第125話 文字通り力の限りの挑戦
迷宮神の言葉に答える必要はない。
やってきたのは腕試しのためだ。
ただただ魔力を練り、魔法を紡ぎ、やつにぶつける。
その防御は厚い……どころかカウンターまで返してくる。
初手から一撃で刈り取られそうな攻撃、反撃が続くが、なんとか避けながら魔法を放つ。
しかし当たっても1mmも削れない。
これ……強すぎるだろ?
なにか弱点はないのか?
こんなの人間の探索者が倒せる未来が想像できねぇよ。
ダメもとで試しに殴ってみたが、俺の手が砕けただけだ。
迷わず人間でいう急所に蹴りをぶち込んでみたが、受け止められた。
顔に全力で魔法をぶち込んだが、やつが何かを叫んだと思ったら俺の魔法はかき消えた。
迷宮神があまり積極的には攻撃してこないのをいいことに、俺はあらん限りのカードを切り続けた。
しかしダメージが与えられない。
当たりはするのに……。
<可能性は感じる。精進せよ。いつかまた未来で待つ>
待てよ。俺はまだ奥の手は使ってないぜ?
そう思いながら俺は服を脱いで全裸になる。
全裸って言っても基本骨だからな?
ロゼリアは何を何してたんだとか言わずに、まぁ見ていてくれ。
<攻撃か……それでは届かぬぞ>
やつの頭のような場所が俺に向かってくる。
頭突きか? それとも……って、いてぇな!?
なんとそのまま俺の腕に噛みついて引き千切って行った。
こいつ、モンスターを喰うのかよ!
<足りない。だから行って来い。力をつけてくることを楽しみにしている>
ちょっ、待って!
全裸になった意味を気にしてくれてもいいじゃないか。
それに俺はリポップしたいんだからちゃんと倒して行けよ!
そこからさらにギアを上げ、全力で魔法を叩きつけまくった。
<捨て身か? 意味は分からんが何かあるのだろう。期待しておるぞ!>
この服の重さは1トンだ!とかいうことでは決してない。
これは実験だ。
そらよっ!
<???>
喰らえ我が全力の魔力放出を。
<なかなかの威力のようだが喰らいはしない>
「▼※□●(スイッチ)」
<ん?>
服の場所と自分を入れ替える。
ようは発射点の変更だな。
無事に着弾した。
<柔軟だ。やるではないか。しかし足りぬ>
それはわかってる。
要するにダメージを与えられるのかを確かめたかったんだ。
仮にそれが全魔力を一度に放出するレベルの攻撃だったとしても、無傷でしたというのと、ダメージを与えていました、では全く違う。
後者なら到達点の予想ができるからな。
<いいぞ。興味が湧いた。貴様なら可能性があるかもしれない。今は斬る。またいつか来るが良い。期待しているぞ!!!>
えっ、なにあれ。
予想外にやつの身体の3分の1くらい削れてない?
その部分に何か気持ち悪さを感じる暗い光が蠢いているのは……回復してるのか?
でも回復があるとしても、ダメージは与えられた。
あのレベルの攻撃を普通に打てるようになれば戦いになるかもしれないな。
よしっ、目標達成だ。
そのままやつのカウンター攻撃を受ける。
光り輝いていた時と違って、どす黒い暗い何か。
気持ち悪い……。
だが、お前の言葉の通り必ず俺は帰ってくる。
待っていろよ!
そうして俺は無事、迷宮神に消し飛ばされた。これでリポップするだろう。
……と思っていたのに、ここはどこだ?
次に気付いた時、そこは見渡す限りの赤い空と青黒い大地だった。
地球上には決して存在しない景色だと思う。
出はダンジョンかというと、わからない。
赤い空の下で青い葉の雑草がまばらに生えている青黒い平原なんて、聞いたこともないんだが。
ダンジョンの中でも、異界のような場所があれば有名になっていると思うんだが、こんな場所は聞いたことがない。
しかもスマホがつながらない。
ここはどこだ?
その場で佇んでいても仕方がないので、少し歩いているが、出会うのはモンスターばかり。
今は憤怒の形相をした黄色い牛のようなモンスターと、大きな白い芋虫。
どちらも目は真黒だ。
たいして魔力は感じない。
それなのに凶悪な感じがする。違和感しかない。
こいつらは俺が今まで出会ったことがあるモンスターとは全く違った。
なにせ魔法がほとんど効かない。
効かないだけなら耐性でもあるんだろうか?と思うが、こいつら自身も魔法を使って来ない。
ひたすら突進とかだけだ。
しかも強くない。
パンチ一発で牛の頭部ははじけ飛び、芋虫は汚い液体をまき散らしながら爆散した。
そのまま進んでみたが、それでも結局何も変わらない。ただ、目が黒い変なモンスターが出てくるだけだった。
そうして出会うモンスターを撲殺しながら歩いていると、より一層変な奴が出て来た。
宙に浮く暗い光の球だ。
なんだこれ?
普通に歩いていたら気付かなかったと思う。
じゃあなんで気付いたかというと、こいつは別のモンスターを殺し、それに纏わりつき、取り込んだんだ。
遠目で見えた牛さんたちがこいつが放った光で瞬殺され、飲み込まれて行った。
食事か何かのようなそれを終えたらまたこいつは浮かび上がり、俺の方にやって来た。
同じように取り込まれては困るので応戦するが、戦いづらい。
なにせ魔法を当ててもビクともしない。
魔力があるのかないのか分からないから、ダメージが入っているのかどうかもわからない。
魔力に余裕がある限り攻撃してみようと思ってやっているが、もう2時間攻撃し続けていても何も変わらなくてちょっと飽きて来た。
う~ん、どうするこれ?
試しに殴ってみるとか?
さすがに自分の腕でやるのは怖かったから、転がっていた棒で叩いてみた。
なんと効果があった。
なんでだよ。
物理無双の世界なのかな、ここは?
それは俺とは相性が悪そうだ。
そんな感じでほっつき歩いていると、突然空が白く光った。
まるで雷光のようなそれの中心部に何かいる……。
人間だった頃に見た、黙示録の天使の絵に感じたような神々しさを纏っている。
どういうこと?
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