第129話 ざっと10万年くらい前の世界

ということでやってきたわけだが……。

なんだここ?


10万年前って言ってたけど、この世界、世紀末すぎじゃね?

空は曇っていていたる所で雷が走ってるし、見渡す限りたくさん火山があってもくもくと赤黒い煙を吐いている。

マグマが流れ落ちている場所も見える。


なんだ?

核戦争の最中か???


もちろんこの世界に核爆弾なんかないだろうけど……えっと、どういうことだ?


と、放り出されてしばらく呆けるように変わり果てた世界を眺めていた。

いや、変わり果てたわけじゃないな。


こっちが昔なんだから、俺がいた頃はここから復旧したということだろう。


しかしこんな時代があったなんて、聞いたことがない。

俺がいた頃は魔族と人間が生存競争をやっていたが、その前提は豊かな自然だ。


奪い合うものがあったから争っていたんだ。

それがこんなカオスな世界だったら起こらなかっただろう。

やったぜ、マグマが渦巻いてる池と火山をゲットだぜ! とかやっても人間にも魔族にも何もできないだろう。


とりあえず、10万年前でも存在してそうな奴らに話を聞きに行くか。

"オア"っていう神様に会わないといけないしな。


そもそも聞いたことがないんだが……というかこの世界に神様なんていたのか。

そういえばアルトノルンが魔神がどうのこうの言っていた気もするが、わかんないな。


ちょっと操られてそうな気配があったから、お仕置きの最中につながりを切ってやったんだが、慌ててたっけ。

あの神が"オア"だったら最初からマイナスイメージ全開で会うことになるけど大丈夫かな?

こっちの方が昔なら大丈夫だよな?


俺は一度浮かび上がって世界を見渡す。

だいたい地形とかは変わっていないようだ。というか見覚えのある場所だった。

ここはこの世界の俺が産まれた王国があった場所だ。

記憶にない山とかがあるが、間違いない。


しかし、そこで見つかった……。


『んん? まだ我に抗うものか? あえて飛び出してくるとは良い覚悟だ。 喰らえ!!!!』

飛んで来る熱線。速度はともかく威力がとんでもない。

必死に転移で避けた結果、その熱線が山にぶつかって粉砕する。


あぁ、記憶にある通りの地形になったな。

あの頃は緑豊かな国だったのに、ここからどうやってあそこまで平穏を取り戻したんだろうか?


『避けるとは軟弱な。これならどうだ!?』

「ちょっ、待って! タンマ! なんで戦うんだよ!?」

『それは我が我だからだ!』

「意味わからんし」

『とりあえず一回逝っとけ!』

「ふぁっ!?」

飛んできたのは……いや、視覚に捉えられたものはない。避けたのは感覚だけだ。

なんかこう、危機感と絶望感しかない空気が襲ってきた気がしたから、必死に避けた。


なんだこれ。


「そもそも我が我だからとか意味わかんねぇ」

『んん? 汝、我を知らぬのか? 我こそは……。うむ、なにも思い出せぬな。はっはっは。どうでもいいことだ。喰らえ』

「ばっ!?」

なんだよあの光球。あんなの喰らったらこの大陸なくなるだろ!?

ふざけんなよ。

あの王国は一回消し飛んだあと、誰かが元に戻しましたってことなのか?


それでも、さすがに消し飛ばされたら俺も消滅するんじゃないだろうか。

そんな恐怖感から、複数の魔法を叩きこむが、全く威力を散らせない。


『ふはははははは。それに耐えきったら話を聞いてやるくらいしてやっても良いかもしれんという気分になるかもしれんな』

ふざけんなよチクショウ。

それ聞く気ねぇだろうがよ!?


なんとかしろ……なんとか?

ん? なんだこのエネルギーは? また?


俺の首元から漏れ出す白い光。

これは……お守りが戻ってる。


そう言えばこれが装備品扱いで戻るかどうか試すために迷宮神に挑んでリポップしようとしてたんだっけな。

でも、この状況を白い魔力でなんとかできると思えないんだが……。




『ふむ……白き神か? いや、見えるのは明らかに黒いやつだな……。はて? まあいい、ゲジャよ。それを消し飛ばすのは待ってもらおうか』

また何か出て来た。


そして放たれる青白い凄まじい光球。

ちょっと待て、これ、俺を挟み打ってるじゃね~か!


『転移すればよかろう』

「はっ……転移」


可能な限り遠くへ逃げた。

そして振り返った場所でぶつかる2つの光球。


ほっとしていたら爆発の衝撃でふっとばされた。

空でぶつかってんのに、これでも大陸が削り取られそうな威力だな、チクショウ。

明かに神々だけど、なんだよこいつら。


後から出てきた方がまだ話になりそうだけども……。



『くっ、しまったぞ。オアの力は想定外……ぐぉ……』

そしてその光球の衝突は周囲も巻き込んですさまじい爆発を起こし、なんとゲシャと呼ばれたものを飲み込んで行った。



「えっと……?」

『カッコいい♡ キミだれ? どうしてこんなクソみたいな世界にいるの? 私はオア。白き神の世界の中の最高の美少女で、優しくて、美しくて、朗らかで、慈愛に満ちた女神様だよ!?』

1つだけ突っ込ましてもらうと、"美少女"と"美しい"がかぶっているし、"朗らか"な神は別の神を一撃で消し飛ばしたりしないのではないだろうか?

あっ、2つだった。


『そんな、突っ込ましてもらうとか……いやん♡』

くっ、思考すらダメな相手……しかも、説明神様の忠告を聞くならば……どうしろと!?

あっ、しかも、俺、また人間になっている……。



『さぁ、行きましょう。さぁ、生きましょう。さぁ、イキましょう。さぁ!』


……こんなんばっかりやんか!?




どこかでギャル説明神が笑っている気がしたがそんなことを意識の表層に上げたらやばいので耐えた。

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