第136話 未知の襲来
□ダンジョン協会本部 (湊皇一)
「おい、どうなってる? なんで渡り鳥に交じってモンスターが飛来したんだ?」
「はい。太平洋に昔島があったとされる場所に本当に島が出現して、そこにダンジョンがある可能性があると言う話がアメリカからもたらされていました。今回そのダンジョンでスタンピードが起こった模様でして、出てきたモンスターの中で飛行できるものが飛来した模様です」
「は?」
どういうことだよ。ツッコミどころ満載じゃねーか!?
昔島があったとされる場所ってなんだよ。
ダンジョンがあるならスタンピードが起こったのはわかるが、そもそもそこはどこの国の領土なんだ?
俺たちは手を出していいのか?
しかもモンスターがそこから何百キロ、何千キロと飛んで来たってことか?
それ、鳥以外はいなかったのか?
海は?
魚は大丈夫なのか?
「島の名前は、中ノ鳥島です。かつて日本領とされたものの実際には存在しておらず、周辺の地形からもかつて存在したとも考えられないとされた島です」
「なんで日本領とされたんだ?」
「民間からの報告を、特に調査もせず『後に調査する』としてとりあえず認めたとか」
「おいおい……」
「昔の話ですから」
「そうだな。今考えても仕方がないか。そこでスタンピードが起こって、出てきたモンスターが飛んできたのか。そんなに強くないやつでよかったが……」
「はい。すぐに対処しており、それ以上の被害は出ていません」
「わかった」
不幸中の幸いなのは、特に怪我人などは出なかったことだな。
むしろ、台風かと思うくらい風が強い中で、むしろそれで被害が出そうな状況だ。
スタンピードのことは新宿の事件で広く知られているから、市中にモンスターが出てもそこまでの混乱がなかったから助かった。
通報があって、付近にいた探索者にアラートを出したら無事に倒してくれた。
あとで感謝状でも贈らないといけないな。
しかし、危ない。
実際どれくらいモンスターが外に出たのかわからないし、もしかしたら海中にうじゃうじゃいるかもしれない……。
くそっ。改めてネットを見ると未知の島の話は転がってた。
ダンジョンがあるっぽいと言う話も。
日本からも探索団が出ることになってたはずだけどどうなったんだ?
それは本当に昔日本領とされた島なのか?
それにしても、存在しない場所に島が出現するってなんだよ。
完全にオカルトとかそっち系の話じゃねぇか。
これは現代ダンジョン物だぜ?
主人公のリッチは確かにホラーだけど、なんで幽霊島みたいなのが出てくるんだよ!?
まぁ、そもそもダンジョンなんてものがお話の中のものが飛び出してきた感じだけどな。
「湊会長。アメリカのダンジョン協会からの連絡です」
「何と言ってきた?」
「太平洋の未知の島は日本の領土とされる中ノ鳥島の位置なので、対応を検討して欲しいと言っています。アメリカ側は探索者を向かわせたようです。どうやら大量のモンスターが外に出ており、島の中でひしめいているのと、一部が飛び立ったこと、それから一部が海に入ったことを。衛星画像付きです」
「見せろ!」
「はい!」
そしてモニターに表示されるおびただしい数のモンスター。
新宿で出たのより明らかに多いぞこれ。
そこに見えるモンスターはほんとうにピンキリだ
日本に飛来したような鳥型のモンスターもいれば、ドラゴンみたいなのや、鯱や鯨や魚のようなもの、それにゴーレムとかミノタウロスとか……全く関連性はなさそうな様々なモンスターが映し出されていた。
一部が不鮮明だが、ドラゴンとか飛んで来たらやばい。
これは早紀に頼むしかないか。
協会と、一般の探索者から見繕って行ってもらうか……俺も行くしかないかもしれないな。
育成学校はまだまだだ。
今の時点で未熟な生徒達を連れ出すわけにはいかない。
そんな中、突如として警報が鳴り響いた。
「なんだ?」
俺は警報と合わせて鳴った電話を取る。
相手は早紀だった。
「皇一、今どこ? 外に出れる? 出れるなら空を見て。大変よ!?」
焦った早紀の声というのは初めて聴いたかもしれない。
いつでもどんなことでも淡々としゃべるこいつが珍しい。
しかし嫌な予感しかしない。
空中、見渡す限りドラゴンが浮いてるとか言われたら、俺は全力で地中に逃げるからな?
さっき見せてもらった写真でドラゴンっぽいのはちらほら見えるくらいだったが、後から出て来たとかか?
しかし、外に出た俺は……早紀が何に焦っているのか全く分からなかった。
なにせ見えるのは特に代わり映えのしないいつもの空だ。
いくつか雲があるが、普通に晴れ。
天気予報の通りだ。
これのなにがおかしいんだ?
なにをそんなに焦ってるんだ?
もしかして早紀が見ている空と俺が見ている空が違うのか?
「わかった?」
「なにが?」
早紀の質問の意味が分からない。
「わからないの?」
「だからなにが?」
少しイライラしてしまった。早紀が何を怖がっているのか分からない。
でも、俺と同じく空を見て不思議な顔をしている奴もいる。
なんだ?
何か変なところがあるのか?
しかし、早紀の次の言葉で分かった……。
「雲を見て!」
「雲?……って、おい」
「気付いたわね?」
なぜこれに気付かなかった?
いや、無理だな。
言われないと俺には気付けない。
普段空なんか見ないから。
しかし、言われてみれば凄まじい違和感を感じる。
こんなに風が吹いているんだぞ?
なのに……
「……動いてないな、雲が。一切……」
「そうよ。止まってる。世界中で空が止まったのよ……まるでダンジョンの中みたいに……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます