第137話 一周回ってただいま???
ペガサス? に跨って不思議な光を抜けると、そこは雪国だった……
とかないよな?
どういうことだ?
なんで一面の銀世界?
『ふふ、時空の狭間を通るのはわかっていたから、少し干渉させてもらったわ』
優しい声が聞こえ、懐かしい姿が目に映る。
「雪乃……」
『うん。婚約指輪は返してもらったんだね』
俺の指を見つめて目を細める雪乃は物憂げな表情をしている。
どうやってこんな意味の分からない場所で接触してきているのかはわからない。
『あなたは確実に前に進んでいるわ』
「迷宮神を倒せる気が全くしてないんだが……」
雪乃は俺を肯定してくれているようだが、俺としては進んでいる気がしない。
ゲシャと同じくデバウラーに取り憑かれているのだとしても、どんだけ長い時間? って話だし、そんなのを切り離せる気もしない。
"剣"に死に物狂いで頑張らせるしかないのか?
『今の迷宮神という神の状態がわからないから何とも言えないわ。でも、デバウラーが関わっているのは間違いないわ。特に白き神の力を忌避しているのであれば』
う~ん。きっと情報量が一致してない。
白き神の力を避けているっていのも俺にはよくわからない。そんなことあったかな?
そしてなんで雪乃がそんなことを知っている?
『私は守神。それはもうわかるでしょ?』
「あぁ……やっぱりそうなのか」
真っすぐな視線を向けてくる雪乃。暖かさや懐かしさが薄らいだような気がした。
「あの、長という神が迷宮神なのか?」
『わからないのよ』
ん? わからない?
『長はデバウラーの大群に飲み込まれた。それは間違いないわ。でも、その後どうなったのかはわからない。時間を稼いでくれたのは間違いないから、その間に同胞たちを逃がしたけれど。デバウラーは消えていない。実際、あなたがさっきまでいた世界にも存在していたし、あなたが出会った神々が知っているということは、やつらはまだたくさんいるということよね』
「そうか……」
長というのは雪乃の想い人なんだろうか?
人じゃなくて、神か。なんか悔しい気持ちが湧いて来るけど、それこそ遥か昔の話しだ。
それに長が今まだ存在しているのかどうかもわからない。迷宮神が長なのかもわからない。だったら、まずは目先の脅威である迷宮神を倒すしかない。
なんか一周回って元に戻ったな。
『転生の説明をしてくれる神様を頼るしかないわね。どこかの時代、どこかの世界に何かしらヒントがないか。何かを知っている神が生き残っていないか。それとも何か伝わっていないか。あとは迷宮神自身と話してみるとか?』
「そうだな。手探りで探すしかないもんな」
そんな会話をしていると、また光が見えて来た。聞ける人に聞いて、何もなければまた迷宮神凸だな。
『そろそろ元の場所にもどるのね。私は行くわ。また会いましょ』
「あぁ……」
キスされた。
懐かしい匂いだった。
「お疲れ様。オアとは無事に話せたようだな」
光を抜けた先には転生説明神様がいた。相変わらず真面目な表情で労ってくれるけど、さっきまで会っていたよな?
「むしろ説明神様がいたけどな。オアとは話せたし、デバウラーの倒し方は覚えた」
「ふふふふ。知っている。整理も終わった」
生理? いや、整理か。
そう言えば"やるべきこと"とやらを整理してくれるんだったな。
なぜか一緒に10万年前の世界で濃い体験をしてたから完全に忘れてた。
「ジュラーディスというものの頭を覗いた時の記憶から迷宮神とやらを垣間見たが、特徴としてはほぼ間違いなくデバウラーに取り憑かれている。しかし、ジュラーディスが生きて来た年数を考えるととても信じられない。そのことから、その迷宮神という神はかなり強き神なのだと思う」
強い神様なのは間違いないだろう。ただそこにいるだけで信じられないプレッシャーを感じるし、オアとかゲシャとかとは比べ物にならないくらい迷宮神は強そうだったから。
「整理したと言うよりはロデアガルド様に聞いたと言う方が正しいかもしれないが、やはり何とかしてデバウラーを引きはがし、取り憑かれている神を助け、分離したデバウラーを消すのが正道だ」
俺が10万年前の世界で見聞きしてきた通りだが、まぁそれしかないよな。
「問題はどうやって分離するか、それからどうやって神を助け、どうやってデバウラーを倒すかだな。そんなに長期間とりついていたデバウラーが普通のやつらと同じとは思えない」
結局何も進んでいないような気がする……。
いや、デバウラーに取り憑かれていそうなことがわかったこと、取り憑かれた状態の迷宮神を倒すのは厳しいけどもし分離出来れば可能性はありそうなこと、くらいか?
分離方法……。
"剣"を魔改造すればいいのかな???
「あら? 帰ってきたのね。待ってたわ♡」
まだいたのかアホ女神様……。そしてなぜ俺を待つんだ?
もう不必要なスキルはいらんぞ???
「おい、サボるな! 仕事に戻れ!」
「げっ、もう見つかった。嫌よ。あんな辛い仕事は嫌なのよ! 救世神なんて嫌!」
追いかけて来たロデアガルド様に頭を鷲掴みにされて引きずられて行った。
なんなんだ?
「全く、神が自らの責務を放棄して逃げようとするなど……」
その姿を見てため息をつく説明神様。
しかし、ふっとこちらを見たロデアガルド様が呟く。
「貴様の世界を眺めよ。起きている力を見つめるのだ。そこにヒントがある。くれぐれも作用を見落とすな」
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