リトライ~過去に戻った鍛治師は幼馴染みと家族を死なせないため、めちゃくちゃ強くなります!~
@gurenn1950
第一章
プロローグ
激しい雨が降る中、一人の少年は走っていた。
彼は必死な表情をしており、ただ事ではないことが分かる。
いや……実際、ただ事ではなかった。
今の少年の心は、焦りと不安に満ちていた。
「ハァハァハァ……うわぁ!」
口から荒い息を漏らしながら走り続けていた少年は、石につまづき、地面に転ぶ。
水たまりに転んだせいで服は泥だらけになってしまう。
「ぐっ!」
だが彼はすぐに起き上がり、再び走り出す。
足が痛くなっても、呼吸が苦しくても、少年は走り続けた。
それからしばらく走っていた少年は……足を止める。
「あ……ああ……」
少年は大きく目を見開き、声を震わせた。
嘘だ。信じたくない。嘘だと言ってくれ。
今、少年の目に映っていたのは、崩壊した街。
その街は彼の故郷。
建物は倒壊しており、車は燃え、地面には多くの人が倒れていた。
「父ちゃん…母ちゃん……聖ちゃん!」
嫌な予感を感じながら、少年は再び走り出す。
走りながら探す。優しく、料理が得意な父を。
大丈夫、生きていると自分に言い聞かせながら探す。厳しく、だけど尊敬する母を。
そして……どうか生きてくれと願いながら、探す。大切な……幼馴染を。
「聖ちゃん!」
彼は必死に探し……数分後、見つけた。
彼女は頭から大量の血を流していた。
少年は一瞬、言葉を失う。
嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ!!
認めたくない。信じたくないと思いながら少年は、少女を抱き起こす。
「聖ちゃん!起きて、聖ちゃん!」
身体を揺らしながら声を掛け続ける少年。
だが彼の声に少女は反応しない。
少年は少女の胸に耳を当てて……絶望する。
「心臓が……」
鼓動が…聞こえなかった。
それはつまり、目の前にいる少女が……死んでいるという意味だった。
「聖…ちゃん」
少年は顔を歪めて、涙を零す。
「お願いだ……目を覚ましてくれ」
泣きながら少年は声を掛ける。
だが……氷のように冷たくなってしまった少女は目を覚まさない。
少年の胸に締め付けられるような痛みが走る。
悲しみと絶望が……少年を苦しめる。
「なんで…なんでだよ、聖ちゃん。お前は……俺と違って叶えたい夢があるんだろう?」
少年はよく聞かされた。
「私には叶えたい夢があるの」だと。
「友達がたくさんいるんだろう?」
少年は知っている。
今、腕の中にいる少女には多くの友達がいるのだと。
少女が死んだら悲しむ人がいるのだと。
「好きな人がいて、その人に告白するんだろう?」
少年は気付いていた。
自分の大切な人が……好きな人が、恋をしているのだと。
気付いていた。気付いていたからその恋が叶うよう応援していた。なのに……こんなのって。
少年は息をしていない幼馴染の少女を抱き締める。
「なぁ……聖ちゃん……頼むから…起きてくれよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
暗い雨の中、少年の悲しみの叫び声が響き渡った。
<>
「ハッ!」
ベットの上で寝ていた男—――
口からハァハァと荒い息を漏らしており、身体中から大量の汗を流していた。
「クソ……またあの夢か…」
顔に手を当てて、ハァとため息を吐く誠也。
彼は思い出す。滅びた故郷を。そして大切な人たちが……ただの死体となった姿を。
「何度見ても、なれないな」
顔を歪める誠也は、とても悲しく……苦しそうだった。
「なんで……俺だけが」
夢を見た後、何度も思う。
なぜ自分だけ生きている。
なぜ自分以外いなくなったのかと。
「顔を洗って、飯にするか」
ベットから降りた誠也は洗面所に向かう。
洗面所に到着した誠也は水道の蛇口をひねり、水を出す。
ジャーと流れる水を見て、誠也は思い出す。いや……水を見ると思い出してしまう。全てを失った雨の日ことを。
「……後悔しても遅いんだよ」
冷たい水で顔を洗い、彼は眠気を飛ばす。
近くに置いてあるタオルで顔を拭き、洗面所の鏡を見る。
「……いつ見ても冴えない陰キャ顔だな」
鏡に映っている自分の顔を見て、誠也は苦笑する。
ボサボサの黒い髪。締まりのない顔。たるんだ目元。
ブサイクではないが、イケメンでもないだらしないおじさんの顔をしている誠也。
「母ちゃんが見たら……きっと怒るだろうな」
死んだ母なら「おい、なんだその顔は?もっとシャキッとしろ」と叱るだろう。
母のことを考えると、誠也は胸が苦しくなるのを感じた。
「飯にしよう」
誠也は台所に移動し、冷蔵庫からコンビニ弁当を取り出す。
700円ぐらいしたハンバーグ弁当。それをレンジで温める。
温め終わった後、弁当と割り箸を持って、リビングに向かう。
リビングの机の上に弁当を置き、椅子に座って誠也は手を合わせる。
「いただきます」
誠也は弁当の蓋を開けながら、リモコンのボタンを押してテレビをつけた。
テレビには今日のニュースの映像が流れる。
『では次のニュースです。守護騎士アナ・フェーリアルがニューヨークで多くの一般人を大量虐殺しました』
「朝から最悪なニュースだな」と誠也は愚痴を言いながら、割り箸で白米を食べる。
温めが甘かったのか、白米は少し冷たく、パサパサした食感が誠也の口に伝わってきた。
次にハンバーグを食べるが、噛めば噛むほど冷たい肉汁が口に広がり、あまりおいしく感じなかった。
「……父ちゃんのごはんはうまくて、温かったな」
誠也の父は料理が得意だった。
どれもおいしく、そしてなにより心が温かくなる。
だが父は……もうこの世にはいない。
「また食べたいな……父ちゃんの飯」
少し冷たいコンビニ弁当を食べていた誠也は、寂しさを感じた。
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朝食を食べ終わった後、彼は歯磨きをして、服を着替える。
そして画面に皹が走ったスマホと財布をショルダーバックに入れ、家を出る。
誰もいない家に「行ってきま~す」と言って、外に出た誠也は車に乗り、エンジンをかけた。
「線香と花……買わないとな」
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