第153話 神白なる刃
結果的に参加した探索者の数は72,415,624人……。
「良かったね皇一。ランキング上位半分には入ってたっぽいわ。覚えてないけど」
「うるせぇよ!」
朗らかに会話しているが、すでに太平洋の島に上陸している。この場にいたモンスターはすでに早紀と彼女の召喚する守護兵が無双した。そうやって踏み固めた大地に上位の探索者が布陣している。
漂っている祈りの力。
参加表明した全世界の探索者が湊皇一と白鳥夢乃の軍団系スキルの最高位である"軍神"の光に包まれる。
そしてそこから"杯"が魔力を吸い出し、この場に集めている。
迷宮神自身に動きはない。
「すげぇ魔力だな」
「……そうね」
この場には聖具を持った探索者たちが並んでいて、その中心にフランが"剣"を、夢乃が"杯"を構えている。
詩織、レファ、ロゼリア、そして俺はその背後で待機している。
ちなみに"珍"は海堂に預けた。
誰も持ちたがらないからくじ引きにした結果だから悪く思うなよ。
だからこっち向くな海堂。集中して聖具を構えてろ。
写真は撮っておいたから、もしすべてがうまく行ったら教科書にでも乗るんじゃないか?
世界を救った探索者たちとか言って。
その写真で"珍"を持ってるのが未来永劫残るとかウケる。やっぱ持ってるな海堂!
紬も爆笑してるから問題ないよな?
かなりの時間をかけて魔力を貯めていく。
「本当に……これで……解放されるんだろうな……」
「あぁ。嘘は言わない。むしろ失敗したらみんな仲良く破滅へGoだ」
「……わかった……うぷっ……」
その間に、引っ張って来たクオノリアにも魔力を吐き出させる。
魔力を貯め込む性質があるこいつに魔力を預け、リポップするのを俺とロゼリアで何回かやって、パンパンになるまでにため込ませている。
白き神のお守りまで含めて、俺とロゼリアを7回もリポップさせるとか、こいつ結構とんでもないよな。
文字通り生死をかけた作戦を一緒にやっているからか、なんか仲良くなったし、戦友的な感覚まである。
今もロゼリアが背中を支えてやって……いや、持ち上げて運んでる感じだな。
「……うぐ……」
そしてそのまま後ろから腕を突き刺し、その瞬間貯め込んでいた魔力が溢れ出す。
容赦ないなロゼリア……。
その魔力は全て"杯"に取り込まれて行く。
責任重大だな。
絶対に失敗できない。
そうしているうちに空からの魔力の流れが弱まる。
「ほぼすべて吸収したようだな」
「はい、お父さん。では次の段階です。みなさん、聖具を掲げてください」
「ん? 今からなのか?」
「えっと……」
「「「くくく……」」」
なぜ今までこれを持たされて周りに立たされてたんだと言う疑問で脳が満たされてしまったらしい海堂に、みな笑いが堪えられなくなっている。やめろ海堂。こっち向くな。
「おい……」
「では行きます。"聖具共鳴"」
夢乃のその言葉によって全ての聖具が光り始める。
あの光は魔力だ。
聖具自身がまるで溶け出すかのような強い光が"杯"に向かって流れ、集約されて"剣"に向かう。
同時に持っていた者の魔力も吸収しているようで、みなへたり込む。
『ふむ……何をするつもりか眺めていたが、なかなかの魔力量だ』
突然響き渡る声。
これは迷宮神か?
『そうだ。我が迷宮を統べる神だ。面白き者よ。再び我のもとに来たのだな』
「あぁ。望み通り、お前を倒す」
『正統な力の行使による消滅こそが望みだ。しかし振るうのはその女か。本当にそれで大丈夫か? 貴様が振るうべきではないのか?』
「……」
なんの会話だ? なにが目的だ? いや、これはデバウラーか。もしかしてこの力を知っているのか? 知ってるだろうな。過去に何度となく振るわれてきた力だ。デバウラー自体を神から切り離すために。だとしたら迷宮神を騙って言葉を放っているだけだ。こちらを動揺させるために。作戦を失敗させるために。
「フラン、気にするな。お前はできる」
「あぁ。あれの本心には聞こえない。あれの怒りも感じない。ならこれが正しい道だということだ」
「わかるのか?」
フランは完全に覚悟を決めた目を剣を構えている。その姿に一切の乱れはない。
「夢で見たんだ。ジュラーディスが仕向けた時空を司る力に対しては迷宮神は怒っていた。だからそれを発した女を喰らった。過去に戻って迷宮神を生まれたことから消す力だったからだ。それをやってしまうと、迷宮神はこんな状態になってまで助けた何かを助けることができなくなる。だから消したんだ。だから怒ったんだ」
「なるほど……白き神の古き場所か……」
「もしくはそこにいたはずの大切ななにか」
そう言いながら俺の方をちらりと見るフラン。
"守"という名の神。その神のことをか?
「それをジュラーディスは勘違いして白き力自体を封じたことが間違いだ。私はこの力を振るう」
「あぁ。頼む」
「あとは任せた」
「わかった」
もう言うことはない。
世界の全てを乗せた"剣"。こいつも前だけを見つめているだろう。
そうしてフランはただゆったりと"剣"を振った。
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