関西奪還作戦①

 翌日。

 誠也は大きな軍用ヘリに乗り、関西に向かって移動していた。

 ヘリの中には誠也以外にも剣や戦槌を装備したハンターが椅子に座っていた。


(……なんだか見られてないか?)


 ヘリの中にいたハンター全員が誠也に視線を向けていた。

 なぜ視線を向けてくるのか分からず、彼は問い掛ける。


「あの~……なにか?」

「ああ、いや……すごい防具を装備しているなって」


 誠也の隣にいた女性ハンターが答える。


「あなたが装備しているの……どれも一級品よね?」


 誠也が纏っている結晶の鎧と兜。

 そして鎧の上に羽織っている白い外套。


 鎧も外套もハンターなら一目見て高性能な高級品だと分かった。


「そんなすごい装備をしてくるということは……あなたAランクかSランクのハンターでしょう?」

「いえ、俺はEランクです」


 誠也が素直に答えると、ヘリの中にいたハンターたちは笑い出す。


「なるほどね。実力も経験もないただのいいとこのお坊ちゃまってわけね」

「この依頼に参加したのもお遊び感覚ってわけね」

「せいぜい漏らさないようにな」


 誠也をバカにするハンターたち。

 だが彼は怒ったり、落ち込んだりはしなかった。


(まぁ……当然だよな)


 ヘリの中にいる誠也以外のハンターたちは全員BランクかCランクの実力者。

 レベルも20から25。

 ハンターの中では高レベル。

 そんなハンターたちの中にEランクがいれば、当然……笑うだろう。

 だが誠也はそんなことどうでもよかった。

 一番、重要なのは……どれだけ早くこの依頼を終わらせられるかだ。


(関西を奪還するために多くのハンターと守護騎士がこの依頼に参加している。俺達の仕事はモンスターを一匹でも多く倒すこと)


 ハンターと守護騎士はそれぞれの地域でモンスターたちを討伐する。

 誠也の担当は京都だ。


(自分が担当する場所を奪還できれば早く帰れると言ってたし……全力でやるか)


 誠也は速く依頼を終わらせて、家に帰って、新たな武器を作ることを考えていた。


<><><><>


 数時間後、ヘリは地上に着地。

 ヘリから誠也を含めたハンターたちは降り、周囲を見渡す。


「ここが……京都」


 誠也たちの視界に映ったのは、崩壊した街だった。

 建物は倒れており、コンクリートの地面は皹だらけ。

 人の気配はなく、まさにゴーストタウン。


「こいつは……」

「酷いわね」


 ハンターたちがそれぞれ感想を述べていた時、


「ガルルルルルルルルルルル!!」

「ガウガウ!」

「グルルルルルルルルルルル!!」


 倒壊した建物の影から次々と凶暴そうなモンスターたちが現れた。

 しかも一匹や二匹ではなく……何十匹もいる。

 ハンターたちは武器を構えようとした。


 だがそれよりも速く……誠也は動く。


 自分の影から蒼い長弓を取り出し、弦を引っ張っる。

 すると弓に水の矢が生成された。

 水の矢を装填した誠也は、告げる。


「死ね」


 誠也は弦を離し、水の矢を放つ。

 放たれた水の矢は無数の矢へと拡散し、何十匹ものモンスターの頭を撃ち抜いた。

 頭を撃ち抜かれたモンスターたちは地面に倒れる。

 一瞬でモンスターたちを全て殺した誠也に、ハンターたちは驚愕する。

 そんな彼らを無視して彼はスキルを発動する。


「〈魔物探知〉」


 スキルを発動した直後、誠也は京都にいる全てのモンスターを感じ取る。


「結構多いな……なら。〈精霊召喚〉精霊兵士」


 スキル【精霊王】を発動すると、なにもないところから蝶の羽を生やした鎧たちが現れる。

 その数……五百体以上。


「行け」


 誠也がそう命令すると、鎧型の精霊たちは飛んで行った。


「これでよし……あとは……ん?」


 ハンターたちが驚いた顔で誠也のことを見ていることに気が付く。


「どうしました?」


 誠也が問うと、先ほど彼の隣に座っていた女性ハンターが答える。


「どうしたもこうしたもさっきの攻撃はいったい……というかあの鎧たちは?」

「ああ、さっきの攻撃はこの《水狼の弓》によるものです。で、あの鎧たちは精霊兵士という俺が召喚した精霊です。今頃あちこちでモンスターを狩っているでしょう」

「……」

「さぁ、早くモンスターを狩ってとっとと終わりにしましょう」

「え……えぇ」


 誠也たちは別の場所に行って、モンスター達を狩りまくった。

 だがほとんどのモンスターは誠也によって狩られていたのだった。

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