第138話 崩れ落ちる……

「貴様の世界を眺めよ。起きている力を見つめるのだ。そこにヒントがある。くれぐれも作用を見落とすな」

えっと、どういうことだ?

ロデアガルド様が去り際に放った言葉の意味が理解できない。


作用を見落とすなってどういうことだ?

そもそも俺の世界で起きている力ってなんだ?

まさか何かあったのか?


相変わらず俺のスマホはつながらないが、説明神様の世界と言う意味不明な場所にいるんだから仕方がない。

しかし迷宮神に挑んで飛ばされてから、地球ではどれくらい時間が経ったんだろう。

10万年前に飛んでたのはさすがにノーカンだよな?


もし地球時間で10万年経ってたら、ほぼ全員が地面の中か俺の仲間入りだろう。

目の前の説明神様が特に焦ってないからそんなことはないだろうけど。

いや、驚いた顔はしてるな。何にだ?


「まさかあのアホを使って助言を頂けるとは」

「ん?」

どういうことだ?

あのアホを使って?


「ロデアガルド様のクラスの神になると、我々が関与している世界の生者に接触するのはリスクが大きいのだ。神の格の問題だがな。例え敵がデバウラーだとしても、単独ではなく何らかの神格だ。もし処理に失敗した場合、下手に手を出した……つまり干渉したとして問題視する奴が出てくるかもしれない」

「それは神様達の中で、ということか?」

「あぁ、そうだ。無数に存在する神々にも人間で言う部族とか派閥のようなものがあってな」

なるほど。

そう言えば、ロデアガルド様が直接関与するのはまずくて、説明神様が手を貸すのはありだと言ってたな。


にもかかわらず、あのアホを泳がせて捕まえに来る際に偶然を装って接点を持ち、助言をくれたと言う訳か。

わかりづらい言葉遣いなも、もしかしてそのせいか。


「礼をしたりするな。あくまでも独り言だ」

自然に小さく黙礼をしてしまいかけたが説明神様に止められた。

あくまでも偶然の呟きだから、理解してる方がまずいってことか?

いや、反応することがそもそもまずいのか。

 

「……ややこしい」

「今まさに体験した通り、神にとって時間の経過は絶対ではない。疑念は過去に戻って見聞きしてくればいいのだから、気を付けるにこしたことはない」

「なるほど……」

だが、それなら長がどうなったとか、迷宮神の過去を見てくれば良いんじゃないか?


「考えていることはわかるが、それは無理だ。無理だからこそ、あの名がついているのだ」

「あの名?」

「神を貪る者。それがデバウラーだ。神は力である。デバウラーに喰われた神は取り込まれるし、デバウラーが多く存在する空間では神の力は減じられるか、効果を消される。白き神の力なら直接ぶつければダメージは与えられるだろうが、それだけだ。デバウラーが多い場所は覗けないし、遡れないのだ」

そうだったのか。

それで長がどうなったのかわからないのか。

迷宮神がなんの神様にデバウラーがとりついたのかわからないのもそのせいか。


そもそも神様でもわからないからこそ、デバウラーが取り憑いていると言えるってことなのかもしれないな。


ふむふむ。


「お前の世界を眺めろと言ったな」

少し時間を置いた後、説明神様は中空を見つめながら話しかけて来た。

もう話していいってことか?

 

「あぁ、確かに。地球の方だろうか」

「そうだろうな。今のお前の所属はそっちの世界だ。映すぞ」

映すのか。また行って来い……というか戻れ、じゃないんだな。


映し出されたのは……これ新宿だな。

俺のダンジョンの周りだ。


しかし不思議な景色だった。

一面、火の海とか、洪水だとか、崩れてるとかじゃない。


多くの人が見える。

車も走ってるし、電車も見えたな。


でも、変だ。


なんでみんな空を見てるんだ???

ただ、それも全員というわけじゃない。

特に気にせず歩いている人もいるし、働いている人もいる。

飯食ってる人もいれば、遊んでる人もいる。


う~ん、わからん。

ただ、世界が崩壊し始めているとかではないらしい。一回戻って話を聞きたい気もするが、戻ったらここに帰ってこれるんだろうか?


「力とはなんだろうな。起きている力……なにか変化している場所はないものか」

説明神様が世界を覗きこみながら考えている。

すると、映像が変わっていく。

流れるように別の街……なんで舞浜?

めっちゃ賑わってるな。


それから海になった。


これはあれか? 太平洋で龍の姿で浮いている迷宮神を見たいのか?

あれ、ただ投影されてるだけだったよな?


と思っていたら、小さくランキングボードが見え……なんで崩れて行ってる?



「あれには強い力がかかっているようだ。間違いなくデバウラーの」


説明神様の声は聞こえているが、映像から目が離せない。

投影されてるだけのはずの龍から何か暗い光が流れ出し、それがランキングボードに向かって伸びている。

その光が当たった部分から、まるで溶け出すかのようにランキングボードが崩れ落ちて行っている。


表示されている1位に……間野塔弥……。



なんでだよ!?

なんで俺の名前なんだよ!?

1位はフランだっただろ?


わからん。

2位はフランだし、3位がレファだと!?


4位が詩織で、5位がロゼリアで、6位が姫乃……。

どういうことだ?


そのランキングボードが崩れていく。


俺たちじゃダメだとか言いたいのか?

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