関西奪還作戦②

 Cランクの女性ハンター、小森みゆきは信じられないものを見て呆然としていた。


「なによ……アレ」


 彼女の視界に映っていたのは、鎧を纏ったハンターが戦う姿。

 彼は白い外套を揺らしながら、凶暴なモンスターたちを次々と殺していく。

 戦斧で首を斬り落とし、盾で頭を潰す。

 速く、そして一撃でモンスターの命を奪うハンター。

 みゆきだけでなく、他のハンターたちも……自分はEランクだと言っていたハンターに驚き、恐怖を感じた。


「アレでEランク……って、絶対に嘘でしょ」


 モンスター全てをただの死体にし、地面を赤く染めたそのハンターに……みゆきはこう感じた。


 まるで……鬼だと。


<><><><>


「……こんなものか」


 多くのモンスターを殺しまくった誠也はフゥーと息を吐く。

 五百体の精霊兵士と誠也のおかげで京都にいるモンスターは全て死んだ。


「これで早く帰れるな」


 誠也がそう思っていたその時、軍服を着た一人の女性が近づいてきた。


「誠也ハンター」

「はい、なんでしょう?」

「実は大阪に強力なモンスターが出現したため、討伐をお願いしたいのですが」

「俺の担当は京都だけでは?それに俺よりランクが高い人を向かわせた方が……」

「すでに実力の高いハンターや守護騎士が向かいました。ですが……」


 女性は暗い顔を浮かべた。

 そんな彼女を見て、誠也は察した。


 恐らく死んだのだろう。


「俺が行っても意味がないような気が」

「いえ。意味はあります。林葉会長から聞いています。……誠也ハンター。あなたがLV50であることを」


 周囲にいたハンター達は驚きの声を上げる。


「LV50!?」

「あのEランクが!」


 女性は言葉を続ける。


「現在、LVが最も高いのは誠也ハンター……あなたです」

「……」

「どうか協力をお願いします」


 深く頭を下げる軍人女性。

 そんな彼女を見て、誠也はため息を吐く。


「報酬……追加してもらえますか?」

「!はい。分かりました」

「で、どうやって行くんです?」

「あちらにヘリがあります」

 

 誠也は軍人の女性と共にヘリに乗り、大阪に向かった。


<><><><>


「こいつは……」


 大阪に到着した誠也は、兜の中で顔を歪めた。

 今……彼の目に映っているのは、血を流しながら倒れている人たちだ。

 全員、息はしておらず、死体と化している。


「……アイツがやったのか」


 誠也が視線を向けた先にいたのは、黒い鎧型モンスター。

 頭はなく、背中には大きな剣を背負っていた。

 そして胸のあたりには赤い宝石が埋め込まれていた。


「デュラハンか……」


 デュラハン。剣術を扱う強力なモンスター。


「本気でいった方がいいな」


 誠也は盾と斧を構え、スキルを発動。


「〈盾強化〉〈斧強化〉〈超加速〉」


 武器と己を強化した誠也は脚に力を込め、駆け出す。


「ハァ!」


 誠也は斧を力強く振るう。

 彼の斧撃をデュラハンは背中に背負っていた大剣で防ぐ。

 大きな金属音が鳴り響き、衝撃波が発生する。


「……」

「〈武装破壊〉」


 誠也がスキル【武装師】を発動。

 デュラハンの大剣は甲高い音を立てて砕け散った。


「〈武装超強化〉〈必殺の一撃〉」


 スキルで強化した斧で彼はデュラハンの左腕を切断する。


 この時、誠也は『イケる!』と思った。


 しかし、その考えは甘かった。


「グオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


 デュラハンは口もないのに不気味な雄叫びを上げた。

 そしてデュラハンは禍々しい黒い長剣を生み出し、右手に装備した。


(なんだあの武器!?)


 デュラハンの長剣を見て、誠也はゾッと悪寒を感じた。


 彼は多くの武具を作ってきた。多くの武具を見てきた。

 だからこそ理解できたのだ。


 あの剣は危険だと。


「まずい!」


 誠也は慌てて盾を構えた。


「グオオオォォォ!!」


 デュラハンは長剣を振り下ろす。

 黒い剣撃は誠也の盾を豆腐のように切り裂いた。

 誠也は驚愕しながら、後ろに下がる。


「嘘だろ……」


 兜の中で冷や汗を流す誠也。


「これは……簡単にいきそうにないな」

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