ステータス

 誠也が過去に戻って一週間後。

 彼は森の中でゼリー状のモンスター、スライムを狩っていた。


「やぁ!」


 誠也は手に持っていた銅の短剣をスライムに突き刺す。

 するとスライムはブルブルブル!と激しく震え、液体へと変わった。

 残ったのは白く発光する小石―――魔石のみ。

 その魔石を拾い、誠也は腰につけていたウエストバックの中に魔石を入れる。


「スライム討伐と魔石回収完了……と。これで十回目か」


 吐息をついた彼は銅の短剣を鞘に戻した。


 今、誠也は未来で起こる悲劇を止めるために強くなろうとしていた。


「ステータスオープン」


 誠也がそう言うと、彼の目の前に半透明なウィンドウが出現した。


<><><><>


 ステータス

 名前:創造誠也

 年齢:五歳

 種族:人間

 LV:3

 スキル:【鍛冶師】〈鍛冶〉。武具や防具の製作、修理、強化が可能。製作能力が上昇。


<><><><>


 この世にはゲームのようにLVやスキルが存在する。

 LVは身体能力、肉体強度、そして体力を数値化したもの。

 LVが上がれば上がるほど、身体能力などが強化される。

 つまりLVが高ければ高いほど超人じみた力を使うことができるのだ。


 そしてスキルは特殊能力だ。

 必ず誰もが一つか二つはスキルを持っており、使うことができる。

 スキルは重要なのかというとかなり重要。

 例えば誠也が持っている【鍛冶師】のスキルの場合。

 スキル【鍛冶師】を持った者が制作した武具や防具は装備者に力を与える。

 だがスキル【鍛冶師】がない者が制作した武具や防具は装備者に力を与えないのだ。

 同じ技量、同じ制作方法で作ってもスキルがない者が作ったものはただのガラクタにしかならない。

 それぐらいスキルとは特別なものなのだ。


(今の俺が持っているのはスキル【鍛冶師】のみ。製作系スキルしか持っていない俺では戦闘は難しいが、それでも頑張らないとな)


 戦闘系スキルを持たない誠也に今一番必要なのはLV上げ。つまり肉体強化だ。

 LVを上げるには、モンスターを倒さなければならない。

 だから誠也はモンスターを狩っているのだ。


「この一週間……スライムを狩りまくっているが、なかなかLVが上がらないな。まぁLV上げって結構大変みたいだし気長にやるしかないか」


 誠也は周囲を警戒しながら森の中に進もうとした。

 その時、後ろから足音が聞こえた。

 振り返るとそこにいたのは犬の頭をした人型モンスター。


 コボルドだ。


「まさかコイツに会うとは」


 頬から一筋の汗を流し、頬を引き攣る誠也。

 タイムリープ前に自分を殺したコボルドを、彼は思い出す。


(正直……今の俺が倒せるか分からないけど、やるしかないよな)


 鞘から鋼の剣を引き抜き、誠也は構える。

 今、目の前にいるコボルドはなにも装備していない。

 あるのは鋭い爪と牙。

 対する誠也が持っているのは、両親が作った一番安い銅の剣。


(行くしか……ないよな)


 誠也は駆け出し、コボルドに突撃した。


「ワオオオォォォォォォォォン!」


 コボルドは雄叫びを上げて、突撃してくる誠也に襲い掛かる。

 犬人の鋭い爪が誠也の首を切り裂こうとした。


「舐めんな!」


 迫りくる爪撃を短剣で防いだ誠也は、コボルドの足を強く踏む。

 そして彼はコボルドに頭突きした。


「キャイン!?」


 短い悲鳴を上げたコボルドは、地面に倒れる。


「死ね」


 誠也は鋼の短剣をコボルドの首に突き刺す。

 肉を刺す感触が伝わり、コボルドの口から血が流れる。

 ビクンビクンと何度か痙攣した後、犬人モンスターは動かなくなった。


「ふぅ……なんとか倒せた」


 吐息をついた誠也はコボルドの首から短剣を引き抜く。


「さて、素材採取でもするかな」


 そう言って誠也は短剣でコボルドの爪や毛皮を剥ぎ取った。

 モンスターの爪や皮などは武具や防具を作る時にいい素材になる。

 戦闘系スキルを持っていない誠也だが、【鍛冶師】スキルを使ってコボルドの素材を武具や防具にすることはできる。


「よし。素材集め完了っと。じゃあ、帰って作ろうかな。俺の装備を」

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