依頼
ダンジョン『白の死塔』を攻略して翌日。
誠也は工房で新しい装備を作っていた。
「よし……完成だ」
彼が作ったのは白い外套。
その外套は昨日倒したリザードマン・ロードの皮で作った物。
防御力が高く、羽織るだけで素早さや筋力が強化される。
「さて。次は何を作るか……」
モンスターの大群が故郷を襲うのは、二月十日。
今日は二月一日。
つまりあと九日間しか時間がない。
その間に出来るだけの準備を誠也はしなくてはならない。
(準備も大切だが……家族や聖ちゃん達を安全な場所に避難させないといけない。けどどうする?二月十日にモンスターたちがやってくるって言うか?いや、信じてもらえないだろうな)
どうすればいいか……と悩んでいた時、
「誠也……いるか?」
工房に母親の結衣がやってきた。
「どうしたの母ちゃん?」
「なんかハンター協会の人が来てるんだが」
「ハンター協会?」
「ああ。お前を呼んでる」
「分かった。どこにいる?」
「ここですよ」
そう言って浴衣を着た女性が工房に入ってきた。
女性は狐の耳と尻尾を生やしており、目が細く、小さな笑みを浮かべていた。
「あなたは……」
「初めまして、誠也ハンター。私はハンター協会会長、
まさかハンター協会のトップが来るとは思わなかった誠也は驚く。
「……ハンター協会会長が俺になんの御用でしょうか?」
「実はあなたに依頼したいことがありまして」
「依頼?俺に直接ですか?」
本来、ハンター協会が出しているいくつもの依頼からハンターは条件が合っているものを選ぶ。
だがハンター協会が直接ハンターに依頼を出すということは、とても重要という意味を表す。
「できれば二人だけで話したいんですが……よろしいですか?」
「……母ちゃん」
「分かっている。私はここから離れよう」
「ありがとう」
結衣は工房から離れた。
誠也と二人っきりになった林葉は話を始める」
「依頼したいのは……関西奪還作戦にあなたも参加してほしいのです」
「関西奪還!?」
誠也は驚愕の表情を浮かべた。
「ちょ……ちょっと待ってくださいよ!なんでそんな依頼をハンターになったばかりの俺に依頼するんです!」
現在、日本は北海道、東北、関東以外の地方はモンスターに支配されている。
つまり関西に行くということは、自殺行為に等しい。
「あなたは世界で数人しかいないLV50のハンターだからという理由が一つ」
「え?なんで知って」
「部下から聞いたのと、本当かどうか調べました」
「そうなんですか……で、他の理由は?」
「二つ目の理由は『白の死塔』を攻略したあなたの実力です」
「なるほど」
誠也は確かに世界最大のダンジョンの一つ、『白の死塔』を攻略した。
誰もが不可能と言われていたものを攻略した誠也は、高い実力を持っていると思われてもおかしくない。
「もちろん報酬は用意します」
「……申し訳ありませんが……いやちょっと待て」
誠也は断ろうとしたが、ある事を思いつく。
「あの……報酬として二つお願いしたいことが」
「なんでしょう?」
「一つはスキルブックが欲しいです。多くの敵を倒すことに特化したスキルか長時間戦うことに特化したスキル……このどちらか」
「すぐに用意します。もう一つは?」
「……二月十日、俺の家族と幼馴染の焔聖火……そして彼女の家族を安全な場所に避難させてほしい」
「……その日は何かあるのですか?」
「言ってもどうせ信じないと思うので話しません」
「……分かりました。あなたの家族と幼馴染は我々が保護しましょう」
「ありがとうございます」
「では誠也ハンター。明日の朝、迎えの車を送るので」
「分かりました」
林葉は工房から出て行き、姿を消した。
これで家族と幼馴染の安全はなんとかなった。
そのことに誠也は安堵する。
「明日か……」
誠也は出来る限りの準備を始めた。
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