第117話 フランの里帰り?
□新宿ダンジョン協会 会議室(フラン)
「どういう状況?」
リッチ帰還を報告した相手である日本のダンジョン協会会長の湊皇一……だと思う。
あまりのことに視線を向けることすらできない。
「えっ、ごめん、まさかこんなに……」
「だから言ったのに。自分が喰らったからって、みんなも巻き添えにするなんて酷いよレファ」
「ごめんなさい……」
時間を少しだけ戻そう。
私たちは新宿100層のリッチと戦い、今日も認めてもらってその先に進んでいた。
そこで130層まで探索して帰ってきたところで、リッチを襲うくそジジイと、それに抗うロゼリアさんと出会い、一緒に応戦した結果、リッチが帰還してくそジジイを吹っ飛ばしてなんとかリッチを守れた。
えっと、リッチばっかりで混乱するが、残っていたリッチが何なのかはわからない。それでも異世界に飛ばされていたリッチと詩織、レファが帰って来た。
そのことをチャットを通じて湊会長に報告し、モンスターであるリッチとロゼリアを100層に残して私たちは帰って来た。
その中で加護という話があったから、新宿ダンジョン協会で私たちの探索者証を提出して確認してもらっている間に会議室に入り、詩織たちから異世界の話を聞こうと思ったんだ。
その最中に湊会長からこっちに来ると連絡があった気がする。いや、確かあった。それで来てくれたんだろうけど、もうちょっとタイミングを考えてほしかった。
まさか協会長に吐き倒してる姿を見られるとは……恥ずかしい。
隣で姫乃と夢乃も呻いているが、彼女たちは会長を気にしている余裕もまだないみたいだ。
「”封印された思念"様の欠片である飴を3人に盛ったのはレファです」
「レファ……信じていたのに……逮捕だ」
「なんでよ!3人とも食べるって言ったから渡しただけでしょ!?そりゃあ、まずかったけどすぐ慣れたし問題ないわ、とは答えたけど」
これはちょっとまずかったとかそんなレベルじゃないぞ?
死の危機を感じるレベルで、体の中がぐちゃぐちゃになってしまうようなまずさ。
私の舌、生きてる?味覚障害とかになったら怒るからね?
姫乃の美味しい料理を毎日楽しみにしてるくらいには食事は好きなんだぞ?
コンコン
そのタイミングで会議室のドアがノックされる。
そう。これよ。ノックもなしに入って来た会長も酷いんじゃないか?心の弱い少女だったらお嫁に行けないと嘆いてしまいそうな酷い顔を見られた。
「どうした?」
『会長!?フラン様達に探索者カードの鑑定を頼まれていたので、その結果をお持ちしたのですが』
「なるほど。結果だけくれ。今ちょっと取り込んでいてな」
どうやら受け取るだけ受け取ってくれるらしい。これ以上尊厳を傷つけられる事態は回避できたようだけど、そもそも澄ました顔で居座るのではなくそのまま少し席を外してほしかった。
「えぇと、まだ気持ち悪いだろうから私が代わりに読むわね」
湊会長を追い出してくれた詩織によると、私たちの加護はこうだった。
詩織 :奇怪な獣、封印された思念、彷徨う影
レファ:奇怪な獣、封印された思念、彷徨う影
フラン:封印された思念、迷宮神
姫乃 :封印された思念、守神
夢乃 :封印された思念、守神
この気分の悪い飴のおかげで"封印された思念"の加護が貰えているのはいい。耐えた甲斐があったというものだ。
しかし、迷宮神の加護とは?なぜ私にそんなものがある?そして姫乃と夢乃の守神の加護とはいったい???
とりあえず私たちは結果を湊会長やリッチに共有した。また調べておいてくれるらしい。
「さっきはすまない。フラン、君に依頼だ。イギリスの"サンダーボルト"というチームからだ。一度だけでいいからダンジョン攻略と、ボス撃破を手伝ってほしいらしい」
少し時間を置いてから再び湊会長が入ってきて、こんなことを言い出した。
「ふむ……」
そのチームは知っている。昔、一緒にダンジョンに入ったこともある。
「なんでまたフランに?」
「エメレージュってやつを覚えてるだろ? あれがイギリスのダンジョンで暴れていて、何人かの高ランク探索者がやられたらしくてな」
なるほど。それで戦闘経験があって、声をかけやすそうな私に連絡をしたということか。
聞けばヨーロッパ中のダンジョンにランダムに出現しては探索者を殺しているらしい。『私の経験値になりなさい!』とか言ってるらしくて、排除したいらしい。情報が早いが、"剣"の効果も理解しているらしいな。
「大丈夫? 私たちも行こうか?」
考えていた私を姫乃が気遣ってくれる。いじめられていた過去のことを話したからだろう。優しい娘だ。
「問題ない。私は大丈夫だ。ちょっと行ってくる。もちろん帰ってくるからな」
「了解! じゃあ、こっちは異世界で身に着けた力を確認するためにリッチに挑みながら待ってるわ!」
この場で飴を食べていないレファが元気よく返してくれるが、元気な声が体に響く……気持ち悪い……。
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