第143話 "剣"

レスフィーネとの情報交換は深夜におよび、旦那さんが軽食と酒を出すよう手配してくれた。

良い旦那さんだな。


歴代魔王たちもこんな旦那を持つべきだったんだと思うぞ?

特にイルデなんちゃらは。


ん? アルトノルン?

アルトノルンは俺っていう素晴らしい男を選んだんだから問題ないだろ?



「なるほど。その"剣"が神を貪る者と戦う上で必要なわけですな」

「あぁ。俺は魂を切り裂くっていう効果だと思ってたんだけど、ゲシャとの戦いではゲシャとデバウラーを切り離してたんだ。それに、説明神様が言うにはあの原始の時代よりも強化されていた時代があるはずだってことで探ってるんだ」

10万年前は原始の時代、そこから3万年後の今は今、俺が生まれた時代は未来だな。

こんなわかりづらい話を真面目な顔をして聞いてくれるレスフィーネとその旦那さん。


「私は存じ上げぬが、今しがたやって来た彼らになら何かわかるかもしれませんな」

「やっぱりなんか来たよな? 気のせいってことにしたかったんだが」

「なにかご存じなのか?」

めんどくさい匂いしか感じない。

具体的に言うと、何時間……いや、何日でも殴り合いそうなバカ……。



『はぁ~っはっはっは。なんかよくわからんが、戦うべき相手を感じるぜぇ!!!』

「……」

どう見ても"奇怪な獣"だった。



『わらわもよくわかりませぬが、なぜかこう愛おしくてぎゅっとしていたいわ~♡』

「……」

間違いなく"不浄の化身"だ。

レファと近くまで来たときにはスルーしたのに、なんでここで会うんだよ……。

過去なのに執着してるとか意味わからんからな!?



『飴……食べる?』

「いらん」

くっそマズい飴だろ?

いらんいらん。

っていうか、もう加護持ってるからいらんわ!



『よくわからないけど、親近感……』

「俺もだ。きっと俺たちは友達だな」

『とっ、友達?こんな僕が?』

「もちろんだ。たぶん未来でだと思うが、一緒に飯も食ったし、喧嘩もしたし、鬼ごっこもしただろ?なっ」

『……♡』

相変わらずチョロい。



『なんだ? お前ら知り合いなのか? なんでこんな強そうなやつのことを黙っていたんだ。ほら、戦え!』

「……」

"見えない竜"とはあんまり会ったことがないんだが、こんな性格だったか?

正直、これだと"奇怪な獣"とまるかぶりじゃねーか。


「五神勢ぞろいとは。はじまりの戦士殿は大人気だな」

「まったく嬉しくないんだが……」

『さぁ、やるぞ。話はそれからだ』

『貴様と同意見なのは心外だが、仕方ないな。さぁ、やろう』

どうでもいいから、お前らで喧嘩してくればいいんじゃないか?

俺を巻き込むな。


っていうか、こいつらやっぱり五神だよな。

ゲシャの残骸から生まれて来た。


レスフィーネも知ってるくらい、この時代で有名になってるのか。



まぁ、仕方がないから戦った。

"不浄の化身"はくねくねしながら見てるだけだったし、"彷徨う影"は『友達♪』とか言いながら傍観してたし、"封印された思念"は飴を口に入れてこようとしただけで、戦ったのは"見えない竜"と"奇怪な獣"だけだったけど、気付いたら五神全員ボコってた。


(∀`*ゞ)テヘッ

 

まぁ別にいいよな?


『良くない!』


まぁいい。


『良くないのじゃ!』


あぁん?

まだやんのか?


面倒だけど殺気を込めて睨むと、神妙な顔をして固まる五神。


そしてなんと……



『くそっ、こうなったら合体だ!』

『えぇ、友達なんだよ?』

『うるさい。そんなわけあるか!』

『めんどう……』

『わらわが抱きしめてやるの~』


合体しやがった。


『ふふふ。いざ勝負!』

殴りかかってくる五神。


あっ、一応説明しておくが、ここはレスフィーネの城の中じゃなくて、五神が作り出した不思議空間だ。

勝負しろっていうから、魔族たちに迷惑をかけないならって条件を出した結果だ。


そんな場所だから全力で戦える。



そう、全力で。




とりあえず泣いて謝るまでフルボッコにしておいた。


『きゃ~~♡』


腐臭漂う自称女だけは嬉しそうだったな……。






「で? なにがしたかったんだ?」

『くっ、強すぎるぞ……』

「で?」

『すまん。力比べをしないといけない衝動にかられて』

「……」

『いや、本当だ。なんかこう、戦え~!!! みたいな感じでな』


こいつらに聞いた俺がバカだったのかもしれない。

もともと意味不明なやつらだし、元になったのもゲシャだしな。


『懐かしい感じがしたが、やはりお前だったか』

五神と遊んでたらなんとオアが顔を出した。


お前、いくら異空間だからってどこから出て来てんだよ。


「久しぶりだな、オア。俺の感覚的には数日ぶりだが……」

『どうして戻ってきたんだ? 長について何かわかったのか?』

「そこはなにもわからないんだが、"剣"を見たくなってな」

『"剣"? あぁ、あの時作ったやつか』

オアは相変わらずオアだった。

次元の切れ目みたいなのから出てくるのはいいんだが、その切れ目を俺の股間の前に作るのやめれ。



「これはオア神とお見受けする」

レスフィーネと旦那さんは平伏している。


『ん? あぁ、ファナの子孫か。元気そうだな』

「はい。国も我々もお陰様で楽しく暮らしております」

『うむ。良かったの。して、指輪は持っておるか?』

「はい。こちらに」

そう言ってレスフィーネが取り出したのは俺がファナにあげた指輪……かな?

なんかちょっと装飾が違う気もするが。


『うむ。少し貸してくれ』

「はい。どうぞ」

『出てこい。あれからずいぶん経って、力も満ちたじゃろう』

オアが指輪に向かって話しかけると、指輪から白い光が広がった。



その光が消えると、"剣"が浮いていた。





***

ここまでお読みいただきありがとうございます!

物凄く今さらですが、この作品で応募していたカドカワBOOKSファンタジー長編コンテストの中間選考通ってました。

みなさま、応援いただきありがとうございます!

中間選考の発表は10/23だったのですが……あとがきに書くの遅っ汗汗


ちなみに本選考の結果は12月中旬らしいです。中間選考は数百作品が通過していますし、気長に待とうと思います。


なお、もうそろそろカクヨムコン10ですね。

カドカワBOOKSファンタジー長編コンテストだめだったら、カクヨムコンにもリッチ様で応募したいと思っていましたが、選考中だと無理なんでしょうか?

初心者的にはよくわかりませんが、まぁなるようになりますかね?


リッチ様はこれから佳境に入って行きますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

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