を取り出す。


(正直……大切な人たちだけ守られればそれでいいんだが……帰る家がなくなるのは嫌だろうしな。なにより)


 誠也は瞳を怪しく光らせて、モンスターたちを睨む。


(あの時……俺の家族と幼馴染を殺した……このモンスターたちを許すわけにはいかない)


 誠也の中で燃え上がる怒りの炎。

 彼は斧と盾を構え、告げる。


「〈精霊召喚せいれいしょうかん〉精霊騎士団」


 なにもないところから剣と盾を装備した鎧型精霊たちが現れる。


 その数……千体。


「さぁ始めようか。殺戮を」

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