第133話 バカの失敗

「しかしきりがない……」

「ゲシャと言う神はかなり浸食されていたらしい」

「これ、もしかして迷宮神にも取り憑いていたりするんでしょうか……」

「可能性はあるだろうな。先ほど聞いた話だと、長様がデバウラーに取り憑かれた結果かもしれないしな。ただ、長様にダンジョンを作るような力があったかどうかはわからないが」

俺は転生説明神様と会話しながらただただ斬り続ける。

俺の魔法だと倒せないのに、剣ではスパスパ切れるのはこの剣が凄いのか、それとも俺の魔法が弱いのか……。


「それにしても、なんで神様は魔法でアレを倒せるんですか? 俺の魔法だとさっぱりなんですが」

「私のこれか? デバウラーと戦うために生み出された魔法だからな。"断罪"だ」

転生説明神様がそう言うと、突然俺の頭の中に何かが流れ込んできた。

これは、知識?


ふむふむ。

デバウラーはエネルギーに取り憑く性質があるため、エネルギーそのものである魔力や、それを変換した通常の魔法では倒せない。

デバウラーのその性質はやつの外殻にあって、エネルギーを吸収する機構が備わっている。それを物理的に破壊してやれば、その内側は魔法が効く。

それで"断罪"ではまず物質化した魔法が外殻を破壊する機構になっているのか。


「"断罪"」

シュワシュワシュワシュワ~~~~


やってみたら、案外あっさりデバウラーが溶けていった。

そこからは魔法と剣でデバウラーを消しまくった。

文字通りの無双。


誰かに見られていたらきゃーステキってなるか、こわっ、ってなるかどっちかだよな。

実際、ぼーっと戦いを見ていたはずのファナがふるふるしてる。


「お前も戦うか? ほら、剣を使え」

「はっ、はい。頑張ります! だから食べないで?」

「なんでだよ。食べないから」

どんな誤解だよ。



3人? がかりでデバウラーを消していく。

そろそろただお空で殴り合ってる神様達もこっちに協力してくれないだろうか。

疲れて来たんだが……。


そこへ何か降って来た。

『フハハハハハハ、ぬかったなゲシャよ! わらわの勝ちだ!』

『ぐあぁぁああぁあぁあああああ』


ちょっと、なにやってんだよ、バカ女神!


「あっ」

「あっ」

「はっ?」

『えっ?』


当然だが、ちょうどよく降って来たゲシャにデバウラーが再び纏わりつく。

窮地のところに自分からやってきた美味しい餌(=エネルギー)だもんな……。


「なにしてんだよ、バカ女神!」

『あわわわわ、ゲシャが』

「いけません、ファナさん。斬撃を!」

「はい! うぉりゃぁああぁぁああああ」


ぺしっ!


「きゃーーーーー」


ずごーーーん!!!!


その場で斬撃を飛ばせばいいだけなのになぜか斬りかかって平手喰らって飛んでったファナ。

焦ったのかな?

地面に打ち付けられ、出来上がったクレーターのなかでピクピクしている。


結構美形なのに、台無しだ。

そもそもさっき説明神様がゲシャをデバウラーと分離した時、その場で剣を振ってるだけなの見てただろ!?


「いけない! 避けて!」

「"断罪”!」

『ぐあぁぁああぁあぁあああああ』

次にゲシャは俺に殴りかかって来たから、デバウラーに使っていた魔法をつい使ってしまった。

当然ダメージを与えているが、これだとゲシャがやばいか?


『なにやってんだゲシャ! これでも喰らえ!!!』

そこに降り注ぐぶっとい光の柱。

えっと、これやばくね?

今までどうやってゲシャが復活してたのか知らないけど、"断罪"で魔法軽減の外皮を破ってたから……。

ってそもそもオアはどうやってダメージを与えていたんだ?

毎回消し飛ばしてたみたいなこと言ってなかったか?


なら、ゲシャは復活するから問題ないのか?

バカ女神のせいで振出しに戻ったけども。


「オアの攻撃は"断罪"と同系統のもののようですね。さすがに闘神なだけあって、センスは素晴らしいですね」

「あれ、闘神なんだ……めっちゃ綺麗な女神様なのに」

「外見だけですね」

そう言いながら真面目な表情を崩さない説明神様は吹っ飛ばされて地面とキスしてるファナのもとへ降りて助け起こし、回復させた。



『ぐぬぬぬ。なんだ、その程度か。今日こそおらがオアを倒すのだ!』

もうちょっと時間があるのかと思ってたら、もうゲシャが復活してきた。

どうやってるんだろうか?

それにさっきまでと姿が違う。

体中に青筋が浮かんでて、筋骨隆々度合いが増している。ボディビルダーみたいな感じになったな。


「あれは、まずいですね」

説明神様が冷静にゲシャを見つめている。

戦闘力がアップしたとかってことか?

魔力的には変わっているように見えないけど。


『むむむ。デバウラーとの結合が強まった? なんで?』

「なんで? じゃねーよ! せっかく上手く分離出来て、あとはデバウラーを倒すだけだったのに!」

『すまん……つい……』

素直に謝っているが、もともとお前が友達を助けたいって言うから助けようとしたのに、お前が窮地に追い込んでどうすんだよ……と言いたかったが、バカ女神ではあるが落ち込んでるっぽいし、言えなかった。


「もう一度分離してデバウラーを倒すしかないですが、分離の際にゲシャも無傷というわけにはいかないでしょうね」

『仕方ない……覚悟はしておく』

ふむ……。



「ファナ、剣を貸してください。行きます。"斬"」

『ぐぅぅぅああぁぁああぁああああぁあああああ』

何度も言って申し訳ないが、記憶にある剣は記憶にあるような斬撃を生み出し、記憶にある敵と同じようにまたまたゲシャを真っ二つにした。

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