第161話 ラストバトル

そしてリポップした!!!


感覚的にはほぼ時間は経過していないはずだ。

 

「戻って来たわね」

そんな俺に雪乃の声がかかる。

 

周囲を見ると、地形が変わり、かろうじて陸地がある程度まで削られていた……。

そして横たわるゲシャやオア。なんとか膝に手をついて立っている雪乃。


少し離れて詩織やフラン、レファ、ロゼリア、それに早紀も。皇ちゃんどこ行った?


それに迷宮神(?)も?



どれだけ激しい戦闘をしたんだよ。

きっと1時間も経ってないよな?


:リッチ様~~~!!!!!!

:良かった、戻って来たわ♡


「「「ふ~ん、なにをしてきたのかな?」」」

一方でデバウラーは3体……。


倍数的に増えたとすると、1体か5体は倒したってことかな?

力は効きづらいはずなのにさすが神様達だな。


「ふん。喰らえ。"救世"」

「「「なにっ?……」」」


イメージは全てを薙ぎ払う気高き神。

オア……は違う。ド淫乱暴虐女神なんかイメージしたら"救世"が"救性"になっちまう。

ゲシャは神だけど、まともに戦ってるの見たことないし。

雪乃もそうだ。


つまりイメージは作り上げるしかない。

10万年前の異世界での説明神様はそれっぽかったけど、ぽいだけで無慈悲なる神って感じじゃなかった。


出会った時のロデアガルド様については出会ったこと自体が衝撃的すぎてあんまり覚えてない。

つまり創作だ。


う~ん。雪乃の存在感はやっぱりダントツで、神様なんだなぁってわかる。

これがベースだ。


無慈悲な攻撃も、俺への腹パンは常に無慈悲だった。


「ぐはぁ……」

その攻撃を受けたデバウラーは右半身を吹き飛ばしながら倒れた。間違いなく効いてる。

 


「塔弥くん?(怒)」

そんな俺を見て雪乃がこめかみをピクピクさせている。今のこの理不尽な怒りもそれっぽい。まさに無慈悲。


「覚エテテネ?」

俺はイメージを構築し続ける。些事を気にしている余裕はないんだ。思考が垂れ流れてるかもしれないが許してほしい雪乃。


「フーン……都合イイネ……」

あとで何回でも怒りは受け止めるから。こうやって気を逸らすように思考を進めてないと震える心に埋め尽くされてしまいそうなんだ。


「「「どうやってそんな力を?」」」

「悪いが力自体はもともと持っていたものだ……いや、皇ちゃんや夢乃が集めてくれたもの。フランが背中を押してくれたもの。詩織とレファが支えてくれたものだ」

「「「なにを!?」」」


:リッチ様戻ってきたと思ったら急に竜司が焦ってて草

:いけぇ、リッチ様!!!

:竜司……許すまじ……しおりんもレファたんもゆめのんも早紀様も神様達も……ついでに会長も無慈悲にボコりやがって……

:絶対に許せない


それは許せないよな。


「よくも皇ちゃんを……」

「「「くっ……なぜ? どうして逃げれない!?」」」

「逃がすわけがないわよね。私が何か忘れたの?」

「「「なにを!?!?」」」

「私は"守"。守るだけじゃなくて、守護結界とかも得意なの……というか私が祖なのよ。動きを封じるのは得意だわ」

「「「くぅ……」」」


サンキューな、雪乃。


「ぶっ飛ばすのはアレを倒した後にしてあげるから、とりあえず頑張って」

アレ? これ頑張っていいやつ? 自爆攻撃とかにしたら逃げられるかな? 逃げた方がいいかな???


「真面目にやりなさい!」

チョップされた。なんたる無慈悲。


しかし、そんな雪乃の言動の全ては俺のイメージに溶け込んでいく。


同時に流れてくる記憶。

これは子供の頃のだな……。







『塔弥くん、本当に本が好きなのね』

『あぁ。没頭していると嫌なことを忘れられるしね』

『むぅ……私を置いてっちゃダメだよ?』

『じゃぁ、一緒に読もう』

『うん』

『と言ってもすぐに寝ちゃうよね、雪乃は』

『むぅ』

『あはは』

 

昔、俺は物語が好きだった。子供の頃の話だ。

お金がなくて本は買えなかったけど、学校や公民館や地域の図書館で借りれるだけ借りて読みまくってた時があった。


そんな中にも神たるものの描写はいっぱいあった。

無慈悲で、無関心で、人とは違う理に縛られた神。逆に滅茶苦茶人間的な俗物的な神様もいたけどな。でも、総じて強力だった。そして敵を滅ぼしていた。もしくは敵を滅ぼす勇者を讃え、守りを与えていた。全ては目的を果たすために。


そうだ、目的だ。


雪乃と一緒にいっぱい読んだっけ。あいつはあんまり本は好きじゃなかったからいつも寝てたけどな。

その寝顔を眺めていた。可愛い寝顔。


雪乃が起きたときに可愛いっていったら真っ赤になって腹パンされたな。

あれが人生初の腹パンで、当然悶絶した。


無慈悲だ……。



「イメージもばっちりだ」

「釈然としないけど? 引っ張りすぎじゃない? ねぇ?」

「「「くっ……」」」

「そろそろ撃っていいかな?」

「さっさとやりなさいよ」



「わかった」

俺はまっすぐにデバウラーを見つめて正対する。

そして周囲の魔力を全て取り込み、自分の魔力も絞り切る勢いで放出してイメージに放り込む。

そして指向性を定める。

目的は目の前のデバウラーを正真正銘消滅させて、この世界を、そして異世界も元に戻すことだ。


 

「「「やっ……やめろ……いいのか? 僕の中にはまだあの迷宮神の力が残っているぞ? 僕を消したらもう二度と救えないんだぞ?」」」

「嘘ね。気にせずやりなさい」

「あぁ」


「「「くそーーーーーー」」」







 

「"救世神激"」

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