第124話 迷宮神をたずねて三千里

ということでやってきた。これがあの憎き迷宮神だ。

微妙に時間がかかったぜ……。



どういうことかというと、まずそもそもなの話なんだけど、迷宮神がどこにいるのか分からなくて太平洋で浮いてる龍に突撃したんだ。

だけど、予想通りこれは偽物だった。


かつて太平洋にこいつとランキングボードが登場した時、某大国が水爆とか投げつけたらしいけど、傷すらつかなかったと言っていた。

そんなものに挑むわけだから俺も気合を入れてやって来たわけだが、近付いてみるとよくわかる。

なんにも魔力を感じないことに。


それもそのはず、ランキングボードの上部に投影機があって、それで龍を映し出しているだけだった。

投影機だからどこかには本体がいるんだろうけど、少なくともダンジョンの外であるこんな場所にいるわけじゃないらしい。


まぁ、直接ここに降り立つようなやつはいないだろうからな。

今まで30年以上バレなかったんだろう。


魔力を通して見ないとここにいないなんて思いもしないだろう。

それくらいには精巧な投影だった。


だが、そうなると迷宮神はどこにいるんだ?

投影機を探ってみてもよくわからない。


困ったな。

一度、ジュラーディスがいたあの場所に行ってみるか。

そういえばあそこで迷宮神と遭遇したわけだしな。



って、ん?


なんか見られている気がするな……。


ってそりゃそうか。ここは各国が監視している太平洋のランキングボードの上だ。

そこに平然と立つカッコいい俺……人間から見たらただのリッチだし、そもそも俺って日本以外だと知名度なかったりするんだろうか。


ランキングボードの上に新たな影が……なんと死霊です! 骨型の魔物が突如として現れました! あれはなんだ? きゃー骨よ~、カッコいい~~~~! これは不吉な……いったい世界はどうなってしまうのでしょうか!? みたいなワイドショーのネタになってしまっただろうか?


まぁ、どうでもいいから、皇ちゃん、あとはよろしくな。



続いてやって来たのは新宿ダンジョン200層の部屋だ。

ジュラーディスが復活してたりしたら嫌だなと思いながら入ったが、誰もいなかっ……いやいた。筋骨隆々な悪魔な悪魔が。


「ヴェルト! 貴様、よくも俺の魔力を盗りやがったな!!!」

えっと、どちらさまでしたでしょうか?

お知り合いですか???


俺が叫ぶ悪魔を見つめながら首を傾げると、そいつはより怒り出した。


「まさか忘れたとか言わないよな!? 異世界で俺から魔力を奪っておいて!!!」

そう言えばそんなこともあったような。

魔力を読んでみると、確かに覚えがある。そうか、向こうとこっちでは姿が違うんだったな。


「久しぶりだな、パラノイア。元気か?」

「クオノリアだ! 勝手に精神病にするな!?」

「精神病? お前、病気だったのか? そう言えば妄想を持ってしまう病気だったか。そうだな。俺が魔力を盗んだと思っているのか。可哀そうにな」

哀れんだ視線を向けると、さらに怒る。


「ふざけるな! 妄想ではない! 事実、お前は俺が10年に渡って貯め続けた魔力を持って行っただろう!」

「いや、あの時はイルデグラスの攻撃でお前死んだだろ? 魔力もそのまま霧散するところだったんだから俺が頂いても問題ないはずだ」

「全部覚えてるだろお前~~~!!!」

バレたか。


「しかし、なんでここに?」

「しかもあの時の攻撃はイルデグラスかよ。あいつ、先輩を消し飛ばすとはどういうことだ!」

「嫌われてたんだろ……」

「そんな……俺、彼女の小っちゃい時から面倒見て、前々の魔王から守ったし、いろいろプレゼントあげたり、食事奢ってたんだぜ? なのに忘れられてた? それで魔法で消し飛ばされた? 酷い……」

怒りが急に萎んだと思ったらリアルに落ち込み始めた。

うん……まぁ、それは酷いな。うん。あとでイルデグラスに文句言お。なっ。泣くなよ。

あいつはもともとアルトノルンにしか興味がないし、アルトノルンを奪った俺に怒ってるし、アルトノルンを守れなかった自分を含む四天王に怒ってるからな。




えっと、俺、何しに来たんだっけ?


あぁ、そうだ。迷宮神に会いに来たんだ。

ここで魔力を解放すればやってくるかな???


「ん? やめろヴェルト。こんなところでそんなに魔力を放出したらあれが来る……」


ずご~~~~ん!!!!!


何か巨大なものが落ちて来た。


それはクオノリアを押しつぶし、激しく部屋を揺らす。

俺は潰されたクオノリアの魔力をありがたく吸収しておいた。有効活用ってやつだな。



目の前に落ちてきたのは当然ながらこいつだ。

 

<ようこそ、力を得たものよ>


存在感が巨大すぎて、前回はその姿かたちを知覚することすらできなかった。

しかし今なら輪郭くらいは捕らえられる。


人と変わらない体形。

容姿はわからない。光に覆われている。

魔力は大きすぎて読めない。



やっぱりここは迷宮神につながってる場所だったんだな。

どうりでジュラーディスのジジイがここを拠点にするわけだ。



ということで、冒頭に戻る。


vs迷宮神のスタートだ!!!

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