第134話 戦いの後

その後は特に見せ場もない地味な駆除作戦だったので割愛するが、無事に完勝し、デバウラーは消えた。

この世界は平和になったのだ。


転生までしてきたファナだったが、わずか数時間で人生をかけて達成すべきことが終わったということだな。

よかったな。


あとはこのなにもなさそうな世界で寿命までのんびりしてくれ。

じゃあな……




ってわけには当然いかなかった。


『みんな礼を言う』

ゲシャだったものの中の一つ……あれ、心臓かな?

めちゃくちゃ美人さんな女神様が、生々しい心臓を抱えている姿がちょっと怖い。


それに、なんでお礼を言われてるんだろうか?

あの心臓を喰えばわらわは史上最高の神になるのだ、あっはっは、とかかな?


『そんなわけないだろうが!』

「ぐはぁっ……」

ミスった。ガードするの忘れてた。


『まったく。これはゲシャの核で、これから回復してやれば1万年もすれば蘇るだろう。神なれば問題ない』

なるほど。そういうことか。

一応、お友達は守れたってことだな。いや、救い出せたってことだな。よかったな。

それにしても、戦闘では全くダメージを受けてないのに、オアには殴られたり埋められたり散々なんだが、どう思うかな、この件について?


「つまり、この世界は平和になったって言うことですよね?」

ファナが恐る恐る口を出す。まぁそうだよな。やることなくなったよな。


『別にもともと平和だと思うが、まぁ敵はいなくなったな』

そんなファナにオアは元も子もないことを言う。

確かにいくら凶暴だと言えども、2柱の神様が喧嘩してるだけなら、矮小な生命体としては避難して終わりだ。

実際に生命体はいないらしい。


「それに関してはご心配なく」

「えっ?」

そこに説明神様が口をはさんだ。


「確かにゲシャが倒された今、神を倒すと言う目的は終わった。しかし、この世界を復興させなければならない」

「復興?」

ファナはポカンとしている。

アホ面がなんとなくレファに似てるな。


それにしても、生命もいないのに復興とはどういうことだ?

もしかして……


「私とお前で子供を作って種を増やしていくしかないな」

「はぁ? あんたと? ないないないない。私の好みじゃないのよインテリ眼鏡は」

「転生していく際に抱き着いて離れないほど執着されたのだから、そこまで責任を取ってもらうしかないな」

「ひぇ……」

「まぁ、時間だけはある。お前は魔族だからざっと400年は生きるだろうからな。私もつき合ってやろう」

「ひぇぇえぇぇぇえええええ」


まさかの魔族だった件。ということは魔王の系譜とかになるのかな?

もしくは全ての魔族の祖先ってことか?


アルトノルンやイルデガルドがそういえば魔族の何かの記念日のパーティーで何か言ってた気がするけどこれっぽっちも覚えてないな。

魔族の祖先を救った魔物がいて、それがあったおかげで魔族はずっと魔物と仲良くやって来たとかなんとか。


もしかしてファナと俺のことだろうか???


すまん。全ての魔物たち。

どこからどう繁栄したのか知らないけど、後世で魔族と慣れ合ってるのは俺のせいかもしれない。

まぁ、魔族なんて魔力が漂ってたら生まれてくるから、長い年月の間に自然発生して増えて行ったんだろうな。



それにしても、俺はどうすればいいんだろうか?


ここで説明神様にくっついて400年くらい過ごさないと帰れないのかな?

それとも死ねばリポップする???


う~ん。


「ヴェルトと言ったな。君については明日、迎えが来るらしい」

「明日?」

「あぁ。ファナに落とされて私も魔族として転生してしまったが、神としての資質は残っているし、あの世界の神々からの連絡は受け取れる。遥か未来の私が声を飛ばしてきたから間違いないだろう」

全く理解できないが、なんらかの方法で未来の説明神様が、今の説明神様にメッセージを送ったってことでいいんだろうか。


「うぅ……私も帰りたい。お願いです、ヴェルト様。その……明日、私も連れて行ってください……きゃぁ」

「ダメに決まってるだろう。そもそもどこに還るつもりだ? お前の居場所はここだ」

「しくしくしくしくしくしく」

「嘘泣きしなくてもいい。それに心配するな。なにせ敵がいなくなり、私という同居者がいて、さらには女神であるオアもいるんだ。これからはスローライフできるぞ?」

「嬉しくない! スローライフするにしても、カッコいい王子様とか、姫プしてくれる王子様とか、優しい王子様がいない世界なんて嬉しくないよ!」

どんだけ王子様好きなんだよ。


「バカなことを言ってないで、寝床を作るぞ」

「えぇ、そんなことから自給自足なの!?」

まぁ、原始時代みたいなもんだしな。

恐竜が絶滅した世界に突如現れた人類みたいなもんだよな。


仲間もいないし、道具もない。知識だけでやっていくのは大変だろうけど、説明神様がいるのはむしろ僥倖に思えて来る。


「い~~~~や~~~~~」

まぁ、さすがに可哀そうに思えたから、持っていた指輪とアイテムボックスに入っている食料なんかをあげた。

これだけで2年くらい生活できるだろ?

その間に色々考えるんだな。


まぁ、落ち着けばオアも助けてくれるだろう。

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