死
近くのコンビニでお線香と花束を買った誠也は墓地にやってきた。
墓参りだ。
「遅くなってごめんね。父ちゃん、母ちゃん」
創造家と刻まれた墓に花を添え、線香を焚き、合掌する誠也。
彼は両親が眠る墓に話しかける。
「前も話したと思うけど、俺さ……今、鍛冶師として頑張ってるんだ。二人のようにうまくいかないけどそこそこ稼げて、良い武具や防具を作れるようになったんだ。ハンターや守護騎士にも評判がいいんだ。だから……安心して寝ててよ」
そう言って誠也は両親が寝る墓から離れ、別の墓に向かった。
五分ぐらい歩いた彼はとある墓の前で足を止める。
「やぁ……また来たよ。聖ちゃん」
眉を八の字にして、墓を見つめる誠也。
彼は花束を添え、線香を焚く。
「もう十七年が経ったちゃったな。あの日から…もう俺、三十二歳のおっさんになっちゃったよ。……今日も昔の夢を見た。何度も思い出す。……お前が死んだ姿を」
誠也の脳裏には、大切な幼馴染―――
目を細めながら、彼は言葉を続ける。
「聖ちゃんが生きていたらさ、きっと夢を叶えてたよな……絶対に」
誠也は悲しそうに顔を歪める。
「なんで……俺だけが生き残ったんだろうな」
今から十七年前。
誠也が十五歳の時、凶悪な生物―――モンスターの大群によって彼の故郷は滅ぼされた。
誠也は別の街に行って遊んでいたおかげで命は助かった。
だが助かったのは命だけ。
それ以外のものは……なくなってしまった。
「なんで陰キャラの俺が生き残ったんだろうな。なんで……家も、両親も、幼馴染も失わなくちゃいけないんだろうな」
肩を震わせながら、瞳からポタポタと涙を零す誠也。
彼は幼馴染が眠る墓にそっと手を当てる。
「こんな思いをするぐらいなら……俺もあの時、死ねばよかった」
誠也がそう言ったその時、
「グガアアァァァァァァァァァァァァ!!」
耳を塞ぎたくなるような獣の咆哮が聞こえた。
「この声…まさかモンスター!」
驚いた表情で浮かべて、誠也は咆哮が聞こえた方向に視線を向ける。
「あれは……」
彼の視界に映っていたのは、何棟もの建物が破壊し、街の人達を襲う襲うモンスターの姿。
棍棒で人の頭を殴る豚顔の人型モンスター。
人の血肉を喰らう大きなトカゲ型モンスター。
多くの人達の命が奪われる光景を見た誠也は、慌てて駐車場に向かって走った。
駐車場に到着した彼は急いで車に乗り込もうとした。
だがその時、鋭い矢が誠也の足に突き刺さる。
「ぐあっ!?」
地面に倒れ、痛みで顔を歪める誠也。
そんな彼に弓矢を持った犬顔の人型モンスターが近づいてきた。
「コボルドか!クソっ」
誠也は何とか逃げようとしたが……すぐに諦めた。
「やめよ……どうせこの足じゃ逃げられないし、これ以上……生きても仕方ない」
車にもたれかかり、彼は空を見上げる。
「友達はほとんどいないし、帰りを待ってくれる人もいない。それに俺が死んでも……悲しむ人はいない」
誠也はため息を吐く。
「つっまんねぇ~人生だった」
そう言って誠也は近づいてくるコボルドに視線を向ける。
「さっさと殺せよ、クソ犬。こっちはもう生きるの疲れたんだ」
誠也の言葉を理解したのか、コボルドは弓矢を地面に置いて、腰に差していた短剣を抜く。
そしてコボルドは……短剣を誠也の首に突き刺した。
「ガハッ」
口から血を吐いた誠也は、笑みを浮かべる。
(ああ、これで死ねる。これで……みんなに会える)
誠也の意識が徐々に朦朧としていく。
(父ちゃん、母ちゃん……聖ちゃん。俺、頑張って生きたよな?もう……休ん…で……いい…よ……な)
彼はゆっくり瞼を閉じて、意識を手放した。
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