第131話 落ちてきた神

「白き神の世界が閉じた理由は?」

『実は知らん』

「……」

『仕方ないだろ? 生まれたばっかりだったんだ。でも、神を貪る者の襲撃を受けたとは聞いている。それを長様が押しとどめた。そこから先がわからない。長様が倒しきれなかったものの時間を稼いでくれて脱出したのかなとは思うが』

ふむふむ。さっきまでと違って真摯な表情になったオア。

そうしていればマジで美しい女神様だからついつい敬語を使った方がいいのかなとか思ってしまうな。


『聞いているのは、神を貪る者はどこからともなく現れ、やつらに取り憑かれるとおかしくなる』

「ゲシャっていうお友達の状態も同じ?」

『ふむ。どうなんだろうな。おかしいのはおかしいが……うーん』

「どうおかしいんだ?」

『弱いんだよ。あいつもっと強かったんだ』

そうして話し出した内容を聞いたが、こいつら頭おかしいんじゃねーか?としか思えなかった。

趣味:殴り合いって感じだな。


先にゲシャってやつがいて、後からオアがやって来たらしい。

そこにいきなり襲い掛かられて応戦して以降、気が合えば殴り合い、合わなければ飯食ったりするだけの生活。


それを数えてもないらしいがひたすら続けていたらしい。

なにやってんだよ。


もともと生命体のいない世界だったらしく、周囲の地形とかも気にせずとかいう頭のおかしさだった。


『わらわもゲシャも若い神ゆえ、エネルギーがあり余っているんだ。かといって一から世界創造するのはめんどいしな。わらわたちにはこれが合っているということだな』

「俺はここの10万年後に産まれる予定なんだけど、それまでに収まるのか? 俺が産まれた世界にはオアとかゲシャって神様のことは聞いたことがないんだが」

『飽きてどっかいったんじゃないか? それかどっちかが勝利を収めて去り、どっちかが形を変えて存在しているとか』

「そう言えば五神とか言うやつらがいたが、どう考えてもお前らより弱いな。チョロいし」

『チョロい? お前、そんなに女の敵みたいなことしてたらいつか刺されるぞ?』

「いや、いきなり襲ってきたのはお前だろ? もし前々世の奥さんにあったら申し開きしないと」

『そっ、それだけはどうか……消される……』

面白いから肩をぽんぽんしておいた。

今はぶつぶつ言いながら固まってしまった。雪乃はそんなに上位の神様だったのか?


あと、俺の力じゃないからしばらく反省させたら先のことを考えないとな。


『何か来るな……』

そろそろ声をかけようと思っていたら、いきなりオアが顔を上げて洞窟の外に向かって歩いて行ったから追いかけた。


「なんだ?」

『見ろ、あの光を。おそらくどこぞやの神の力だ。また送られてきたのだろうか?』

「俺と同じようにか? そう言えばここに送られたけど何をどうすればいいのか分からないし、どうやったら帰れるんだ?」

洞窟の入り口から、赤く光るものが落ちてくるのが見えた。


オアと一緒にそれが落ちた場所に行ってみると……。


「ふむ……あなたは……?」


そこにいたのは男と女が1人ずつ。女の方は気絶しているのかぐったりしていて、男の方が険しい顔をしながらそんな女を見下していた。

そして、その男に見覚えがあった。


「転生説明神様か?」

『なんだそのけったいな呼び名の神は?』

「ふむ……神格の方と、あなたは? 仰る通り私は転生者への説明を生業としている神だが、どこかで会っているでしょうか?」

えぇと、どういうことだ?

もしかして10万年前の説明神様ってことか?


「俺はあなたに10万年前に行って来いと言われてここに送りだされたんだが……」

「なるほど。ということは未来の私か。それでこの女と一緒に落ちてしまったわけか。理解した」

「どういうことだ?」

「私はあなたの言う通り転生説明神だ。あなたはオアだね。同じ白き神を源流に持つものだ。私は転生を司る宮におり、普段はそこで転生していくものに説明を行うことを生業としているので転生説明神だ」

『そうか。ということは、ユーフィール様の?』

「そうだ。その部下のエラヌスだ」

どうも神の世界のつながりや掟でもあるらしく、2柱の神は無言になり、よくわからない礼のようなものを取り、手を合わせている。


「なるほど。世界が滅びかける兆候があったため、この女を転生させたわけだが」

『そんなものを読んでいたのか。だが、そんな能力ということは?』

「えぇ。忌むべきものが入り込んでいるはずです」

うん、全く理解できない……。


1時間くらい経っただろうか?


『ヴェルト。お前の言った通り、ゲシャに神を貪る者がとり憑いているらしい』

やっぱりかよ……。それで、どうすんだよ?


相互理解が終わったようで、2柱の神は俺に説明してくれるっぽい。主に、転生説明神様が。

やっぱりこの神様は真面目だな。

ギャル女神様とは大違いだし、目の前の乱暴女神様とも大違いだ。


「本来この女がこの世界を救うべく転生し、神を貪る者に取り憑かれた神ごと打倒を目指す予定だった。しかし、突然この女の手が動いて私が引っ張られて一緒に落ちてきてしまったんだ。恐らくは送り込まれていた君に関係したのだろう。そして、オアの言うゲシャという神を殺してはいけないと言うことだと思う。何かがこの世界の未来の、または君のために必要なんだろう」

なるほど……





どういうこと?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る