第160話 救世の力

「えぇと……」

どう考えても横暴だとしか思えないが、俺は雪乃に腹をぶち抜かれて死んだ。酷くね? デバウラーと戦ってる最中だったのに、戦力削るとかどういうことだよ!?


「あぁ、来たな。早いな」

そしてふと気付いた俺の目の前には説明神様がいたんだ……早いってどういうことだ?


「私が呼んだんだが、こんなに速攻でやってくるとは思って無くてな」

「なるほど」

もしかして雪乃になにか伝えたんだろうか?

それでロゼリアのように俺を一度殺してここに飛ばしてくれたんだろうか?

そうだよな。

そうであってくれ。


「"断罪"が効かない場合の対処を見つけたからな。伝えようと思ったんだ」

「おぉ!」

タイミングばっちりだな。ちょうど意思を持ったデバウラーに効かなくて困ってたんだ。

 

「ロデアガルド様からそういえばたまに変なデバウラーがいるから気を付けるように、と言われてな。詳しく聞いてみたら、今までに何度か"断罪"が効かないデバウラーに遭遇したことがあるらしい。そんな時には"救世神"の力を使っていると聞いたから、君にも教えてやろうと思ったんだ」

「救世神? ロデアガルド様とはじめて出会ったときに『我は責任を取って今回限りの救世神となり、この世界を消し去ることで救済を成すのじゃ』とか言ってたけど、その救世神?」

「あぁそうだな。そうか、それで出会ったのだったな」

あとはあの頭の弱そうな女神様が『救世神はいやぁああぁああ!!!』とか言ってなかっただろうか???


そんなに嫌な仕事なのか?

救世をもたらす、なんてちょっとカッコいいし、まさに神様って感じのイメージなんだが。


「嫌だな。私も二度とやりたくない」

気を抜いてしまったのか、考えが駄々もれだったらしい。

しかし、そんなに顔をしかめるほど嫌なんだ……。

 

「それはまたどうして? まさしく神様っぽいし、やりがいがありそうだけど」

「ない」

グワッと目を見開いて、バシッと言い切られた。そんなに嫌がるほどないんだ。


「救われる可能性がある世界なら、通常は転生者を送り込むんだよ。それで世界を立て直すんだ。そういう段階を過ぎて、もう手の打ちようがなくなって、消し去るしかなくなった世界に送られるのが救世神だ。君が出会った時のロデアガルド様の言葉通り、世界を消し去ることで救済を成すんだ」

「えっ……」

それはあれか?

救う対象は敵に滅ぼされたりしていなくなったからってことか? それだと救っても誰からも感謝されないよな? ただ悪を滅ぼすだけ? 後には何も残らない?

それならやりがいもくそもないか。


物語とかだと救世の後には素晴らしい世界が待ってるはずだけど……


「待っているさ。全く別の生命体が暮らす新しい光輝く未来がな」

「そういうことか。消し去って、1からやり直すのか」

「そうだ。もしくはそのリソースを使って世界自体を作り直すな」

それはきつい。ロデアガルド様っていう神様は確固たるものを持ってそうだけど、あのアホ女神様には務まりそうにないな。


「私でもダメだった。来る日も来る日も無反応か死に絶えた世界に送りこまれて掃除するだけだった。望んでいたはずだったんだが、なったあとは早く説明神に戻してほしいと思ったよ」

……。


「まぁそれはどうでもいい。要するにその救世神が使う力を応用すれば、デバウラーにもダメージを与えられるということだ。効果はロデアガルド様が確認済みで、中には"断罪"が効かないデバウラーもいたけど、一緒に消し去れたと言っておられたから間違いない」

「なるほど。それでどうすればいいんだ?」



「君はモンスターで、魔法の使い方はどうやってる?」

「えっと……効果をイメージして、必要な魔力を投入して、魔法を形成して、放っているな」

「うんうん。それでいい。神だと思うと同時に発動するから、説明するのが難しいんだ。実際あのアホな後輩はいまだに力の使い方がへたくそだ」

「なるほど」


そこから説明神様の説明を受ける。

最も重要なのはイメージだとのこと。


救世の力と言うだけでは曖昧でよくわからないが、もう率直に"破滅"させる力らしい。

目につくすべてを消し去るんだからそうなんだろうけど、なんでそれで"救世"なんだよ。


まぁ、きっと世界を消滅させて新しく作るから救済だろ? っていわれるだけだろうけども。


この全てを滅ぼすと言うイメージは、例えば魑魅魍魎が見渡す限りを壊し尽くすような"滅ぼす"ではなく、神が舞い降りて無慈悲な一撃を叩きこむイメージらしい。

やってみたら即発動した。


この場所は必要なことを想像したり、言葉として発したりしやすくなっているからやりやすいはずだと踏んで読んでくれたらしい。

口頭で伝えた場合に地球上では実現できないかもしれないからって。


だから俺と雪乃やオアの会話に割り込んできて、そして雪乃に話をつけて俺をここに飛ばしたらしい。


だから”死んで来い"だったわけだね。

てっきり女の敵認定されて雪乃に愛想をつかされたのかと一瞬思ったが、やはりそうではないらしくて良かった。


これで安心してリポップできる。

もし怒ってたとしても、ぶっ飛ばされる回数からちゃんと1回引いてもらおう。絶対に。

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