3-P2
「な、何言って……」
もう一度、今度は反対の頬を引っ叩く。それでも、まだ理解できずに人間の言葉を話そうとしたので、わたしは理解できるまで何度も叩いた。
わたしの手が痛くなり、ムツミの頬が赤く腫れだした頃になって、ようやく「わんっわんっ」と鳴いてくれた。涙を流しながら、破れかぶれといった様子だった。
嬉しくなって、わたしは口角を釣り上げながらムツミの頭を撫でる。
背徳感と呼ぶのか、独占欲と呼ぶのか、そんな感情は初めてだったのでどう呼称すれば良いのか分からなかった。ただ、背中のあたりが震えて、体の奥からゾクゾクする何かが溢れ出してきた。
それから、数日。この家でムツミを犬として飼っている。
当然、お母さんたちからは止められた。でも、暴れて家の物をいくつか壊したら、飼い犬の死でおかしくなってしまい癇癪を起こす手のつけられない娘のカウンセリングのためと、お母さんたちとムツミの間で話をつけたらしい。
ムツミは今でこそ従順に言うことを聞いてくれるが、はじめは躾をするのにすごく手こずった。わたしはまだ幼かったから覚えてもいないが、大人しく聞き分けの良かったアズキも、家に来た頃はそうだったらしい。おそらく、どの犬でも同じようなものなのだろう。
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