第144話 リッチの覚悟②
「どういうことだ?」
俺は出現した"剣"に驚く。
なんで未来よりも明らかに強そうな魔力を放ってるんだ?
『あれ以降、"剣"を使う必要がなかったからな。いざという時のファナやその子孫の守りのために、お前がファナに与えた指輪の中に入れておいたんだ。ファナはすぐ"剣"をなくすから』
「あいつ、バカだもんな」
「そのバカがご先祖様だと言う事実にそこはかとない悲しさを感じる……」
寂しそうな目をするレスフィーネに謝る。
いや、こんなに理性的なわがままボディの娘さんがあいつの血から誕生することに驚きを禁じ得ない。
もちろんアルトノルンとかも子孫ってことだろうから、いろんな血が混じったんだろうなと思うが。
『それでせっかくだからわらわの力も入れておいた。長い年月を経て"剣"が力を貯められるように』
なるほど。それでこんなことになってるのか。
つまり、歴史を変えちまったのかな?
いや、そもそもあの時作られなかったら"剣"は存在しないから、未来を変えたわけじゃないのか?
ならなんで"剣"は弱くなってたんだ???
『お前が生まれてくる未来までの間に何があったのかはわからんが、力を注げばそうなるってのはわかったか?』
「あぁ。助かる。俺が知ってるよりだいぶ強いから、これなら迷宮神に届くかもしれない」
むしろ、さらに力を込めればもっと強くなるのかな?
『そのお守り。その力を注げばいい。それはわらわと同じ白き神の力だ。それと親和性高く作ったからな』
そうだったのか。
ようやくヒントのようなものを得ることができた。
なんでこの時代に来たのかわからないが、来てよかった。
「そういえばゲシャはどうしたんだ?」
『今は寝てる。休戦中なんだ』
その休戦っていうのがどれくらいの期間なのかわかんないけど、オアとゲシャは相変わらずらしい。
「助かったよ、オア。それにレスフィーネ」
『うむ。けったいな運命を抱えているようだが、白き神の力を信じていくがいい』
「私はご先祖様の恩を少しでも返せたなら嬉しい。はじまりの戦士殿の役に立てたなら良かった」
役に立ったさ。
間違いなくな。
この方法で"剣"を強化できるなら、何度も死に戻りしてお守を"剣"に喰わせまくればよさそうだ。
『では、幸運を祈る。我が同胞が救われますように』
オアが珍しく神妙な顔を向けてくるが、白き神のことだからだろうか。
こんな自由奔放な神様ですら応援してくれるんだから、俺も頑張らないとな。
もうモンスターだからとか言うつもりはない。
俺は可能な限りの全ての仲間たちと協力して迷宮神を倒す。
そうして俺はオアやレスフィーネと別れの時間を迎えた。
『ぎゃ~~~~』
前回と同じようにやってきたペガサス(?)は、前回と同じように五神を蹴飛ばした。
前回と同じように五神はばらばらになって消えて行った。
なんだったんだ???
俺はまたペガサス(?)にまたがり、説明神様のところに戻った。
「なるほどな。白き神の力を与えて強化したということだったのか」
「あぁ」
俺は見聞きしてきたことを説明神様に伝える。
どうでもいいけど、会話はしれっとため口だけどいいよな?
気付いたらこうなってて、いつ変えたか覚えてないけど、相変わらず真面目な表情の説明神様は特に怒ったりしないしな。
「では方策は立ったか?」
ありがたかったな。俺だけだと何をしていいのかさっぱりだったけど、こうして協力してもらったおかげで光が見えた。
現実世界に戻って"剣"を強化して、迷宮神からデバウラーを切り離す。
それからデバウラーを消し去る。これだな。
まぁ、その間、迷宮神をどうするかってのはあるが、まさかゲシャみたいに素でも襲い掛かってくるってことはないと信じたい。
それもやってみないとわかんないしな。
探るためにフランから"剣"を借りてアタックしてみるのもいいしな。
俺はモンスターだから死に戻れる。
ジュラーディスのやつだって何度も死に戻りしながら打倒迷宮神を目指したことだってあったらしいから、俺がやって変な怒りをかうこともないだろう。
ロゼリアもいるから、協力してもらうのもありだな。
っていうか、そう言えば怒ってそうだな。
迷宮神に挑むなら連れて行ってもよかったわけだし……。
うん、誤魔化そう。
姫乃と夢乃が上手く説明してくれると信じよう。
頼むぜ娘たち。
ついでに詩織も治まってますように……。
「説明神様、感謝します」
お礼を言う時くらいは敬語だよなやっぱり。
ロデアガルド様は関われないけど自分ならって言って率先して手伝ってくれたわけだから、感謝してもし過ぎることはない。
表情筋が全く仕事を放棄している説明神様だが、その慈悲深さは俺が出会った中でピカ一だ。
「うむ。頑張ってこい」
そんな説明神様が力強く背中を押してくれる。
そして説明神様とも別れ、俺は現実世界に戻って来た。
ここは……どこだ?……なんてことはもうしない。
またまた行く先が違って、今度は地球の10万年前の世界だ~なんてことはなかった。
記憶にある景色。
そこは新宿だった。
だが、おかしい。
なんでこんなところにポップしてんだ?
ポップじゃないのか?
リポップは異世界の10万年前で、今回は移動しただけなのかな?
よくわからんが、まぁ経緯はどうでもいい。
今大事なのは、どう見ても新宿なのに、モンスターが歩き回ってることだよな?
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